Chapter06初対面の人に説明する場合
初対面の人に対する説明が難しく感じるのは、相手の知識のベースや「共通言語」が分からないからです。相手の用語のレベルに合わせて言葉を選ぶのは、分かりやすい説明の基本。このページでは、飛び込み営業を想定した初対面の人への説明を例に、相手に合わせた説明のポイントを学びます。
聞くことから始める
自分が説明したいポイントのみを話す
- 営業Mが、新規クライアントの前で自社商品について説明を始めた。プレスリリース通りに、内容の詳細を説明した。

初対面の人への説明の目的は、少しでも信頼関係を築くことにあります。「この人は心を開いても大丈夫そう」と思ってもらうためには、自分の説明したいことを先に話し始めるのではなく、まずは問い掛けから始めましょう。質問によって、相手が困っていることを聞き出せると、その解決提案という文脈で、商品の説明につなげることもできます。ビジネスをしていれば、困っていることは必ずあるものです。
ただし、質問については、あからさまに「困りごと」をピンポイントで聞いてはいけません。世間話程度の大枠の質問から始め、相手が話に乗ってくれればいい程度の気持ちでいることです。アイコンタクト、うなずき、相づちを入れたり、相手の話した内容を繰り返して共感の気持ちを表すなど、相手に気持ちよく話してもらう「傾聴のスキル」も大切。人はだれでも自分の話を聞いてもらいたいものですし、話を聞いてもらえれば気分がいいものです。
まずは質問をして、相手が気になっていることを話してもらう
- まず、「●●で困っていることありませんか?」などの質問をさりげなく行い、相手の話に耳を傾けた。相手が興味を持ち、質問してきた部分に注力して説明を始めた。
相手の言葉、ペースに合わせる
相手に通じない用語で話す
- 「FXという金融商品を、ご存じですか? FXの特徴は、自分の資金の数倍の金額を扱うことができる点です。この倍率のことをレバレッジと呼ぶんです。レバレッジを高くするとハイリスクハイリターンになります。」
「その倍率が高ければ高いほど、危険度も上がるということですか?」
「レバレッジが高いほど、リスクもリターンも高くなるということです。」

質問を重ねて、相手に話してもらうことのメリットはもう一つあります。それは、相手の知識のベースや用語レベルが、ある程度分かることです。業界用語や時事用語など、自分では知っていて当然だと思って使った言葉が、相手は分からなかったり、逆に、相手に専門的な知識があるのに、基礎的な話から始めてしまったりすると、それ以上説明を聞いてもらえなくなるかもしれません。こちらがいつも使っている言葉を使うと、相手の頭の中でその言葉を変換しなくてはいけないので、説明がイメージしにくく伝わりづらくなってしまうのです。
まずは、相手が使っている言葉を使うことが大切です。言葉だけでなく、話し方やスピード、呼吸など相手のペースに合わせる「ペーシング」も、心地よいコミュニケーションを築くのに効果的です。「ペーシング」した後に、「リーディング」(導く)していかないと、人は動きません。
相手の使っている言葉、用語で話す
- 「FXという金融商品を、ご存じですか? FXの特徴は、自分の資金の数倍の金額を扱うことができる点です。この倍率のことをレバレッジと呼ぶんです。レバレッジを高くするとハイリスクハイリターンになります。」
「その倍率が高ければ高いほど、危険度も上がるということですか?」
「危険度が上がるというのは少し違います。 "ハイリスク"というのは、良くも悪くも"どうなるか分からない度合いが大きい"という意味で、"危険度"だけを指すわけではないのです。
リターンの意味はご存知ですか?」
「"収益"という意味で、こちらも利益と損失の両方の意味が含まれているということでしょうか。」
「そうです。つまり、レバレッジと呼ばれる倍率が高いと、利益と損失の両面で、影響を受ける額が大きくなるということです。」
相手に、考える時間を与える
沈黙に耐えられず、話し続ける
- 初対面で緊張してしまい、とにかく一方的に話し続けた。

初対面の人が相手だと特に、沈黙に耐えられずに話し続けてしまいがちですが、実は沈黙はあったほうがいいのです。こちらが説明をしている間は、相手は内容を理解することに集中しているわけですから、考える余裕はありません。ですから、相手に何かを考えてもらいたいことがある時は、沈黙も必要です。
特に、沈黙している時に、相手の眼球が下を向いている場合は、話しかけてはいけません。相手が「買おうか、どうしようか」と、内部対話をしている時間ですから、沈黙を相手が破るまで、待つことが大切です。
話したいことがあるのに言葉が出てこないという状態の沈黙の時は、「おっしゃりたいのは、こういうことですか?」と要約して聞いてみます。それがピタリと言い当てていれば、相手は「分かってくれている」と、うれしく思うはずです。
沈黙になっても、相手が考えている時間だと判断し、無理に話を展開しない
- 初対面で緊張したが、まずは自分の用件をお伝えたした。その後に「いかがでしょうか」と聞くと、相手は黙っていた。しばらく沈黙が続いたが、焦らずに相手の返事を待った。