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伊東 明(いとう あきら) 先生 Akira Itou
心理学者(博士)。株式会社東京心理コンサルティング代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部卒業後、NTT勤務を経て、慶應義塾大学大学院にて博士号(社会心理学)を取得。「理論と実践」のビジネス心理学や男性・女性心理学を専門として、企業研修・コンサルティングから、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌連載などのメディアまで、幅広く活躍。『心理戦で絶対に負けない本』『聞く技術が人を動かす』など、ビジネスに活きる心理術に関する著作をこれまでに70冊以上出版している。
Chapter01824名に聞きました。自分のコミュニケーション力についてどう思いますか?
取引先と思うようにコミュニケーションができない、部下と上手につきあえない、職場の人間関係がうまく築けない……。仕事をスムーズに進めるためにもっとも必要なのはコミュニケーション能力だと分かっていても、そんな風に人間関係に悩むビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。そこで今回は、心理学者の伊東明先生に、良好な人間関係を築くためのヒントとなる心理テクニックを教えていただきました。
具体的な心理テクニックを学ぶ前に、20代~30代のビジネスパーソンに自分自身のコミュニケーション能力をどのように分析しているか、意識調査を行いました。


Q1仕事をするうえでもっとも必要だと思うのは?
「コミュニケーション」がもっとも必要だと思う理由
・「知識や経験・スキルなどはコミュニケーション能力が備わっていれば高められるものだと思う」(男性/28歳/電機)
・「一人でできることは限界がある。いかにほかの人と共同して効率よく仕事を進めるかが肝要だと思うから」(女性/28歳/団体・公益法人・官公庁)
・「たとえどんなに優秀な人でも、一人では何も成し得ない。コミュニケーション能力だけではダメだが、ほかの要素(経験・スキル・素質)を活かすための必須要件ではあると思う」(男性/27歳/団体・公益法人・官公庁)
Q2ビジネスにおいて「好印象を持たれること」は重要だと思いますか?
「好印象」が重要だと思う理由
・「仕事が円滑に進み、トラブルが起こっても対処がうまくいく」(女性/25歳/情報・IT)
・「相手の協力を得やすくなるから」(男性/25歳/金融・証券)
・「同じ仕事の完成度でも、好感度が高い方が評価されるから」(女性/29歳/情報・IT)
仕事においてもっとも必要なものは「コミュニケーション能力」とした人が過半数を占め、「経験」や「スキル」よりも大切だと多くのビジネスパーソンが思っていることが分かりました。そう思う理由は、「仕事は一人ではできない」ということに尽きるようです。
また、ビジネスにおいて好印象を持たれることが重要だと回答した人は95%以上と圧倒的多数。ほとんどの人が、好印象な人は仕事をするうえで、何かしら有利に進められると実感していることがうかがえます。
Q3あなたが実際の仕事を行うなかで、相手に好印象を与えたいと思う時は、どんな時ですか?
・「新規取引先との商談で」(男性/31歳/金融・証券)
・「円滑に自分の職務を進行したい時。自分の企画を社内ですんなり通したい時」(女性/28歳/団体・公益法人・官公庁)
・「相手がキーマンや重要な役職の時」(女性/27歳/生保・損保)
・「大口の商談相手にお金の話をする時」(男性/33歳/機械・精密機器)
好印象を与えたいと思うのは、やはり「初対面」「新しい取引先」とした人が多く、勝負をかけた重要な仕事や難しい仕事、相手が大切な人である場合も、特に好印象を与えて仕事を有利に進めたいと思う人が多数でした。一方、「日々の業務すべて」と回答した人もおり、特別な場面や相手に限らず、いつも好印象を与えたいと努力している人もいるようです。
Q4あなたが実際の仕事を行うなかで、相手を説得、納得させたいと思うのはどんな時ですか?
・「新しい業務に挑戦したい時」(女性/29歳/金属・鉄鋼・化学)
・「クレーム処理」(男性/26歳/団体・公益法人・官公庁)
・「無理な要求をされた時に、こちらの意見を通したい時」(女性/22歳/情報・IT)
・「決定権を持っている人へのプレゼンテーション」(男性/32歳/情報・IT)
「プレゼンテーション」「価格交渉」の場面を挙げた人のほか、新しい業務にチャレンジしたい時を挙げた人が目立ちました。また、「社外と調整する時」や「内部の事情でお客さまに迷惑がかかる時」など、自分に不利で対応が難しい場面を挙げる人も少なくなく、非常に厳しい「説得しなければならない」場面に直面している人も多いようです。
Q5あなたは人を「叱る」ことは得意ですか?
「叱る」ことが苦手な理由
・「頭にくると相手の悪いところを逃げ道なく追い立ててしまうから。"叱る"と"怒る"は違うと分かっているのに……」(女性/24歳/小売店)
・「うまく相手に伝わってない気がするから」(女性/28歳/金属・鉄鋼)
・「叱られるのが苦手なので、人にも強く出ることができない」(男性/31歳/情報・IT)
・「論理的に叱るのが苦手なので」(男性/28歳/学校・教育)
Q6あなたは人を「褒める」ことは得意ですか?
「褒める」ことが苦手な理由
・「口下手なので」(男性/34歳/情報・IT)
・「褒めどころが分からない。人の長所を見つけるのが苦手」(男性/32歳/ソフトウェア)
・「下手に褒めようとするとお世辞に聞こえたり媚びているように見えてしまいそうで、難しい」
(女性/26歳/ホテル・旅行・アミューズメント)
・「女性特有の空気感が苦手。ファッションやコスメに興味がないため、正直褒めることができない」(女性/25歳/その他)
部下を伸ばす、同僚に改善してほしいことを告げるなど、勤続年数が上がれば上がるほど、叱らなければならない場面は増えてきます。にもかかわらず、9割以上が「叱るのは苦手」と感じている結果となりました。一方、「褒める」のも「苦手」が6割と、「叱る」のも「褒める」のも苦手な人が多いようです。
仕事を行ううえで必須スキルといえるコミュニケーション能力。今回は、ビジネスパーソンなら誰でも身に付けておきたい「相手に好印象を与える方法」、「相手を説得する方法」をはじめ、仕事に慣れ始めた人なら誰もが必要とする「叱り方」、「褒め方」を、心理学の切り口から伊東先生に教えていただきます。