Chapter09「褒められる時、叱られる時のリアクションテクニック」
実践できる心理テクニックを学んできましたが、次は相手にとっても自分にとってもプラスになる上手な「叱られ方」「褒められ方」を紹介しましょう。
評価を高める「叱られ方」とは?
上司や顧客から叱られる時、最も大切なのは、「反省しています」「あなたの言葉をきちんと受け止めています」という態度を示すことです。相手の怒りをどんどん増幅させてしまう人は、聞く姿勢に問題がある場合が多いのです。
1体で表現する

なるべく肩を落としてうなだれると、反省している印象が伝わります。ただ、相手が上司や先輩など、何かを教えようと叱っている場合は、しっかり相手の目を見て「一言一句聞き漏らすまい」という姿勢を見せるほうがいいでしょう。
あごを引き気味にして、伏し目がちにし、相手がポイントとなる言葉を発した時には、真剣な表情で相手の目をまっすぐ見ながらうなずくのです。
2相づちにも注意が必要
「はい」「ええ」「確かに」は、相手の言葉をきちんと受け止めているという意思表示になります。「はいはいはい」「ああ、そうですか」など、当事者意識を欠いた言葉は禁句です。
3謝罪の後に弁明をする

「でも」「そうはおっしゃいますが」など弁明の言葉は、こちらがきちんと謝罪して相手の怒りが収まってからにするべきです。でないと、火に油をそそぐ結果になりかねません。
叱っている相手の怒りを静めたい時は、相手の怒りに対して共感を示す一言で謝罪し、相手の溜飲を下げさせることが大切です。「課長がおっしゃることはごもっともだと思います。
すみませんでした」、そこまでこちらに非がないと思うのであれば「課長からそういうふうに見られてしまったのは、仕方のないことだと思います」など、まずは相手の怒りを受け入れることです。
顧客:見積書を提出してもらえるはずでしたよね。もう1週間もたっているのに、どうなっているんですか!
営業:こちらの認識が甘く、○○さんにご迷惑をおかけしてしまい、本当にすみません。明日には提出させていただきます。明日でもよろしいでしょうか?
顧客:分かりました。次回からは気を付けてくださいよ。
営業:はい。申し訳ありません。ただ、今後のために事情を私からもお話しさせていただきたいのですが、先週お会いした時に「そんなに急いでいない」とおっしゃっていたので、こちらも時間をかけて進めておりました。次回からはきちんと期限を確認させていただくようにいたします。
叱られ方によって、叱られた時点のマイナス評価をプラスに変えることもできます。「ありがとうございました」「勉強になりました」「今後にぜひ生かしていきたいと思います」という感謝や決意表明の言葉をつけ加えることができれば、相手への印象はがらりと変わります。
言葉だけでなく、それを実践して改善した姿を提示すると、「叱られれば反省して、行動を改めてくれる誠実な人間だ」と思われ、逆に評価は高まるはずです。叱られると人格まで否定されたように感じて、必要以上に落ち込んだり、反発してしまいがちですが、叱られた時こそ、逆に相手を自分の味方に引き入れるチャンスにもなるのです。
評価を高める「褒められ方」とは?
日本人は褒めるのも苦手であると同時に、褒められるのも苦手です。第一に、謙遜しすぎてしまうのです。謙遜することで、知らず知らずのうちに、相手に失礼な返答をしている場合が少なくありません。
上司:今日のプレゼン、よかったよ。
部下:いえ、まだまだダメです。緊張してしまって……。もう少し、あの部分を強調するべきでした。
一見謙虚な態度でいいように思えますが、この場合、上司が褒めているプレゼンを否定することは、上司のセンスも否定することになってしまうのです。これでは、せっかくの褒め言葉が台無しになり、褒めた相手もがっかりします。
1ありがとうを言う
褒められ上手になるための第一歩は、「いいえ」の代わりに「ありがとう」を使うことです。「ありがとう」が言えたら、次は「うれしい」と言ってみましょう。褒める時もそうでしたが、褒められる時も「私」を主語にした「アイメッセージ」で返すほうが効果的です。そして、さらに具体的に何がうれしいのか、どのようにうれしいのかを伝えてください。褒めた相手もうれしくなるように、感謝の気持ちを出すことが大切です。
上司:今日のプレゼン、よかったよ。
部下:ありがとうございます。課長にそう言っていただけるとうれしいです。その言葉を聞いて、自信がついてきました!
2最後はポジティブにする
どうしても謙遜したいのであれば、ネガティブな言葉は一言にして、最後はポジティブな言葉で締めくくりましょう。
上司:今日のプレゼン、よかったよ。
部下:いえ、まだまだ力不足です。でも、課長にそう言っていただけるとうれしいです。僕、課長にそんなふうに言われたくて頑張ってきたんで、自信になります!
過度の謙遜と同時に気を付けたいのは、褒められた後、すぐに相手を褒め返すこと。相手は社交辞令やお世辞としか受け取らないので、褒め返すのは、次の機会にとっておきましょう。
相手に「褒めてよかったな」と実感してもらえたら、「またいいところを見つけて褒めよう」と思ってもらえるはずです。褒めた相手もうれしくなり、自分も幸せになる。そんな「褒められ上手」を目指しましょう。
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