ページの本文へ

ブロックチェーンと分散型台帳技術・Chapter7:パブリックブロックチェーンを公共分野に活用|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

信頼のプラットフォームとしてビジネスを変えるブロックチェーンと分散型台帳技術

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 前編
  • 中編
  • 後編

Chapter7パブリックブロックチェーンを公共分野に活用

仮想通貨とは異なるパブリックブロックチェーンの活用法

既に解説したように、仮想通貨のインフラは「パブリックブロックチェーン」と呼ばれています。最初のパブリックブロックチェーンであるビットコインは、P2Pネットワークで使える電子的な「お金」として設計されたものでした。

このパブリックブロックチェーンを「お金」以外の目的に利用する取り組みが始まっています。多くの種類のパブリックブロックチェーンが登場していますが、応用事例が多いのはイーサリアム(Ethereum)です。イーサリアムは、ブロックチェーンと結び付いたプログラム実行機能を備えている点が特徴で、イーサリアム上のアプリケーションプログラムを「スマートコントラクト」や「DApps」(分散アプリケーション)と呼んでいます。

パブリックブロックチェーンのメリットは、信頼できるデータ基盤を、あたかも公共サービスであるかのように使えることです。ビットコインは約1万ノード、イーサリアムは数万ノードの規模で稼働しており、その多数のノードの処理能力が、ブロックチェーンに書き込む記録の検証のために使われています。パブリックブロックチェーンでは「誰がいつ記録した内容なのか」をきわめて信頼できる形で保存し続けます。

分散型台帳技術(DLT)を用いた技術も、信頼できる形で記録を保存する意図を持っている点で共通していますが、パブリックブロックチェーンは「記録内容を信頼できる度合い」が非常に高く、それを利用手数料だけで使えるのが大きな特徴です。

システムを自前で用意するわけではなく、利用手数料を支払って利用するという点で、パブリックブロックチェーンはクラウドコンピューティングと似ている部分があります。ただし重要な違いとして、クラウドコンピューティングには運営企業が存在しますが、パブリックブロックチェーンは特定の運営主体や統治主体を持っていません。

「あたかも公共サービスのように利用できる」というパブリックブロックチェーンの特徴は、強いていえばインターネット、それにオープンソースソフトウェアの考え方に、共通点があるといえます。インターネットは、世界中のネットワーク会社が協力して相互接続を維持し、基本的に世界中のどことでも低コストで通信できる環境を維持しています。オープンソースソフトウェアは、ソフトウェア開発者が協力して開発した成果物を、誰でも利用可能な形で公開しています(パブリックブロックチェーンの多くはオープンソースソフトウェアとして作られています)。

先ほど紹介したイーサリアムで興味深いところは、パブリックブロックチェーンのイーサリアムを用いる場合とは別に、分散型台帳技術(DLT)としてイーサリアムの技術を用いる場合があることです。EEA(Enterprise Ethereum Alliance)という団体では、イーサリアムの派生技術として開発した分散型台帳技術をエンタープライズ環境で用いる取り組みや、パブリックブロックチェーンと連携する使い方を検討しています。

このような使い方を、EEAは「ハイブリッドアーキテクチャ」と呼んでいます。ハイブリッドアーキテクチャのメリットは、統治の自由度や性能を追求できる分散型台帳技術のメリットと、改ざんがきわめて困難なパブリックブロックチェーンのメリットの両方を活用できる可能性があることです。

以下では、公共性が高い分野におけるイーサリアムの取り組みを見ていきます。これらはイーサリアムの複数の利用形態(パブリックブロックチェーン、分散型台帳技術、ハイブリッドアーキテクチャ)のうち、最終的にどのような使い方になるのかまだ明らかではありません。

ここまでのポイント
  • ・パブリックブロックチェーンを「お金」以外の目的に利用する取り組みが始まっています。
  • ・パブリックブロックチェーンで応用事例が多いのが、イーサリアム(Ethereum)です。
  • ・イーサリアムは、パブリックブロックチェーンのイーサリアムを用いる場合とは別に、分散型台帳技術(DLT)としてイーサリアムの技術を用いる場合があります。

国連では、難民などを支援するためID管理に活用

国連は、ブロックチェーンへの取り組みを進めています。

その一つは、難民のような身分証明書を持たない人々のために、デジタルな身分証明(ID)を付与する取り組みです。難民への支援を行ったり、難民に仕事を提供したりする際など、なんらかの手続きで身元の証明が必要になる場合がありますが、難民はパスポートのような身分を証明する書類をすべて失ってしまっていることが多々あります。そこで虹彩や指紋のような生体情報を手がかりに、ブロックチェーンを活用して身分証明が可能になるようにします。

国連が進める難民向けID(身分証明)発行のプロジェクト「ID2020」のホームーページ

国連が進める難民向けID(身分証明)発行のプロジェクト「ID2020」のホームーページ

また、難民支援の資金は、仲介者を何段階も経由するため、従来は支援対象者に届くまでに時間がかかり、透明性も損なわれていました。この課題を解決するために、ブロックチェーンを活用する取り組みが進んでいます。ブロックチェーンと結びついたお金といえば仮想通貨を連想しますが、通常の仮想通貨は米ドルのような法定通貨に対するレートの変動が激しく、使いづらい面があります。そこで「価格が安定したコイン」であるステーブルコインを応用することを検討しています。

このほかにも、国連では多くの組織でブロックチェーンへの取り組みを進めており、難民を対象とした食料バウチャーの配付のために、イーサリアムを活用するといった例があります。

ここまでのポイント
  • ・国連では、難民にデジタルなIDを付与したり、難民支援の資金を届けたりする際にブロックチェーンを活用する取り組みを進めています。

NASAでは宇宙のごみや資源の管理に活用

米アクロン大学助教授のJin Wei Kocsis博士は、NASA(米航空宇宙局)と共同で、スペースデブリ(宇宙のごみ)と宇宙探査機の衝突事故を避けるなどの目的で、パブリックブロックチェーン技術のイーサリアムを活用する研究に取り組んでいます。研究の名称は「宇宙探査のための自己修復可能なネットワーキング&コンピューティングパラダイム」といいます。

宇宙に浮かぶデブリは、宇宙ステーションや人工衛星などに衝突すると大きな被害をもたらすおそれがあるため、それぞれの軌道は把握・管理されているのですが、そこに台帳管理の必要性があります。また、宇宙空間に浮かぶ小天体上の資源を開発する試みが計画されていますが、その場合も「どの資源を開発するのか」という台帳管理が求められます。

このようなデブリや宇宙資源の台帳を、複数のノードに情報を分散するブロックチェーンで管理すると、障害に対する耐性や復旧機能などの観点で優れたシステムが作れる可能性があります。

そこで進められている研究では、イーサリアムとその上で動くアプリケーション(スマートコントラクト)を利用することにより、データ駆動型で自律的に判断できる、レジリエント(自己修復可能)で拡大可能なネットワークを作るという目標を掲げています。すぐに実用化できるようなものではなく、将来を見据えた取り組みですが、興味深い応用といえるでしょう。

ここまでのポイント
  • ・NASAでは、デブリや宇宙資源を管理するための台帳をパブリックブロックチェーンで管理する取り組みが進められています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
公開日:2019年3月29日

おすすめ

ページの先頭へ