ページの本文へ

キャッシュレスで何が変わるのか・Chapter3:わが国でキャッシュレスが普及しにくい理由|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

変わり始める“お金”のスタイル キャッシュレスで何が変わるのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 前編
  • 中編
  • 後編

Chapter3わが国でキャッシュレスが普及しにくい理由

前回見たように、キャッシュレス化には事業者(店舗など)、消費者の双方にとってさまざまなメリットがあります。政府もキャッシュレス化を推進しており、「未来投資戦略2018」では2027年末までにキャッシュレス決済の比率を現在の倍程度、つまり4割程度をめざすとしています。キャッシュレス化に向けた流れは、徐々にではありますが確実に動き出しています。

ところがChapter1で紹介したように、日本は欧米やアジアの多くの国々と比べて、まだまだキャッシュレス化が進んでいません。進まない背景には何があるのでしょうか。

「理由は決して一つではなく、複合的なものと考えられます。たとえば、日本は治安がよいため、現金を持ち歩くことに危険を感じない点が挙げられます。海外ではスリや強盗に遭遇する危険性を想定し、そもそも多額の現金を持ち歩く習慣がない国も多くあります。こうした国では古くからクレジットカード決済のスタイルが定着していました」(海老原氏)。たしかに、日本では飲食店でテーブル上に現金を出しておいても、盗まれるケースのほうが珍しいかもしれません。

偽札の流通が少ない、紙幣が総じてきれいであるなど、日本人は伝統的に現金への信頼度が高いという特性もしばしば指摘されるところです。多くの国では紙幣がぼろぼろで、海外旅行の際、お釣りでもらった紙幣の汚さに思わず手を引っ込めた経験がある人もいるのではないでしょうか。

店頭でもレジ処理がスムーズで、使う側が現金のやり取りに不満を感じないことも大きな理由と考えられます。街にはいたるところにATMが設置されており、24時間利用可能なATMも多いので、いつでも現金を調達できるという環境的要因もあります。これらの理由に加えて、日本人はクレジットカードを借金と感じていた風潮の影響もあります。

一方、店舗側としては、どのような理由でキャッシュレス化に踏み切れないのでしょうか。経済産業省の調査では、「導入」「運用・維持」「資金繰り」の3つのフェーズでそれぞれ要因が考えられるとしています。

キャッシュレス支払(クレジットカード)を導入しない理由 出典:経済産業省「観光地におけるキャッシュレス決済比率の普及状況及び加盟店におけるクレジットカードに係るセキュリティ対策の実施状況に関する調査」(2017年2月)

キャッシュレス支払(クレジットカード)を導入しない理由
出典:経済産業省「観光地におけるキャッシュレス決済比率の普及状況及び加盟店におけるクレジットカードに係るセキュリティ対策の実施状況に関する調査」(2017年2月)

まず「導入」では、支払い端末の導入コストが最大の問題です。端末の設置スペースを用意したり、状況によっては通信回線整備の必要性も生じ、やはりコストがかかることから、二の足を踏む店舗が多いのでしょう。ただし、最近では数千円~2万円程度の安価な端末や、端末不要のQRコード支払いも登場しています。

「運用・維持」では、支払いサービス事業者に支払う手数料などのコスト負担が問題と考えられます。クレジットカードを受け入れると、カード会社に売上の平均3%程度(大手を含めた平均)の手数料を払わなければなりません。地方や中小・小規模事業者では、より高い手数料の場合もあります。この手数料は現金決済なら生じないものであるため、店舗としては抵抗感を覚えてしまうのです。「手数料を支払う見返りとしてクレジットカード導入のメリットを感じられればいいのですが、多くの店舗経営者が現実的に感じていないことも理由でしょう。また、支払い端末の操作を覚えたり、利用控を渡す手順を煩雑に感じたりといったオペレーションの負担も理由に挙げられます」と海老原氏は指摘します。

そして「資金繰り」は、決済を受けてから実際に資金を受け取るまでのタイムラグが長いことが問題になります。これも現金決済ならその場で受け取れますが、クレジットカードの場合、一般的には1カ月前後の遅れが生じるため、その支払いサイクルに対応した資金計画を練り直さなければならなくなります。

ここまで見たように、日本の事業者の多くはキャッシュレス化によってもたらされるメリットをあまりイメージできない一方、デメリット(と考えられる)のイメージが足かせとなり、キャッシュレス比率が思うように伸びていかないのが現状といえます。

もちろん消費者からすれば、使える店舗が増えなければキャッシュレス支払いへの本格移行に戸惑いを覚えるのも当然でしょう。それに加えて、キャッシュレス支払いには不正利用や個人データ悪用の不安があるといった声もよく聞かれます。「キャッシュレスだといくら使ったかわからない」「お金を使う実感がない」という漠然とした不安の声も上がります。

店舗、消費者双方とも、総じて、キャッシュレスに関する情報不足と理解不足に加え、イメージや思い込みが影響し、キャッシュレス普及の足かせとなっている点は否めません。

ここまで3回にわたり、キャッシュレス化推進の目的とメリット、同時にキャッシュレス化が進まない日本の現状について見てきました。中編ではキャッシュレス社会の実現に向けた日本国内だけでなく海外における先進的な取り組みにスポットを当てていきます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
公開日:2019年1月22日

おすすめ

ページの先頭へ