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第3回 リーダーは「捨てる」覚悟を持て|冨山和彦の「挫折力」と強いリーダーの条件|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

冨山和彦の「挫折力」と強いリーダーの条件
第3回 リーダーは「捨てる」覚悟を持て

過去の成功体験やしがらみに縛られて方針転換が遅れ、不振にあえぐ企業。日本を代表するいくつもの優良企業が陥った苦境の原因は、リーダーが捨てるべき時に捨てるべきものを捨てられなかったことにあるのではないでしょうか。企業が困難な局面に立った時こそ、リーダーに求められるのは「捨てる」覚悟なのです。

「捨てる」ことができずに失敗した経営

バブル経済崩壊後、弱体化した企業同士が合併し、お互いの長所を活かすことで生き残りの活路を見出そうとした試みがいくつもありましたが、その多くは失敗に終わりました。合併は、企業規模が大きくなり、世間的にも話題になるので一見華やかに見えますが、実は問題の先送りでしかないケースがほとんどなのです。

合併の本来の効果を出すためには、互いの企業で重複している機能や設備、人員は、効率性や生産性を尺度にしてより良い部分を残し、劣っている部分は切り捨てるという取捨選択が必要です。しかし、実際はその取捨選択ができずに、機能も設備も人員も重複したまま、図体ばかり大きくなるという場合がとても多いのです。これでは、合併によってマイナス部分を2倍にしただけで、本質は何も変わっていません。

会社にとってのマイナス部分を捨てるという決断を下すには、覚悟が必要
会社にとってのマイナス部分を捨てるという
決断を下すには、覚悟が必要

こうした弊害は、リーダーに「捨てる」覚悟がないから起こるのです。マイナス部分を思い切って捨て、プラス部分を活かすといった合併の本来の目的に沿わない決断をすれば、その場しのぎの延命処置と言われても仕方ありません。効率性や生産性を考慮せず、2つの会社を足し合わせただけでは、根本的な組織の弱点が見えにくくなり、問題の解決が遅れます。結果、延命どころか会社の寿命を縮めてしまうのです。

私は参画した産業再生機構で、リーダーが「捨てる」ことを決断できずに起きた失敗をたくさん見てきました。ある会社では、誰が見ても明らかな不採算部門をいつまでも切ることができずに赤字を拡大させていました。うまくいかない部門をそのままにして新しい事業に手を広げ、更に傷口を大きくしている会社もありました。

確かに「捨てる」という決断は、多くの軋轢を生みます。「捨てられた」人々の恨みを買ってしまうかもしれません。しかしそういったことを恐れて捨てないでいれば、組織自体がだめになってしまいます。組織を再生させる時には、リーダーがいかに「捨てる」覚悟を持っているかが重要な要素になるのです。

情の人、西郷隆盛の「捨て方」

明治維新最大の功労者、西郷隆盛は「捨てる」ことが甚だ不得手な情の人でした。有事における大改革で最も難しいのは、既得権益層の切り捨てです。国民皆兵の道を選んだ明治新政府にとっては薩摩、長州の士族が排除すべき最大の既得権益層となりましたが、西郷にしてみれば彼らは倒幕を成し遂げ、戊辰戦争をともに戦った同志にほかなりません。西郷は彼らを切り捨てるに忍びなかったのです。

結局、西郷が選んだのは士族たちとともに改革への抵抗勢力になることでした。そして征韓論に敗れた後は、士族に自らの命を委ねたかのように鹿児島に戻り、やがて西南戦争で死んでいきます。

改革時のリーダーには非情に徹することが求められますが、西郷にはそれができなかったのです。非情に徹することができないなら、自らが抵抗勢力の旗頭となり、抵抗勢力を道連れにして切り捨てられる覚悟をする。西郷の捨て方とは、このようなものだったのでしょう。

こうした西郷の生き方には胸を打たれるものがありますが、改革のリーダーとしての姿勢に関していえば、彼には限界があったといわざるを得ません。西郷に憧れるのは簡単ですが、あのような生き方をすることは、およそ常人には不可能と思ったほうがよいでしょう。

だとすれば、今日に生きるリーダーとしての務めは、時には非情に徹することをもいとわない捨てる覚悟を持つことではないでしょうか。

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