講演レポート:第102回 コロナの猛威が変えた製造業のIT動向|Prowise Business Forum|株式会社日立ソリューションズ

株式会社 日立ソリューションズ

Prowise Business Forum 第102回

コロナの猛威が変えた製造業のIT動向
~強固な経営基盤を築く3つの柱~

 2020年7月31日に、2月以来5か月ぶりとなるProwise Business Forum第102回が開催されました。新型コロナウイルスの影響で、今回はProwise Business Forum史上初となるオンライン形式での開催となりましたが、当初の予定定員数を大幅に超える皆さまにご参加いただき、大盛況のうちに終了いたしました。
 今回の基調講演では、テクノロジーによる製造業の改革をめざすキャディ株式会社 加藤氏にご登場いただき、with コロナ時代における製造業の重要課題や新戦略について持論を語っていただきました。

また、日立ソリューションズからも、with コロナ時代をキーワードに、製造業が抱える課題を解決する新SCMサービスや、組織的な労働安全衛生マネジメントを実現する安全衛生管理ソリューション、移動制限などで影響がある現場作業に役立つ支援例などをご紹介しました。
 さらに今回は、チャット機能も有効にすることで、ご視聴中のお客様と日立ソリューションズセッションの講演担当者との間で、質疑応答やご意見投稿が活発におこなわれました。Webセミナーならではの柔軟なコミュニケーションの可能性を感じられる試みとなりました。

Prowise Business Forumオープニング画面
自己紹介スクリーンショット
セミナー風の様子

開催概要

日時 2020年7月31日 (金) 14:00~15:10
会場 Webセミナー
主催 株式会社日立ソリューションズ

【基調講演】
with コロナ時代の製造業を新戦略で切り拓く

加藤 勇志郎 氏
キャディ株式会社
代表取締役 加藤 勇志郎 氏
【講師プロフィール】

1991年生まれ、東京出身。東京大学卒業後、2014年に外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2016年にマネージャーに昇進。日本・中国・アメリカ・オランダなどグローバルで、製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトをリード。特に、大手メーカーに対して購買・調達改革をサポートした他、IoT/Industry4.0領域を立ち上げ時から牽引。2017年11月にキャディ株式会社を創業。モノづくり産業の本来持つ可能性を解放することをミッションに、テクノロジーによる製造業の改革を目指す。

 基調講演では、コロナ時代に製造業はどのように立ち向かうべきかについて、キャディ株式会社の加藤氏が自身の考えを共有した。

サプライチェーンの全体の見直しやリスク分散、自社製造体制の分散が必須

 新型コロナウイルスは短期的に起こるものではなく、完全終息までには早くても2~4年かかり、遅い場合は10年以上かかるともいわれている。また、一部の国では終息後に再感染を引き起こすケースも報告され、免疫獲得が困難な可能性もある。ワクチンや新薬の開発も早くて2~3年はかかるため、完全かつ最終的に終息することは困難だと想定し、with コロナ時代の経営戦略を立てていくべきだと加藤氏は警告する。

 では、製造業にはどのようなことが起こるのか。例えば装置メーカーの場合、板金や切削、素材メーカーなどのサプライチェーンのどこかに新型コロナウイルスの感染者が発生すると、1次被害、2次被害が発生して、調達難・納期遅延・販売難などにつながり、最悪の場合は連鎖倒産を引き起こすようになるだろうと加藤氏はいう。「サプライチェーンの全体の見直しやリスク分散、自社製造体制の分散などが必須となっています」。

 with コロナ時代における製造業の存続に短期的に関わる重要課題は、1)製造体制確保、2)調達・販売先確保、3)情報アクセス・コミュニケーション、4)コスト削減・資金確保の4つに類型化されるという。

with コロナ時代の新戦略「製造業のオープン化」とは

 また、加藤氏は「“名ばかりBCP(事業継続計画)”からの脱却と、with コロナ時代の新戦略が重要となります」と話す。そのための経営戦略に、製造業のオープン化があるという。目的は3つ。その1つ目が、調達・販売の集散両立化。通常時における調達コストを下げるための集約化と、災害時における調達リスクを下げるための分散化を、うまく両立する戦略を考えることが必要となる。2つ目が製造のセミファブレス化。ファブレスはめざすが、平常時にも自社生産+2~3社のOEMメーカー生産体制を組んでおき、万一自社が稼働停止した際にもOEM先で生産可能な体制を作っておく。3つ目が設計のDFM(Design For Manufacture;製造容易性設計)志向。古い図面に追記を重ねた図面、それに慣れた既存サプライヤにしか頼めない設計ではなく、設計時点でDFMを考慮し、新規のサプライヤでも同一の製品を制作可能なオープンな仕組みにしておく。

 それを受け、加藤氏は、「with コロナ時代に生まれる新たな事業機会は主に3つ考えられるでしょう」と続ける。第1に売上アップ。調達の集散両立化、製造のセミファブレス化による製造キャパシティの増強、グローバルでのオープン化、販売・調達先の拡大などが見込める。第2にコストダウン・リスクダウン。集散両立化によるコスト・リスクの同時ダウンや、リモート化によるオペレーションコストの低減、データ蓄積・活用による意思決定の質・速度の向上などの可能性が高まる。第3に組織力向上。リモート化による地域・地方に依存しない採用機会の増大や、データ化による職人の勘・属人性からの脱却というメリットもあるという。

低コスト・多数部品の調達に有効な仮想工場ネットワーク「CADDi」

 次に、加藤氏は、with コロナ時代に有効な、オープン化・リモート化への新ソリューションとして、「CADDi」を紹介した。

 最後に加藤氏は、「with コロナ時代には経営や設計・製造で戦略を柔軟に変え、BCPのリスク分散や、低コスト・多数部品のコスト・工数削減という課題を切り開くことが重要です」とアドバイスし、基調講演を終了した。

【日立ソリューションズセッション1】
with コロナ時代の製造業サプライチェーンマネジメント

小沢 康弘
株式会社日立ソリューションズ
産業イノベーション事業部 関西ソリューション部
部長 小沢 康弘

今久保 沙那
株式会社日立ソリューションズ
産業イノベーション事業部 関西ソリューション部
技師 今久保 沙那

 日立ソリューションズセッション1では、with コロナ時代の製造業が抱える課題を解決する新たなSCM(サプライチェーンマネジメント)サービスを紹介した。

コロナ禍の影響評価も可能な「グローバルSCMシミュレーション」

 日立ソリューションズでは、2015年に数理解析の理論に基づくサプライチェーン最適化エンジンを日立生産研究所と共同で研究開発。以後、さまざまな利用シーンでの活用可能性を確認するため、物流業、製造業向けの拠点設置計画時の費用対効果評価サービスとして、複数社のサプライチェーンモデルの評価作業を実施した。2017年には、サプライチェーン最適化シミュレーションエンジンを利用し、年間の販売・生産計画策定時の施策検討ツールとしてPoC(概念実証)評価を開始。そして2020年7月に、「グローバルSCMシミュレーション」としてサービス提供をスタートさせた。現在、新型コロナウイルス禍における影響評価、サプライチェーン見直しツールとしても需要が高まっているという。

 グローバルSCMシミュレーションは、サプライチェーンモデルとサプライチェーンの構成要素である調達・生産・物流・販売をマスター化し、デジタル空間上に再現。仮想的に生産や物流、販売を行って結果を評価するツールだ。

 「ポイントは、数理解析の技術を用いて、条件を満たす理論上全ての販売・生産計画のパターンのシミュレーションを実行し、その最適解を求められる点にあります」と小沢は解説する。従来のシミュレーションは納期を優先するケースが多かったが、グローバルSCMシミュレーションは利益を優先するところに特徴があるという。

シナリオごとのキャッシュフロー影響把握で過剰在庫の発生や受注機会の損失を防止

 今久保からは、グローバルSCMシミュレーションの活用事例をいくつか紹介した。1つ目は、需要に対し生産が過多となっているため、市場の変化に対応しつつ、在庫を抑えてキャッシュフローを改善したいというケース。グローバルSCMシミュレーションで生産量と需要見通しの組み合わせをシナリオとして定義し、シナリオごとの利益、キャッシュフロー、期末在庫量を評価した。今久保は、「シナリオごとのキャッシュフロー影響把握で、市場の変化に対し迅速に生産計画の見直しを行うことができるようになり、過剰在庫の発生や受注機会の損失を防止することが可能となりました」と説明する。

 2つ目は、生産・物流拠点を見直し、複数の候補地の中からコストや損益評価を行って最適なシナリオを選択したいというケース。グローバルSCMシミュレーションで複数の拠点配置シナリオの評価を行った結果、評価することで、外部環境の変化に伴う稼働率やコスト影響を定量的に確認でき、最適なサプライチェーンの再構築に役立てることができるようになったという。

 「こうしたケースの他にも、グローバルSCMシミュレーションでは、生産不可設備・品目明細や、余力活用・追加生産可能品目リスト、生産地変更可能リストなど、お客様のご要望に応じた結果レポートを出力することも可能です」と今久保は述べる。

 最後に小沢は、「サプライチェーンの課題はwith コロナ時代に限らず企業が取り組むべき普遍的な課題といえます。その意味で、現状のサプライチェーンの問題を可視化することで、短期~中長期に業績改善につなげることが可能なグローバルSCMシミュレーションは、お客様にとって非常に強力な武器になるでしょう」と強調し、セッションのまとめとした。

【日立ソリューションズセッション2】
with コロナ時代の安全衛生管理業務とは
~AI、IoTを活用した現場巡視の自動化・リモート化~

浜村 憲
株式会社日立ソリューションズ
営業企画本部 営業戦略部
主任 浜村 憲

 日立ソリューションズセッション2では、AIやIoTを活用してリスクを早期発見する労働災害防止策をいくつか紹介した。

現場作業向けと安全管理向けの両面で労働安全衛生マネジメントをサポート

 浜村は冒頭、「新型コロナウイルス禍を経験し、改めて社員の安全と健康を守る事を優先する事の重要性を再認識したのではないでしょうか。しかし、厚生労働省が発表した平成30年における死傷災害発生状況によると、全産業で12万人以上が労働災害に遭われてており、前年よりも5.7%増加しているのが現状です」と語る。

 安全衛生管理に関する経営者の課題としては、人材不足、外国人労働者対応、技術継承、感染症対策などが挙げられているが、それらはAIやIoTといったデジタル技術で解決できるのではないかと浜村はいう。

 現場からの要望には、作業現場を常時監視して不安全行動を自動で検知したい、感染症の集団感染を未然に防ぎたい、現場巡視業務をリモート化したいといった意見が多いという。一方、管理者からは、安全に関する情報を全工場で共有する仕組みが欲しい、教育の習熟度を確認・集計したいという意見が挙げられたという。

 それらを踏まえ、日立ソリューションズでは「安全衛生管理ソリューション」を提供。これは、現場作業向けと安全管理向けの両面で、組織的な労働安全衛生マネジメントのPDCAサイクルをサポートするコンセプトとなっている。

安全確保は社員のモチベーション向上や優秀な人材確保などにもつながる

 そこで浜村は、現場作業向けソリューションの個別機能と事例をいくつか紹介した。1つ目の「GeoMation 屋内位置把握ソリューション」は、低価格なタグやルーターを活用し、大規模な設備工事を行わずにGPSでは実現できない屋内・地下での位置把握を実現する。ある工場では設備が複雑に入り組んでいて、作業者の居場所が把握しづらいため、万一の時に発見が遅れるという懸念があった。GeoMation 屋内位置把握ソリューションを導入することで、作業者の現在位置をリアルタイムに確認することが可能になり、一人作業禁止区域での作業が継続すると、管理者に警告メールが送信される運用としている。また、行動履歴のログデータを活用することで、感染症対策にも活用しているという。

 2つ目の「画像判定トータルソリューション」は、カメラとAIを活用することで、製品の外観検査工程における効率化と品質向上を実現するもの。ある倉庫では、台車の手放し動作の危険行動を検知するために、この画像判定トータルソリューションを導入した。台車と作業員を認識し、移動ベクトルで不安全行動を自動で検知することで、監視業務が効率化したという。

 3つ目の「作業者安全モニタリングシステム」は、ヘルメットに装着可能なセンサデバイスにより、作業者の生体情報と周囲の環境情報を計測し、独自のパラメータで解析することで、安全を遠隔から確認できるようにする。熱中症対策や、転倒・落下検知、現場巡視のリモート化などに応用されている。

 また、管理者向けソリューションとして、2020年10月リリース予定の「安全衛生マネジメントサービス(仮称)」も簡単に紹介した。これは、厚生労働省のOSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)に準拠した本社と現場のPDCAサイクルを支援し、労働安全衛生管理の効率化とナレッジの見える化を推進するもの。労働安全衛生関係法や災害事例などのナレッジをAIが学習し、正しい作業をレコメンドすることで、同じ事故の再発を防止するという。

 最後に浜村は、「ITを活用した対策は、現場巡視をリモート化・効率化できるほか、安全対策だけではなく生産性の向上にも効果があります。安全確保は社員のモチベーション向上や優秀な人材確保などにもつながるため、ぜひ当社と一緒に安全・安心な職場を作り上げていきましょう」と提案し、セッションの結びとした。

【日立ソリューションズセッション3】
ニューノーマルへ向けたテレワーク
~テレワーク急増への対応と移動制限下での現場支援~

伊藤 直子
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部
主管技師長 伊藤 直子

 日立ソリューションズセッション3では、当社のこれまでのテレワーク取り組み事例とともに、移動制限などで影響がある現場作業に役立つ支援例を紹介した。

テレワークを順次拡大、全社員対象とするよう推進中

 「日立ソリューションズでは、2016年度から全社規模で働き方改革への運動を強力に推進し、柔軟な働き方の実践、総労働時間の短縮、メンタル罹患率の削減を目標としてきました」と伊藤は語る。その中でもテレワークは、2008年の在宅勤務制度から一部で開始し、2017年のタイム&ロケーションフリーワーク制度への改訂を経て対象者を大幅に拡大。現在、全社員を対象にするよう社内規則の見直し、労使調整をすすめているという。

 テレワークを実現するためのICTの環境について、日立ソリューションズではコロナ禍以前からシンクライアント(VDI;仮想デスクトップ)とハードディスク付きのPC(ともにVPN接続)を併用してきた。しかし、テレワーク実施者が急増したことからトラフィックが逼迫してしまったという。そこで急遽、同時接続数の増強、就業開始時間の分散、デバイス利用のルール緩和などを実施してきた。また、Microsoft Teamsを活用してチャットやビデオ会議で円滑なコミュニケーションも実現している。

現場作業の遠隔支援は事業継続に役立ち、コスト削減や時間短縮にも貢献

 続いて、伊藤は、移動制限などで影響がある現場作業に役立つ、いくつかの支援例を紹介した。1つ目は現場作業の遠隔からのサポートする機能。作業者はスマートフォンやタブレットで本社の管理者とつなぎ、現場映像を共有しながら、描画や図面表示などを用いて会話して指導を受けることができる。また、ウェアラブルなスマートグラスとも相性はよく、ハンズフリーのスタイルは両手で作業しながらやり取りができるので非常に効率的だという。

 2つ目は現場作業のクロスチェック機能。2人以上が同じ場所で物を確認して作業品質を上げるケースでは、現場の映像と共に画面にチェックリストを共有して表示するのが効果的だ。この遠隔クロスチェックは、1人しか入ることのできない狭い場所での共同作業でも有効だという。

 3つ目は報告書の作成機能。現場作業者が事務所に戻ってから報告書を作成するのではなく、現場の端末の画面に表示される作業ナビゲーションの指示に従い、写真撮影や文字入力しながら作業を進めることで、作業完了時に報告書が自動的に作成するという機能だ。これは、作業者の負担軽減だけではなく、本社の管理者も状況把握を容易にすることができるという。

 「このように、現場作業を遠隔から支援できるさまざまな機能により、感染症対策時にも事業を継続することができるようになります。また、BCPとして役立つだけではなく、今後の働き方改革にも活かすことで、コスト削減や時間短縮などの効率向上にも貢献するでしょう」と伊藤は話す。

テレワークは今後もニューノーマルにおいて定着する有効な働き方

ここまで、伊藤が現場作業の支援策として紹介したものは「フィールド業務情報共有システム」という名称で日立ソリューションズから提供されている。オプション単位に作業報告や、遠隔支援、コントロール管理など、必要な機能を契約できるようになっている。

 最後に伊藤は、「新型コロナウイルスはまだ油断できる状況にはなく、当社も8割以上の社員が在宅勤務を続けています。そんな中でもテレワークは事業を継続するための非常に有効な働き方であり、今後もニューノーマルにおいて定着すると考えています。企業としては働き方の選択としていつでも活用できるよう整備しておく必要がありますので、制約のある中で工夫しながら働き方を見直し、できるところから進めていきましょう」と提案し、自身のセッションを締めくくった。

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〒140-0002 東京都品川区東品川4-12-6(日立ソリューションズタワーB)
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