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コラムエネルギー業界の現状と今後 Vol.2

2018.02.28元売集約、高度化法などの影響を受けた石油業界の現状と今後

(株)伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表取締役兼アナリスト 伊藤 敏憲

JXTGの誕生、高度化法二次告示対応などで石油業界の収益環境改善

石油事業の収益環境が改善している。石油元売各社の4~6月期決算をみると、JXTGホールディングスの17年4月~6月期の石油製品事業の在庫影響を除いた営業損益は、前年同期の10億円の赤字から249億円の黒字へ大幅に改善した。同時期にコスモエネルギーの石油事業の在庫影響を除いた経常損益も、前年同期の80億円の赤字から79億円の黒字へ、出光興産の石油事業の在庫影響を除いた営業損益も107億円から129億円へ改善した。いずれの会社も増益の主因を製品マージンの改善と説明している。

市況データからも石油事業の収益環境が改善している状況を確認できる。石油情報センターによる給油所小売価格調査、卸価格調査の全国平均と原油輸入コストから算定した17年4月~6月期のレギュラーガソリンの精製・販売マージンの平均値はリットル29.1円で前年同期と比べてリットル3.4円拡大した。卸売マージンと小売マージンに分けると、卸売マージンが前年のリットル16.8円からリットル15.7円へリットル約1円縮小した一方で、小売マージンはリットル9.0円からリットル13.4円へリットル4円余り拡大した。昨年から今年にかけて改善したのは小売市況だったことになる。なお、17年1月~3月期との比較では、卸売マージン、小売マージンともに改善していた。

小売市況の改善要因の一つは、JXTGエネルギーが、需給を引き締めるとともに、販売ルートの見直し、販売子会社を通じた安売りの是正などに取り組んでいるからと考えられる。

また、エネルギー供給構造高度化法(以下「高度化法」)の二次告示に対応するため、精製・元売各社が設備集約や能力削減に取り組んだことも市況の改善に寄与したと考えられる。高度化法・一次告示対応直後の14年4月に394万6千BD(日量バレル)だった常圧蒸留装置の原油処理能力は17年4月に351万6千BDへ削減されたが、これにより16年4月~6月に平均91%だった定修による影響を除いた実質稼働率は17年4月~6月に平均96%と約5%ポイント上昇。7月以降もほぼフル稼働の状態が続いている。ガソリンなどの在庫は増えていないことから、足元の需給はバランス化していると考えられる。

石油業界は「二大元売+2」の体制で当面安定化へ

JXTGは、17年6月までに統合シナジーによる収益改善効果が53億円積みあがっており、3年間で1,000憶円のシナジー創出は着実に進みつつあると説明している。JXTGの収益力は、製油所の統廃合などの追加対策によるシナジーの積み上げにより、今後さらに向上すると見込まれる。

出光興産と昭和シェル石油の経営統合計画は、公表当時、出光興産の発行済み株式総数の33.92%を所有していた出光創業家の反対によって待ったがかけられた状態だったが、状況に進展がみられるようになった。出光興産と昭和シェル石油は、15年11月に、経営統合によって5年以内に年間500億円のシナジーを達成するとの計画を公表していたが、今年5月に、本統合に向けた準備の一環として、原油調達、石油精製、物流などの協業によって17年4月から3年以内に年間250億円以上のシナジー創出の実現を目指すと発表した。さらに出光興産が今年7月に発行済み株式総数の3割に相当する4,800万株公募増資を実施して資本を増強したことで、出光創業家の持ち株比率は約26%まで低下し経営統合などの重要案件に対して単独で拒否権を発動できる3分の1を下回った。経営統合を実現するためには株主総会に参加する株主の議決権合計の3分の2以上の賛同を得る必要があるため、まだ楽観視できないが、実現可能性は高まったと考えられる。

今回の元売集約には直接関わっていないコスモエネルギーも、コスト削減、非石油事業の収益拡大などによって、収益力が向上していることに加え、先行投資の一巡と投資費用の回収段階への移行によって、財務体質の改善も進む見通しとなった。コスモエネルギーは、高度化法に対応するため、単独及び共同で石油精製設備の集約に取り組んできた。14年3月末が期限だった高度化法の一次告示対応で坂出製油所を廃止し、二次告示対応で昭和シェル石油との事業提携に基づいて四日市製油所の常圧蒸留装置を1基廃止した。これにより、ピーク時に63万5千BDあった原油処理能力は、公称能力の変更も加えると36万3千BDまで削減され、設備利用率の向上と精製・供給コストの低減を実現。また、石油開発子会社のアブダビ石油が開発を進めていた新油田が今年10月に生産を開始する予定のため、17年度から18年度にかけて収支並びにキャッシュフローが大幅に改善する見通しである。

原油処理量と常圧蒸留装置の実稼働率推移

太陽石油も、かねてより注力していた石油化学事業の収益拡大、石油製品事業の西日本への集中化、さらに昨年買収した南西石油を通じた沖縄県での事業展開などによって、大手に劣らない好業績と経営体質の改善を実現している。

このように、石油業界は「二大元売+2」の体制によって当面安定化する可能性が高まったとみられる。

石油業界の収益環境を改善し好環境を維持するために必要な対策

出光興産と昭和シェル石油の経営統合が実現すれば、設備集約や事業の選択と集中選別の実施などによる統合シナジーの上乗せに加え、より緊密な需給対策、販売の共同化・一体化などが図られると予想されることから、統合会社の収益力が高まるだけでなく、石油業界全体でみても、石油製品の国内需給の引き締まり、小売市況の是正などによる収益改善効果が発現すると期待される。

ただし、中長期的にみると、石油業界の収益環境は、石油業界が自由化された以降にみられる「改善と悪化」を繰り返すと予想される。石油製品の国内需要はジェット燃料油を除いて減少傾向で推移すると見込まれるため、国内向けの供給能力が削減される局面以外では精・販ギャップが拡大して需給が緩みやすくなり市況も崩れやすくなると予想されるからだ。

石油業界の収益環境を改善し、好環境を維持するためには、国内で流通している石油製品の大半を供給している元売各社が、適時、設備集約、製品輸出の拡大、石化シフトなどを図りつつ、常に需給の適正化に努めて、業転市場に安値玉が大量に提供されないように配慮することが求められる。併せて、大消費地を中心にシェアを高めつつある元売の販売子会社、出資特約店、有力販売事業者などが、今回、JXTGが取り組んで成果を上げているように、適正価格での販売に終始することが必要と思われる。

ガソリン・灯油・経由の税抜小売価格と原油価格の推移

原油処理量と常圧蒸留装置の実稼働率推移

石油販売業界ではシステムソリューションの導入・活用も検討課題に

石油販売業界では、市況に左右されにくい経営体質を実現するため、コストの適正化、事業の構造・運営体制の見直し、非石油事業の強化、業態転換などが課題になると思われる。

具体的には、従来から取り組まれている諸対策に加え、(1)経営実態に適合した営業時間への見直し、(2)要員の適切な配置、(3)優良顧客の取り込み、(4)顧客のニーズにマッチした適時・適切な提案、(5)成長している自動車の買取・販売、リペア、ボディコーティングなどの事業の強化、(6)カーケア事業におけるバックヤードの設置・活用、(7)立地環境や敷地が適合しているケースではコンビニエンスストアとの複合化(業態転換)、(8)同業他社や異業種との協業化などを検討する必要があると考えられる。

これらを適切に進めるためには、ビジネスの高度化や業務内容の複雑化への対応、他の業務システムとの連携、バックヤード・提携先・取引先などとのシステムの連携、顧客情報の取り込み・活用などを適切に進めるためのシステムソリューションの導入及び活用が重要な検討課題の一つになると考えられる。