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空間情報活用コラム

空間情報活用コラム第1回

AIによって加速する
地理情報システム(GIS)の活用

空間情報活用コラム

カーナビでお馴染みの地理情報システム(GIS)は、普段の暮らしを便利にしてくれる技術の一つですが、AIやIoTといった先進技術と結びつくことよって、さまざまな業界のさまざまな業種に関わる高度なソリューションへと発展を続けています。GISによって、私たちのビジネスはどのように変わっていくのでしょうか。本コラムの第1回は、その実態とAIの活用について解説していきます。

そもそもGISとは何?

新規の営業に行くときも、評判のレストランに行くときも、いまやスマホの地図アプリは欠かせない存在となりました。私たちは、Googleマップなどのツールなしでは、仕事も旅行も、日常生活でさえ滞ってしまうのです。

「その事業所は駅から歩いて何分なのか?」「そのレストランで美味しいメニューは何か?」といった情報を、私たちは地図アプリで調べることができます。注目すべきは、さまざまな情報が関連付けられたからこそ、それが可能になったということです。オフィスと最寄り駅の距離データや、メニューとそれを食べた人の感想コメントなどが、もしまったく切り離されていたら、わざわざ定規で道の長さを測ったり、店構えだけで美味しさを想像しなければならなかったでしょう。

こうした、地球上に存在するさまざまな情報を地図上で関連付け、応用していく仕組みを「GIS」といいます。これは「Geographic Information Systems」の略称で、日本語では「地理情報システム」と訳されます。いままではバラバラだった情報を重ね、地図上で立体表示したり、アニメーションにすることで、思ってもみなかったことがわかるようになりました。

それはたとえば「これから交通事故が起きそうな地域」です。カーナビの走行データを地図上に可視化し、「急ブレーキがたくさん踏まれた場所」を赤色で表示すれば、事故が発生する可能性の高い箇所が見て取れます。ここに標識やミラーなどを設置することによって、まだ事故が起きていない段階からリスクを減らすことができるわけです。

また、時間帯別の交通量や方向などもはっきりとわかるため、信号機の間隔調整によって渋滞を減らしたり、バスの走るルートを改善したりするといったことが可能になりました。

GISによって街全体の交通情報が掴めるようになり、自治体は道路行政をどうするべきなのか、より具体的な計画を練られるようになったのです。

ほかにもGISを利用することで、防災施設の位置や、災害時に自動車が通行不能になる箇所を地図上に重ね、災害対策を講じることができます。

災害対策における地理情報の重ねあわせ例 出展:国土交通省

AIの活用によって大量のデータを自動解析

多様な地理情報を統合することによって、新しい知見や閃きを得ることができるGISですが、残念ながら人の手だけでは限界がありました。

Google Earthにも使われる、アメリカの地球観測衛星「ランドサット8号」や、ヨーロッパの「センチネル2号」が撮影した画像は、だれでもインターネット上からダウンロードすることができます。しかし、更新される容量は一日に数テラバイトと、膨大な量がありました。「この画像を全部観て何かを発見して」と言われたら、気が遠くなります。

大量のデータから、何らかの傾向やパターンを掴み、疲労もなく高速で提案することは、深層学習を経たAIが得意としています。地表の細かい変化をAIに読み解かせることによって、メガソーラーの建設地はどこが適しているのか、各国の都市がどんな特徴を持って発展しているのか、といったことが衛星画像を通じてわかるようになってきました。

もちろん、AIは宇宙からの画像だけでなく、地上のデータも活用することができます。たとえば物流業はGISとAIを応用している業界の一つです。

物流倉庫には、毎日、「○○日までに届けてほしい」という注文があちこちから届きます。その注文は、季節・時期によってまったく異なります。お中元や年賀状をイメージすれば想像しやすいでしょう。トラックに積み込む荷物と、届ける順番は毎日変わるのです。おまけに、道の混み具合も日によって変わります。道路工事が始まったり、イベントが開催されればなおのことです。いったい、どの荷物をどの順番で届けるのが最も効率的なのでしょうか?

従来は、ドライバーの「勘」によってある程度のルートが決められていました。しかし今では、すべての状況をリアルタイムに把握・解析したAIが最適なルートを提案することで、配送時間を短縮できるようになったのです。

建設業もまた、GISとAIの応用を進めています。「AIを搭載したショベルカーが、画像分析やセンサーによる計測をしながら、三次元設計図をもとに土地を掘削し、ダンプカーへ土砂を積み込む。AIを搭載したダンプカーがGPSとカメラによって障害物を避けながら、所定の場所に土砂を運搬する。このような自動化は既に現実となっています。

効果があった広告や新規出店時の見込み客を分析

膨大なデータを地理情報と結びつけ、人間では気づきにくい傾向を教えてくれるGISのAI活用は、マーケティングの分野にも及んでいます。店舗の宣伝における応用事例を見てみましょう。

クーポン付きチラシを配布したり、LINEでセールス情報を送ったりと、お店は集客のためにさまざまな施策を展開しています。しかし、担当者がいつも頭を悩ませるのは「効果があったのはどの広告なのか?」を確かめることです。すべての来店者に聞けたとしても広告を覚えているとは限らず、広告の効果がはっきりしなければ次の手を打つこともできません。

しかし、GISとAIによるマーケティング支援のシステムを使えば、より信頼性の高い結果がわかります。店舗周辺のGPSやWi-Fiなどの通信量を分析することで来店者の移動傾向を把握し、さらには天候やイベント開催などによる増減も加味することで、より正確にプロモーションの成果を測定することができるようになったのです。

また、従来は「店舗から半径1km」などと円状で商圏を見込むことが一般的でしたが、実際に人の流れを可視化することによって、「幹線道路や川の向こうからは一切来店がない」「駅沿いでは想定よりもずっと遠くから来ている」といったことが正確にわかるようになりました。

さらに現在では、こうした人流情報に、行政が活用を推進している労働力調査や出産情報などのオープンデータなどを組み合わせることによって、「見込み客はどこにいるのか?」といったことまで分析することが可能となっています。今後は、ターゲットのいる地区に対して集中的に広告を投下すればよいわけです。

こうした情報は、既存店の集客だけでなく、新規店舗を出店する際の戦略策定にも役立つでしょう。GISは、エリアマーケティングにおいても大きな力を発揮するのです。

人工衛星と地図情報の連動で農作物の収穫時期を決定

GISは、AIの発展に加えて、多様なデータを取得できるようになったことで急速な進歩を遂げています。人工衛星による観測から、スマートフォンに内蔵されたGPSやWi-Fiなどの通信、IoTによるセンサー、さらにはドローンによるモニタリングまで、現在は毎日毎秒、大量の位置情報が収集されているのです。

その結果、ITやデジタル化とは縁が遠いように思われてきた農業においても、GISによって、農作業状況の把握や農地管理など、いろいろな場面で活用が始まっています。

従来は、手作業で地図にチェックを付けながら、農作業の進捗確認が行われていました。しかし、必要な情報をGISに組み込むことによって、農作業や機械の作業状況が地図上に表示できます。どの畑が「種を植えた」「肥料を蒔いた」「農薬を散布した」という段階なのか、遠隔地からでもリアルタイムに把握できるようになるのです。

日当たりや土壌の違いによって、隣の畑であっても作物の生育度合いは異なります。GISによって、それぞれに適した農作業を施す「精密農業」が可能となりました。

また、農作業において「いつ収穫するか?」は大事な決断です。たとえば小麦は収穫後、乾燥して製粉するわけですが、刈り入れ時の水分が35%を越えていると、小麦粉の品質が劣化することがわかっています。そのため「葉が枯れ、穂が黄色となり、実をツメでちぎったら少し抵抗が残る固さ」のときに収穫するのがよいとされてきました。

こうした人の手に頼るやり方では、広い農地で精密農業を実施することができません。そこで用いられているのが人工衛星です。地理情報とリンクさせた衛星データによって、小麦の水分量を解析し、畑ごとに最適な刈り取り時期を決められるようになったのです。品質の向上に役立つことはもちろん、小麦乾燥のための燃料を大幅に削減することにもつながりました。

まとめ

交通事故の予防、災害への対策、マーケティングといった身近な活用例だけでなく、物流業、建設業、農業と、多種多様な業界・業種でGISが活用されていることがわかりました。このほかにも、製造業やエネルギー産業、設備管理業など、GISとAIの応用事例はまだまだ数多くあります。

地理情報と付随するビッグデータに対し、AIが解析することによって、私たちはビジネスをさらに進化させることができるのです。

掲載日:2019年2月13日

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