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空間情報活用コラム

空間情報活用コラム第3回

「Society 5.0」におけるGISの役割

空間情報活用コラム

地理情報システム(GIS)と、AIやIoTとの融合は、家庭や企業、行政などに新たなサービスを提供しており、テクノロジーによる刷新が一つの業界だけでなく、社会全体に及んでいます。いま、日本は「Society 5.0」という社会像を掲げ、これをめざしています。この新たな社会はどのようにして築き、また維持、発展していくのでしょうか。その動きを見ていきましょう。

経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety 5.0の世界

IoTによって現実世界(フィジカル空間)のヒトや地上にあるさまざまなモノがインターネットにつながり、それらの情報がクラウド上の仮想空間(サイバー空間)で管理できるようになりました。そして、サイバー空間に蓄積されたデータをAIなどで分析することで、これまで解決が難しかった社会のさまざまな課題を解決することができるようになります。このようにフィジカル空間とサイバー空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決が両立する社会の姿を「Society 5.0」と呼びます。

このコンセプトは、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」の中で生まれました。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会が提唱されたのです。

空飛ぶマシン(ドローン)がいつでもどこにでもモノを運搬してくれる社会。自動走行バスが町中を走り回り時間帯を問わず目的地に行ける社会。タブレットを利用することで病院へ行くことなく診察ができる社会。自動で動くロボットが高層ビルのような高所や寒冷地の広大な場所を清掃・管理する社会。無人トラクターが土起こしや種まきを自動で行い、食料を生産していく社会。

このようなことがSociety 5.0の社会では現実となるのです。

サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合
出典:内閣府「Society 5.0『科学技術イノベーションが拓く新たな社会』説明資料」

Society 5.0におけるインフラメンテナンス

電力網、交通網、通信網、上下水道といった社会インフラは、私たちの生活を支えるうえで欠かせないものです。日本の多くの社会インフラは、1950〜1970年代の高度経済成長期に建設されました。それから半世紀が経ったいま、一斉に老朽化し始めています。社会インフラを維持するため、専門の作業員により定期的な点検、診断、措置、記録というメンテナンスサイクルが実施されています。しかし、労働人口の減少に伴い、いまや作業員の確保は難しくなり、メンテナンスサイクルを回すことが難しくなってきています。このような課題を、Society 5.0ではどのように解決できるのでしょうか。

Society 5.0とは、フィジカル空間とサイバー空間を融合し、ビックデータをAIで解析することで、経済発展と社会的課題の解決を両立させるという取り組みでした。

インフラメンテナンスでは、車で走行しながら道路や建物、電柱・電線、トンネルといった道路周辺の3次元データを自動で取得するモービルマッピングシステム(MMS)や、詳細な3次元の地形データをドローンで取得することでメンテナンス対象となるインフラ設備をサイバー空間に再現する取り組みが進められています。

さらにインフラ設備に取り付けられた各種センサーで状態を把握し、AIによる分析を行うことで点検・診断が必要な個所を自動で把握したり、劣化予測を行うことで適切にメンテナンスできるようになります。

たとえば「0.3mm以上のひび割れがある部分だけをリスト化する」「5年前の点検時と比べて劣化している場所を明らかにする」といったことが可能となるのです。

また、従来の点検業務は、熟練者が目視や打音を聴くことによって状態を察知していましたが、カメラやマイクから得た画像データや音声データとともに障害事例データを学習させることによって、AIが劣化している箇所を推定したり、汚れと破損の違いを見分けたりすることができます。

これらの取り組みにより、作業員が現地を訪れることなく点検が行えるようになり、メンテナンスサイクルを効率よく回せるようになります。

GISにより、AIの精度を高める

AIをメンテナンスに活用させるためには、「点検すべき場所はどこか」「どうなれば異常なのか」といったことを見極めさせることが必要です。生まれたばかりのAIは、街路樹と電柱の区別すらできません。ここで役立つのがGISです。地図情報と3次元データを位置情報にて照合させることによって、「これが電線で、あれが樹木で、それが建物である」といったことがAIでも判別できるようになります。点検、措置が必要な場所とその対象、状態すべてAIが判断できるようになり、メンテナンス計画もAIが立案できるようになれば、メンテナンスサイクルはより一層の進化を遂げることができます。カメラや測量機器を積んだ車を走らせるだけで、街の生活基盤をしっかりと見守ることができるのです。

3次元データの活用で建築プロセスを効率化

インフラの整備が求められる一方で、いまや建設業界も深刻な人手不足に陥っています。国交省の調査によると、1997年に685万人いた建設業就業者が、2016年には492万人に減少しています。さらに、29歳以下は全体の1割程度となっており、高齢化も進行しています(国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」)。

建設土木業界では「i-Construction」という取り組みが進められており、測量・設計・施工・検査というすべての建設プロセスにICTを導入することで、生産性向上を図っています。人手不足の中、ICTを全面導入することによって「一人あたりの生産性を上げる」ことが、i-Construction の目的です。

このi-Constructionの取り組みでもインフラメンテナンスと同様に「3次元データ活用」が進められています。対象の地形や建造物の構造などを3次元データで正確に知ることにより、着工するまで気付かなかったような課題に対して、設計段階から検討することができるようになりました。さらにICT建機を用いれば、熟練者でなくとも3次元データ通りの施工をすることが可能です。検査の段階においても、3次元データを用いることで立体的な比較が容易になります。

従来の3次元測量は、トータルステーションなどの三脚に乗った測量機器を持ち歩いて多数のポイントを測定し、紙の資料にまとめるという工程だったため、手間やコストのかかる作業でした。現在はドローンやスマートフォンを用いて手軽に3次元測量を行えるようになったため、3次元データの活用が測量・設計・施工・検査の各工程で利用され始めています。

たとえば、盛土計測による施工の進捗管理があります。一般的に建築物は自然そのままの土の上に建てることはしません。締め固めて「盛土」にする必要があります。施工の進捗を管理するためには、こうした施工現場の盛土や掘削箇所の計測を定期的に、そして正確に実施する必要があります。いまや、GNSS(全球測位衛星システム)アンテナと接続したスマホを用いて、「周囲を歩いて動画撮影する」だけで計測が可能です。3次元データから盛土の体積が自動計算されるので、施工の進捗管理が定量的に行えるようになりました。

内閣官房が2018年6月に発表した「未来投資戦略2018」の中の「2025年度までに建設現場の生産性の2割向上をめざす」という目標を達成するため、i-Constructionではこのようなソリューションの活用が進められています。

まとめ

Society 5.0という目標を掲げ、次世代の社会を構築しつつある日本においては、フィジカル空間とサイバー空間の両方に基礎を築き上げ、サイバー空間においてAIが出した最適解を、フィジカル空間へと反映させることで、経済発展と社会的課題の解決を両立することが求められています。GISやAI、IoTといった技術の融合こそが、Society 5.0を支えていくのです。

掲載日:2019年5月28日

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