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シリコンバレーから考えるトレンド ~メタバースの拡がり~

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Gen-Z(Z世代)と呼ばれる世代の特性や影響力の大きさにより、メタバースはさらに広がっていくと考えられます。メタバースを含む今後のトレンドについて、シリコンバレーからお届けします。 ※Gen-Z(ジェネレーションZ)、Z世代とは、アメリカ合衆国や英語圏、日本などにおいて概ね1990年代半ばから2010年代初頭までに生まれた世代をさす。生まれながらにしてデジタルネイティブである人類初の世代

※本記事は2022年5月に掲載されたものです

北林拓丈(きたばやし・ひろたけ)
北林拓丈
(きたばやし・ひろたけ)
2000年に日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現:株式会社日立ソリューションズ)にSE職で入社。JavaエンジニアとしてECサイト開発・運用に3年間携わり、その後米国ITベンダーの製品開発研究所にて1年3カ月の海外業務研修。日本帰国後は主に大手通信事業者向けの業務・システム再構築プロジェクトにコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネージャーとしてそれぞれ従事。2016年からワークスタイル変革ソリューションの事業企画・開発に従事し、2020年1月からシリコンバレーに駐在。スタートアップとのパートナーシップや日系企業間連携による新規事業立ち上げ、事業拡大に従事。

初めまして。私はシリコンバレーにてスタートアップの発掘やトレンド調査を行っています。今回は2022年1月5~8日にラスベガスで行われた世界最大の電子機器見本市/IT複合イベントであるCES2022に見る2022年のトレンドについてご紹介します。今年のCESは2年ぶりの現地会場(ラスベガス)での開催でしたが、COVID-19オミクロン株の影響に伴いGoogle、Amazon、Microsoft、Meta(Facebook)、AT&T、NVIDIAなどの著名企業ほか合計153社が参加をキャンセルしたため、来場者数は2020年の1/4、出展企業数も半数という形でした。

ソニーの新型EV「VISION S 02」 新会社を設立し、EVの商用化に向けて本格検討に入る
ソニーの新型EV「VISION S 02」
新会社を設立し、EVの商用化に向けて本格検討に入る

こうした中、主催者のCTA(Consumer Technology Association)が発表したトレンドは今後に向けて注目すべき内容が含まれていました。まずTop Trends To Watchとして挙げられていたのは、モビリティ・物流を含めたTransportation、Space Tech、Sustainability、そしてDigital Healthの4つです。TransportationではEVが主流となる中、大手・スタートアップともに新規プロダクトが数多く発表され、異業種からの参入やEV技術のモジュール化・他社協業も拡大し、これまでのハードウェア中心からソフトウェアやエンターテインメントも含めた次世代のエクスペリエンスを提供するEVの発表が相次ぎました。

Space Techは火星や月での生活や発見から、天気予報、衛星システム・通信等を含む分野で、発表・展示数は少数でしたが、新たな注目領域としてフォーカスされました。

Samsungブースにて製品を梱包している箱を、階段や玩具などに再利用したりできる
Samsungブースにて製品を梱包している箱を、階段や玩具などに再利用したりできる

Sustainabilityは2021年10~11月に開催されたCOP26を受けて、サステナビリティ宣言や企業の環境ビジョンを押し出す企業が出てきました。特にSamsungはキーノート・展示で企業ビジョン「Together for tomorrow」を宣言し、Everyday sustainability:サステナビリティはお客様の製品体験の一部となり、お客様はサステナブルな生活を送れる、というメッセージを発信していました。具体的には、製品ライフサイクルを見直して70万トンのCO2削減に貢献したり、テレビの箱にリサイクル素材を使用し、使用後も箱を階段や玩具として再利用したりできるということでした。

Digital Healthは今回Abbott Labsがヘルスケア企業として初めてのキーノート登壇となり、COVID-19での生活が続く中でフィジカルに加えてメンタルヘルスも含め、存在感を発揮していました。

次にコンシューマーの動向として、過去1年間で4K Ultra HD TVやスマート家電・スマートホームなど、従来の製品をレベルアップしたものへの消費が進んでおり、今後も続くということでした。また、価格指標値が業界標準よりも1.5倍以上高いプレミアムブランドが標準的なブランドに比べて4倍の成長を見せているということでした。

VR上の店舗で商品を試着、購入できるバーチャルストアを体験している様子
VR上の店舗で商品を試着、購入できる
バーチャルストアを体験している様子

そして今回、Metaverse(メタバース)について初めてキーワードとして挙がりました。実際のところこの言葉の定義は曖昧なままです。会場内ではXR(AR,VR,MRなどの総称)の展示も幾つかありましたが、メタバースという単語をXRの代わりの標語として使っている企業も見られました。

見解としては2022年時点ではまだメタバースはここにはなく、今後数年間で3つのアプローチ、VRヘッドセットやハプティクスといったハードウェアベース、ゲーム・ソフトウェアベース、Crypto(暗号資産)ベースの進化によってメタバースが形作られていくということがCES内では語られていました。

このCESの2週間後に行われたNRF(全米小売協会主催のカンファレンス)ではメタバースについての定義や小売業界にとっての新たな魅力的な市場であること、そこでの商取引メタコマースについて幾つかのセッションで具体的な説明がされていました。

そこでの説明を総合すると、メタバースとは文化やデザインを牽引し、新しい表現と体験を可能にする共有デジタル領域であり、土地、建物、アバター、名前まで売買できる、永続的かつ分散型の共有的な仮想世界。現在では、一連の仮想世界として存在。将来的にはデジタルと物理的な生活が完全に融合し、事実上無制限の数のユーザーが同期的かつ持続的に、個人の存在感を持って、アイデンティティ、履歴、資格、オブジェクト、通信、支払いなどのデータの連続性を持って体験することができるようになり、そのテクノロジーとしてはNFT(Non-Fungible Token)やブロックチェーンを利用することが多い、ということでした。

メタバースの世界的な収益機会は、2024年に8000億ドルに近づく可能性があり、Facebookは2021年10月に社名をMeta(メタバースのメタ)に変更し、メタバースへの本格参入を宣言しました。またナイキやアディダスといった大手スポーツブランドは仮想世界でのデジタル体験やコンテンツを提供したり、ルイ・ヴィトン、バーバリー、ドルチェ&ガッバーナといった世界的ファッションブランドもNFTを活用したデジタルファッションアイテムを公開したりしています。

また、メタコマースは今までで最高のマーケティングや販売機会となり得るということで特に小売業界としての期待の大きさを感じます。「フィジカルグッズの最大のチャンスはバーチャルグッズ」というコメントがあるように、従来店舗やオンラインで販売していたものを先行してメタバースの世界で販売し、好評であればフィジカルでも生産する、もしくはフィジカルで売れているものをデジタル化し、メタバースの世界でも販売する、といったやり方が進んでいくと考えられます。

このメタバースが拡がっていくと考えられる前提にはGen-Z※と呼ばれる世代の特性ならびに影響力の大きさがあります。Gen-Zは世界の人口の36.7%(26億人)を占めており、さらに2030年までに世界の人口の50%になると予想されています。Gen-Zとその上のミレニアル世代はEコマースで本物の服を買うよりもアバターに着けるバーチャルグッズやNFTを買うのにお金を使う、またデジタルでのプレゼンスが高いブランドから購入するという特性があります。よって小売業界にとって今後の事業継続・拡大のためにはいやが応でもメタバースへの参入、そこでのデジタルコンテンツの提供とプレゼンスの向上を行っていく必要に迫られていると言ってよいでしょう。

小売業界にフォーカスして書きましたが、それ以外でも弊社含めメタバースへの関わり方を議論していく年になりそうです。引き続き今後の動向やトレンドについてウォッチしていきます。

Team AURORA
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