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【知られざるヒット商品のオモテとウラ】第3回 「モメンタムファクトリーOriiの「オリイブルー」の商品群

今回ご紹介するのは、高岡銅器400年の伝統から進化した独自の着色技法がもたらす世界にひとつ限りの発色と模様であるモメンタムファクトリーOriiです。折井宏司氏が生み出した技術は「オリイブルー」と呼ばれ、銅板はもちろん、時計やアイスペール、アクセサリー、テーブルウエアなどにも使われています。

右肩下がりの業界で至難の業にあえて挑んだ

北村 森

1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。「日経トレンディ」編集長を経て独立。商品ジャーナリストとして、製品やサービスの評価、消費トレンドの分析を続けるほか、経済産業省やJETROなどと連携した地域おこし事業に数々参画。現在は「中日新聞」など8媒体でコラムを執筆、NHKラジオ第1「Nらじ」などのテレビ・ラジオ番組でコメンテーターを務める。サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。

富山県の高岡市は、日本の銅器生産額の95%を占める一大産地です。かつては「待っていても仕事が舞い込む」時代があったとか。ところが今では伝統産業の世界はどこも厳しい状況です。高岡銅器に関しても、1990年代初期がピークで、現在の売り上げ規模は3分の1以下に落ち込んでいます。

「待ちの商売では、もうつぶれる」。折井着色所(現・モメンタムファクトリー・Orii)の3代目は、家業を継ごうと帰郷した1990年代半ばに危機感を抱きました。

他の伝統産業とたがわず、ここ高岡の銅器製作も分業制がならわしでした。折井製作所は、できあがった銅器に色をつけるという最後の工程を担う町工場です。ここで3代目は考えました。よその工程を知らなければ、動くことはできない、と。

薄い銅板に美しい青を着色する技術を会得するまで何年も要した
薄い銅板に美しい青を着色する技術を
会得するまで何年も要した

同社の売り上げがどんどん落ちていくなかで、3代目は銅器の色づけ以外の工程を自主勉強会で会得していきます。その勉強会では、同じく危機感を持つ仲間からこんな声も漏れてきました。「いまどき、干支の置物なんて誰が買うのか」。

3代目は同時に、着色技術の新たな可能性を模索し始めました。そもそも高岡銅器における同社の仕事は鋳物への着色でしたが、3代目はそれを「薄い銅板に色をつけられないか」と考え始めたのです。これが果たせれば、銅板の加工によって少量生産での商品づくりができます。鋳物だとそうはいきません。

しかし、それまでの技術で銅板に着色するのは至難の業だったそうです。色こそつくのですが、銅板には厚みがないので、バーナーで焼くと板が大きく変形してしまう。そんなこともあって、当時は銅板に色づけしようと考える人はまず存在しなかったとのこと。業界内では、昔ながらの伝統色を銅板につけるなど無理だと思われていましたし、なにより高岡は鋳物ありきの街だったからです。

でもここで3代目は踏ん張りました。「考えようによっては、自分がめざす道には誰もいない」という解釈が支えになりました。苦心すること数年、3代目はついに色づけに使う薬品の調合に成功します。

そこから、銅板を用いた少量生産の商品づくりに邁進しました。分業制が当たり前の高岡において、色づけの工程に専念していた同社が商品づくりに踏み込んだのには周囲の反発もあったと思います。それでも3代目はひるみませんでした。社の存続にはこれしかなかったのです。

社業が大きくブレイクしたのは2013年。美しい青をたたえたアイスペールが、大都市圏での展示会をきっかけに注目を集めたのです。そして翌年、NHKの全国ネット番組で、3代目がつくった作品を見て出演者がこうつぶやきました。「これはまさしく『オリイブルー』ですね」。

3代目が発信したわけでもないこの強い言葉が、ここから独り歩きするかのように広がり、今では「オリイブルー」は同社のアイコンのような存在になりました。

現在、同社は「オリイブルー」を施した銅板の色と模様をスキャンしたうえで転写した、ファブリック(布地)も販売しています。スーツの裏地に用いると、これがまた映えるのです。インテリアの次はファッションアイテム……。これも、3代目の奮闘があったからこその展開といえるでしょう。

鋳物の街・高岡市に拠点を構える。若手の職人を意欲的に採用
鋳物の街・高岡市に拠点を構える。
若手の職人を意欲的に採用

「オリイブルー」は
同社の代名詞に

元は銅器(鋳物)への着色工程を担う町工場。3代目が家業に戻って、それまで業界内で果たせなかった新技術の会得を目指すとともに、自社ブランドでの商品づくりに着手。同社のイメージカラーとなっている美しい青は「オリイブルー」と称される。1990年代末の低迷期から比べると、同社の売上高は6倍となるほどに反転攻勢を遂げている。伝統産業を担う古い町工場でありながら、若い世代の職人が多く活躍しているのも目を引く。

https://www.mf-orii.co.jp/

「オリイブルー」を生かした酒器など、精力的に商品開発を進める
「オリイブルー」を生かした酒器など、
精力的に商品開発を進める
「オリイブルー」を転写した布地をテーラーに供給。裏地として人気
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