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【挑む人】第3回 株式会社グローバルトラストネットワークス 代表取締役 後藤裕幸「外国人と共につくるこの国の未来」

日本の人口が減少している一方で、日本で暮らす外国人の数は年々増加している。2018年「出入国管理法」の法律改正によって外国人就労者に門戸が開かれたことで、今後日本にやってくる外国人の数はいよいよ増えていくことになりそうだ。事実上の移民社会となる日本の未来とはどのようなものなのだろうか。外国人向け保証ビジネスを10年以上前から手がけているグローバルトラストネットワークス(GTN)代表取締役の後藤裕幸氏が、自らのビジネスとこれからの日本社会の可能性について語った。

※本記事は2019年7月に掲載されたものです

「何をやるか」よりも「何をやらないか」が重要

後藤裕幸(ごとう・ひろゆき)プロフィール

1978年熊本県生まれ。中央大学法学部政治学科在籍時に起業し、28歳でグローバルトラストネットワークス(GTN)を設立。外国人向けの賃貸住宅保証ビジネスからスタートし、生活サポート、賃貸仲介、携帯電話、人材紹介、クレジットカードなど、日本に住む外国人をサポートする各種事業を展開している。

──外国人向けの保証ビジネスを始めたきっかけをお聞かせください。

以前私が経営していた会社の社員は、私以外ほとんど外国人でした。彼らと一緒に飲みに行くと「保証人がいなくて部屋が借りられない」と皆、口をそろえて言うんです。それなら私が保証人になろうと立ち上げたのがGTNです。主な顧客は不動産管理会社で、外国人と入居契約をする際に連絡をいただき、審査をして問題がなければ保証人を引き受けます。

──リスクはないのでしょうか。

当社のスタンスは「親代理業」です。保証人は一般的には親に頼むものですよね。しかし、外国人の場合は本国に親がいるので頼むことができません。そこで、私たちが本国の親と直接連絡を取って、連携が可能と判断した場合のみ保証人になります。

──なるほど。本当の親との連携のもとでの「親代わり」だからリスクは非常に少ないわけですね。保証事業以外のビジネスも手がけているのですか。

世界各国の国旗があしらわれたカップ。こんなところにもGTNの多様性が表れている
世界各国の国旗があしらわれたカップ。こんなところにもGTNの多様性が表れている

基幹事業は他に3つあります。まず、保証ビジネスから発展した不動産賃貸仲介業。次に、外国人向けの通信事業。代理店ではなく自ら通信事業者(MVNO)になるという事業モデルです。そして3つ目が、外国人の働き手を企業に紹介する人材ビジネスです。他に、最近では外国人向けのクレジットカード事業も始めました。

──日本に来る外国人は、GTNに相談すれば基本的な生活がすべて整うということですね。前例のないビジネスである分、苦労も多かったのではないですか。

2006年の創業時には毎日飛び込み営業をしていましたが、全く相手にされませんでしたね。外国人は生活トラブルが多いとか、物件価値が下がるとか、ここでは言えないようなもっと差別的なことを言う人もいました。最初の3カ月での契約は1件だけ。売り上げは4万5000円でした。

しかし創業から12年半ほどたって、今では私たちのビジネスは広く認知されるようになっています。取引のある不動産会社はおよそ1万店で、これまでの保証契約件数は12万件に達しています。大学との連携も進んでいて、現在63校と提携しています。

──ニッチと言っていいビジネスだと思いますが、成功の要因は何だったのでしょうか。

「何をやるか」よりも「何をやらないか」を明確にしたことだと思います。保証ビジネスを始めた頃、「どうして日本人の保証はしないんだ?」とよく聞かれました。しかし対象を日本人まで広げていたら、GTNのビジネスはかなりぼんやりしたものになっていたと思います。外国人だけを対象にする。日本人は対象にしない。それにこだわったからこそ、エッジが立って、目立つことができたわけです。これまでの何度かの起業経験で学んだことは、ビジネスはオンリーワンをめざすべきだということです。オンリーワンということは、競合がいないということですから、おのずとナンバーワンになれるのです。

壁紙や調度品に工夫が凝らされているGTNのオフィス。「明るく、楽しく働いてほしい」という後藤氏のメッセージが込められている。壁紙の「510」という数字は「ゴトウ」を意味するとか
壁紙や調度品に工夫が凝らされているGTNのオフィス。「明るく、楽しく働いてほしい」という後藤氏のメッセージが込められている。壁紙の「510」という数字は「ゴトウ」を意味するとか

外国人がいなければ日本の経済は成り立たない

──創業以来、日本の外国人を取り巻く状況はどう変わりましたか。

まず、数が違います。中長期在留者数は231万人を超えました(2018年6月時点)。外国人が特に多い東京23区では、新成人のほぼ8人に1人が外国人になっています。新宿区の新成人の4割超、同じく豊島区の新成人も約4割が外国人です。

外国人自体も1年間で十数万人増えています。10年前は居酒屋などで外国人が働いている姿を目にすることはほとんどありませんでしたが、今はコンビニでも普通に働いています。社会の中に外国人がいる風景がごく当たり前のものになっているわけです。

こうなると、当然日本人のメンタリティーも変わります。日本人の多くが、隣人や同僚として外国人を受け入れるようになってきていると思います。

後藤裕幸 氏

──2018年には出入国管理法が変わり、日本は事実上の移民社会に向けて舵を切りました。この動きをどう見ていますか。

基本的にはポジティブに受け止めています。単身者の上限5年の滞在が許される「特定技能1号」という資格では、14業種での労働が認められることになりました。まずは「外食」「宿泊」「介護」の3業種での技能試験が実施されますが、その結果、何が起こるか。まず、工場や事業所のバックヤードではなく、接客の現場で多くの人が外国人を日々目にするようになります。これによって、ますます外国人はごく普通の住民として認知されるようになるでしょう。

また、介護現場で外国人が働くことの影響も大きいと思います。高齢者が日常的に外国人と接するようになり、体を洗ってもらったり、おむつを替えてもらったりする。そういう経験をすることで、これまで外国人に偏見を持ちがちだった高齢者の意識も大きく変わっていくはずです。

──今後、日本の人口が減っていくことを考えれば、外国人に働いてもらうことは必然といえそうですね。

その通りです。日本の人口は2050年に約9700万人まで減ると予想されています。減少数は平均すると毎年100万人。政令指定都市が年に1つ消滅するのと同じです。

一方、世界の人口は増え続けていて、2050年には98億人に達するとみられています。アジア地域を見ると、日本、中国、韓国では人口は減少に向かいますが、東南アジアでは今後も人口が増え続けます。

人口が減っている国が増えている国の人たちの力を借りて経済を支えていく。これは極めて自然な流れです。というより、それ以外の選択肢はありません。海外諸国を見ると、移民が増えている国は確実に経済が伸びています。今後は人材獲得競争が世界的に激化していくでしょう。「外国人を受け入れるか否か」といった上から目線の議論をしていたのでは、外国人は来てくれません。「日本に来たい」「日本に来てよかった」と言われる国にならなければならないのです。

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