コロナショック下で二極化した幸福度
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──コロナショック下で、幸福な人とそうでない人の差が明確になってきているような気がします。
二極化していると言っていいでしょうね。全般に幸福度が下がっている印象もありますが、私が代表を務めている「みんなで幸せでい続ける経営研究会」が2020年5月に実施した調査では、コロナショック下で幸福度が下がったと答えた人は2割、上がった人は4割でした。コロナショックが新しいことにチャレンジするきっかけになったり、通勤時間が減って家族と過ごす時間が増えたりして、むしろ幸せになったという人が実は多いんですよ。
──幸福度の差は何に起因するとお考えですか。
総じて、新しい方向性を見つけた人は幸福になっています。災厄がじっと去ることをただ待っているだけの人は不幸になっているように思います。その差を生み出しているのは、やはり自己肯定感だと思います。「自分はできる」と思っている人は、能力に関係なく新しいことにどんどんチャレンジすることができます。
──ソーシャルディスタンシングによって、幸福の2つ目の因子にかかわる「つながり」が希薄になっているという事情もありそうです。
そこでも二極化が進んでいると思います。リモートワークやリモート講義には、メリットとデメリットがあります。メリットとして挙げられるのは、どこにいても仕事ができたり、どこからでも授業に出席したりできること、あるいは同時にたくさんの人とコミュニケーションができることなどです。一方デメリットとしては、相手の感情の細かな機微を汲み取るのが難しいことなどが挙げられるでしょう。幸福度が高い人たちは、リモートのメリットを最大限に活かし、新しいコミュニケーションのあり方を楽しんでいるように見えます。それに対し、「オンラインにはデメリットしかない」と考えている人は、人とのつながりを寸断してしまって、幸福度を自ら下げてしまっているような気がします。
──今後、幸福学はどのような役割を果たしていくのでしょうか。
先進国は成長期から成熟期に入っています。それは、経済中心の社会から幸福中心の社会に移行するしていることを意味します。あらゆる産業で「幸せ」を第一の価値として考えなければならない時代になった。そう言ってもいいでしょう。そのような時代に「幸せ」の社会実装をこれまで以上に推進していくことが、今後の幸福学の目標になると考えています。
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神奈川・日吉の慶應義塾大学キャンパス近くのスタジオで撮影とインタビューを行いました。著書のプロフィールなどでお顔写真は何度も拝見していましたが、実際にお会いすると予想よりもすらりとした長身で、素敵な声と素晴らしい笑顔とが相まって、幸福学の提唱者ならではの「幸せオーラ」を感じさせてくださいました。幸福学の骨子を理路整然と解説してただき、「幸せ」に対する科学的アプローチとは何かということがすらすらと頭に入ってきました。幸福の達人はまたコミュニケーションの達人でもある。そんなことを実感できた楽しい取材でした。