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【挑む人】第37回 須藤玲子「めざすのは美しさだけではない環境にも優しい布」

つくる者の責任として環境に配慮する

残った端切れを縫い付けて新しい布によみがえらせたもの
残った端切れを縫い付けて新しい布によみがえらせたもの

様々な挑戦を続けてきた須藤氏が近年意識を向けているのが、サステナブルな布づくりだ。実は、NUNO設立時から「捨てない」主義を貫き、端切れをつなぎ合わせて新しい布に仕立てる「つぎはぎ」シリーズを考案するなど布の再利用に取り組んできた。現在では代表作となっている「紙巻き」も、「捨てない」ことから生まれた。

「ポリエステル高収縮長繊維を使用したタフタ生地の生産工程で織り傷が出てしまったのです。それも1000m。売り物としては致命傷でしたが、これを工場に突き返したら、次はもう自分たちの依頼を受けてもらえないかもしれない。だからといって絶対に捨てられない。悩んだ結果、タフタ生地を8mm幅に裁断。柄状にしてステッチで固定し、レース状の布を作製しました。これが大きなプロジェクトに採用され、すべてを活かすことができました」

また、2016年にはニューヨークのクーパーヒューイット・スミソニアン・デザインミュージアムで開催された「Scraps:Fashion, Textiles, and Creative Reuse」展に参加。これは、先述のMoMAのキュレーターがクーパーヒューイットへと移り、繊維業界から出る大量のゴミに対するメッセージとして企画した展覧会だ。通常はゴミとして廃棄される端切れや廃棄物をデザインに取り入れている3人のデザイナーが紹介された。その一人に選ばれた須藤氏は、蚕が繭をつくる際に最初に吐き出す糸で、太すぎて織物には向かないため廃棄される「キビソ」を使ったテキスタイルなどを発表。ゴミ問題を提起したこの展覧会は2019年まで巡回し、大きな反響を呼んだ。

「10年後、20年後の布の在り方を考えながら、愚直に布づくりをしているだけ」。そう言ってほほ笑む須藤氏は、今改めてサステナブルな布づくりに取り組む必要があると話す。

「特に1990年代は、化学繊維と天然素材を混ぜるなど、リサイクルしにくいハイブリッドなテキスタイルをつくることが主流でした。当時、私もそうしたデザインを手がけていましたから、いま一度つくる者の責任として布づくりを見直しているところです。捨てないことはもちろん、親水性と疎水性の素材は混合しない、石油由来の繊維はケミカルリサイクルしやすいデザインにするなど環境を意識した布づくりを追求していきたいですね」

須藤玲子氏
〈取材後記〉

撮影とインタビューは、東京・六本木のアクシスビルにあるNUNOのショップで行いました。ショップ内には色とりどりのテキスタイルが並び、インタビューの最中にもさまざまな布をふんわり広げて見せてくださいました。お話に登場した「羽オーガンジー」や「つぎはぎ」など、豊かな発想から生まれたテキスタイルはいずれも魅力的なものばかり。「布はあまりに身近すぎて意識しないものだけど、自分が着ている服の布はどこでつくられているのか。それを知ることから始めて、布を楽しんでほしい」という読者へのメッセージもいただきました。

特集 須藤玲子/了
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