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【挑む人】第38回 金春湯 4代目/企画担当・風゜呂(プロ)グラマー 角屋文隆「エンジニアが創り出す銭湯の新しい姿」

特徴のあるサウナで人気が高い東京・大崎の歴史ある銭湯・金春湯。その金春湯を経営する角屋文隆氏は、2019年夏までITエンジニアとして会社勤めをしていた。エンジニアが家業を継いだことで銭湯のデジタル変革が始まった。デジタルの力を少し借りて、古くて新しい銭湯の魅力を改めて発信し続けている。

※本記事は2021年10月に掲載されたものです

家業を手伝った時に「いい仕事だな」と実感

角屋文隆(かどや・ふみたか)プロフィール

東京都品川区大崎の銭湯・金春湯の経営者とフリーランスのITエンジニアの2つの肩書を持つ。医療・光学機器メーカーでITエンジニアとして約10年間勤務し、2019年7月に退職、家業である金春湯を継いだ。金春湯は1950年創業の老舗で、70年代から角屋家が経営を引き継ぐ。独特なストーブを使ったサウナが有名。

※黒字= 角屋文隆 氏

──金春湯を継ぐことになるまでにどんな経緯があったのでしょう。

以前は医療・光学機器メーカーでエンジニアをしていたのですが、祖母と両親が切り盛りしていた金春湯に、母がけがで入院するというアクシデントが起きました。2017年夏のことです。残された2人では手が回らなくなり、私も平日の夜や土日に金春湯を手伝うことにしました。

──それまでは金春湯の仕事には関わってこなかったのですね。

エンジニアとして会社勤めをしていて、銭湯を継ぎなさいと言われたことは一度もありませんでしたし、銭湯とはほとんど関わりがなかったんです。なので銭湯を継ごうという意識も全くありませんでした。

ところが、母の入院をきっかけに手伝ってみるといろいろと感じることがあり、銭湯に興味がどんどん湧いてきました。

家業を手伝った時に「いい仕事だな」と実感

──どのようなところに面白さを感じましたか。

エンジニアとしての視点では、普通の会社なら当たり前のことができていないなと感じたことがありました。例えば、お客様の情報を取っていない、など。もちろん、一日の終わりに売り上げは締めますが、男性が何人で女性が何人といった基本的な情報すら分からなかったのです。これは改善できるなと感じました。

違う側面では、お客様と直接出会うことによる気づきがありました。エンジニア時代もお客様の気持ちを考えなさいと言われて仕事をしていましたが、なかなかお客様に直接お目にかかることはありませんでした。しかし、銭湯の番台に入ると、自然にお客様と触れ合うことになります。

場所柄、会社帰りに入浴やサウナ浴をされていかれるお客様が多く、疲れた顔で来店された方が生き生きとした顔で帰っていくのを目の当たりにしました。銭湯やサウナが癒やしの場になることを実感した瞬間でした。これはいい仕事だなとだんだん引き込まれていきました。

知られざる金春湯の魅力をWEBサイトとSNSで拡散

──銭湯の手伝いを始めてから、家業を継ぐ気持ちはすぐに固まったのですか。

いえ、すぐに継ごうという考えには至りませんでした。銭湯は斜陽産業の代表格のような存在ですし、金春湯も今後のことを考えると心配になるぐらいの来客数だったのです。一方で、いい仕事だなと実感したこともあり、会社員を続けながらお客様を増やす方法を考えました。

そうして2018年の年明けに金春湯のWEBサイトを立ち上げ、SNSへの投稿も始めました。それまで金春湯は近所の人しか知らない銭湯で、主なお客様は高齢の常連さんという状況でしたから、インターネットの効果に期待しました。

独特なストーブで、約90℃と高温ながらしっとり感を楽しめるサウナ
独特なストーブで、約90℃と高温ながらしっとり感を
楽しめるサウナ

実は銭湯に興味を持ち始めてから、銭湯の人気店をいくつか訪ねてみたところ、お客様が多く入っていたんです。経営者もお客様も若い人が多く、これならば金春湯も“いける”のではないかと思いました。今ほどではないですがサウナブームが始まりかけていて、イベントが開催されたり、「サウナイキタイ」というサウナ検索サイトを同世代が運営したりするようになっていました。同世代が同業者として活躍しているのを見て、銭湯への思いが募っていきました。

──銭湯やサウナが見直される要因はどう分析していますか。

一つは強制的なデジタルデトックスの場であることでしょう。今の時代、スマートフォンを持たない1時間、2時間という時間はとても貴重です。また、お風呂が好きな人、サウナが好きな人という、同趣味の人が近くにいるという、コミュニケーションが取れている感覚が心地よいことも挙げられます。

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