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【挑む人】第43回 長坂真護「廃棄物をアートにガーナのスラム街をサステナブルタウンに」

廃棄物に埋まったスラム街、アグボグブロシーには世界の矛盾が凝縮されている。その矛盾は寄付や慈善では解消できない。サステナブル・キャピタリズムによってスラム街が変わろうとしている。

※本記事は2022年6月に掲載されたものです

現地の社会に溶け込んでコミュニティのチーフに

長坂真護(ながさか・まご)プロフィール

1984年生まれ。2017年に世界最大級の電子機器の墓場といわれるガーナのアグボグブロシーを訪れ、衝撃を受ける。先進国の生活は、こうした犠牲の上に成り立っていることを伝えようと決意。アートを通じた「サステナブル・キャピタリズム」を提唱し、スラム街に学校や文化施設を設立した。

※黒字= 長坂真護 氏

──世界に様々な国がある中で、ガーナに行った理由をお聞かせください。

2016年、たまたま手に取った雑誌のコラムを見て、心に激震が走りました。先進国が発展すればするほど、貧困国の問題が深刻化するという記事で、フィリピンのスラム街が取り上げられていたのです。

帰宅してネットで調べると、さらに悲惨な状況として、電子機器の墓場といわれるガーナのアグボグブロシーを見つけました。これは、自分の目で確かめないといけないと思い、翌年単身ガーナを訪れたのです。

──アグボグブロシーはどのようなところなのでしょうか。

首都アクラの空港から車で30分ほどで、現地の人も行きたがらない場所です。住民は広大な廃棄物集積場にある掘っ立て小屋で生活しています。衛生状態は劣悪で、男性の多くは、先進国からもたらされた電子機器の廃棄物を燃やして銅を取り出し、それを売って日銭を得ています。

橋を渡ってアグボグブロシーに入ると、あちこちから有毒な黒煙が立ちのぼるのが見え、プラスチックの燃える臭いが立ち込めています。金属をスクラップにするカンカンカンという音が響き、玉ねぎが腐ったような臭いもします。そんな場所で、住民はマスクなしで生活しているのです。

私自身は、世界のあちこちで絵を描きながら路上で生活した経験がありますが、この光景には強いショックを受けました。

育成しているアーティストたち
育成しているアーティストたち

──地元の人たちは最初から受け入れてくれたのでしょうか。

最初に訪れた時は、トマトや玉ねぎを投げつけられました。それでも、2回目にガスマスクを200個持参し、3回目に無料の学校を建て、4回目には街にギャラリーや美術館を設立したことで、少しずつ認められるようになりました。今では、アーティストの育成もしています。

現地には16の部族からなるグループがあり、それぞれにチーフがいます。

さらに、全体を束ねる総長がいるのですが、5回目の訪問では、その総長から「おまえは17番目のチーフになれ」とまで言ってもらえました。

2021年12月の6回目の訪問ではその就任式がありました。人々から「チーフ」と呼ばれるようになって、コミュニティ全体からの信頼を得たと感じました。

──なぜ「廃棄された電子部品を使ったアート」を作ったのでしょうか。

使っているのは、現地の人々ですら価値を見いだせない廃棄物です。それを材料に使うことで、先進国の電子ゴミをメッセージとして表現できるのではないかとひらめいたのです。

実は、20代の私は何に対してもやる気が出ない人間でした。絵を描くことにも目的や意味が持てず、誰も救えない事実に葛藤していました。そういう駄目な自分が、ガーナに出合って180度変わりました。

アグボグブロシーのおかげでアーティストになれたのですから、その恩返しをするのは当然のことで、アートで得た収益は現地に還元しているのです。

長坂氏のアトリエにて撮影。車やガスマスクをつけた人形などすべて長坂氏の作品だ
長坂氏のアトリエにて撮影。車やガスマスクをつけた人形などすべて長坂氏の作品だ

──作品に対して、国内外から高い評価を受けていますね。

この2年で、私の作品を展示するMAGOギャラリーが、パリ、ニューヨーク、香港など、一気に12店舗増えました。現代の人々のニーズに、信じられないほどハマったように感じます。

電子機器廃棄物を使ったアートを始めた数年後にSDGsが普及して、人々の意識が大きく変化してきました。私の思いと社会の動きが、たまたまぴったりと合ったのだと思います。

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