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【ニューノーマルの世界を生きる知恵〜ガラリと変わるビジネスを先読み〜】第4回 「世界経済はどう変わる?」

彼の名前は、シンジョー・ダイ(新常 態)。とある会社で経営部門のリーダーを務める。withコロナにおける会社の指針を探るべく、専門家のアドバイスを得ながら、ビジネスの「ニューノーマル」を読み解く。

登場人物の図

登場人物の図

新たな潮流となったグリーンリカバリー

シンジョー

今回はwithコロナ時代のなかで世界経済がどのような方向に向かっていくかを考えていきたいと思います。最初にフィン教授に今後の世界経済の課題についてお聞きしたいと思います。

IMF試算をもとに作成

フィン教授: コロナ禍によってアメリカと中国の対立はさらに激しくなり、このことが少なからず世界経済に影響を与えてきました。バイデン政権でもこの構図は変わらないと見られています。
落ち込んだ経済をどう立て直すかが世界共通の課題ですが、どこの国も相当なダメージを受けています。IMF(国際通貨基金)が2020年10月に発表した試算によると、各国の2020年の経済成長率はアメリカがマイナス4.3%、ドイツがマイナス6.0%、日本はマイナス5.3%、中国だけはプラス1.9%と増加を維持しました。こうした状況のなかで注目されているのが、グリーンリカバリーといわれる環境に関連する動きです。

新型コロナウイルスのワクチン開発イメージ

シンジョー: コロナ禍からの回復をめざすうえで、これまでの経済と社会に戻すのではなく、脱炭素や循環型の世の中に変えていこうという動きですね。

フィン教授: せっかく復興のために巨額な投資を行うなら、コロナ対策と気候変動対策の両方に効くようなお金の使い方をしようじゃないかというわけです。

シンジョー: 具体的にはどんな動きがあるのでしょう。

フィン教授: バイデン政権では2兆ドル(約207兆円)を超える巨費をクリーンエネルギーに関連するインフラ政策に投じるといわれています。EUは約1兆8000億ユーロ(約227兆円)をグリーン化とデジタル化の分野に投資するとしています。

ソーサ教授: 企業の動きも活発ですね。ひとつの例として、大手テック企業の動きを見てみましょう。Googleは2007年、カーボンニュートラルを達成し、2017年には電力を100%再生可能エネルギーに切り替えています。2030年までに世界の事業所やデータセンターなどで使われる電力を二酸化炭素を排出しない「カーボンフリー」エネルギーに完全に切り替えると発表しました。Appleは2030年までに取引先や顧客も含めたカーボンニュートラルを実現すると宣言しています。Amazonは20億ドル(約2075億円)の気候公約ファンドを設立しました。さらにCEOのジェフ・ベゾス氏は100億ドル(約1兆37億円)の私財を投じて、気候変動対策のための「ベゾス・アースファンド」を立ち上げました。マイクロソフトはカーボンニュートラルを超えて、自社が行う植林によってCO2(二酸化炭素)の排出量よりも吸収量が上回るカーボンネガティブをめざしています。

フィン教授: グリーンリカバリーはもう単なるきれいごとではなく、世界経済を動かすエンジンになったと考えてよさそうです。

利益・人・地球のバランスを考えた経済

アーバン教授: 国際共同研究、グローバル・カーボン・プロジェクトによると、2020年の化石燃料由来のCO2排出量は前年に比べて7%減少しました。この1年間での減少量は過去最高だそうです。「インドからヒマラヤが見えるようになった」と話題になったことがありますが、コロナ禍による都市封鎖や工場停止などによって経済活動が停止し、空気がきれいになったことが要因です。しかし、各産業があれほどのダメージを受けての7%減少ですから、脱炭素と経済活動の両立のむずかしさがあらためて浮き彫りになりました。

マキ教授: 新型コロナウイルスが発生した原因のひとつとして、地球環境の変化を挙げる研究者もいます。今後も温暖化が進めば、凍土から未知のウイルスが出現するなど新たな感染症が起こる可能性があるともいわれますので、次のパンデミックを防ぐうえでもグリーンリカバリーは重要だと考えられます。

スモール・イズ・ビューティフル E・F・シューマッハー著(講談社学術文庫)
スモール・イズ・ビューティフル
E・F・シューマッハー著
(講談社学術文庫)

トモ教授: トモ教授:1973年にドイツの経済学者、E・F・シューマッハー氏が発表した『スモール イズ ビューティフル』(講談社学術文庫)という本が、withコロナ時代の課題を先取りした書物として再び脚光を浴びています。40年以上も前に書かれた本ですが、現代が抱える経済と社会の問題を見事に言い当てています。欲望を優先した経済のあり方に警鐘を鳴らし、永続性を尊重した経済に転換することを提唱し、こう述べています。

「永続性の経済学は、科学・技術の根本的な再編成を意味している。科学・技術は英知を閉め出すことをやめ、さらにそれを自らの中に取り入れなければならない。環境を汚染したり、社会構造や人間そのものの質を落とすような科学的ないし技術的「解決」は、それがどんなに巧みで、見た目に魅力があろうとも、無用である。」

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シンジョー: 私も読みましたが、仏教経済学など日本人にも共感しやすい説がありますね。いたずらに規模を拡大するよりも、身の丈に合う人間的な観点に立った経済学が必要なんじゃないかという問いかけは、いまの日本の状況に響くものを感じます。

フィン教授: オックスフォード大学のコリン・メイヤー教授は「パーパス経営」という説を唱えていますが、企業にとって重要なのは3つの「P」だといいます。それはPROFIT(利益)、PEOPLE(人)、PLANET(地球)で、企業の目的は地球上の人類が抱える問題に対して、「利益を生み出せる解決策」を提示することだと述べています。慈善活動や寄付とは違い、活動を持続させるためには利益を生み出す構造が必要である。株主、ユーザーや社員だけのためではなく、人間や地球にとって役割を果たすことが重要である。こうした視点が今日的といえます。

シンジョー: ちょっと前までは、株主利益と利益の最大化こそが企業の目標というのが、グローバルなビジネス社会のコンセンサスだった気がしますが、これが確実に変わってきたというわけですね。

ソーサ教授: こうした経済に対する新しい考え方は、日本人に理解しやすいかもしれません。日本が幕末に「ECONOMY」という英語を輸入したときに経済という熟語を当てたわけですが、これは中国の古典に登場する「経世済民」が語源で、世を経(おさ)め、民を済(すく)うという意味が含まれていました。ECONOMYという単語にはそもそも人を救うというような概念は含まれず、もっとドライなものなのです。

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フィン教授: 株主の利益、利益の最大化を最優先した経済学は、実のところ、人間の幸福についてあまり考えてきませんでした。経済の成長はGDPの伸び率で語られてきましたが、これは人の幸せを測るものさしではないと考える人が増えてきたのです。グリーンリカバリーは、緑だけじゃなくて、人の幸福を取り戻すムーブメントともいえるでしょう。

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