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【第2回】日本が再びイノベーション大国になるために

すべてが激しく変化する時代において、サステナビリティが意味するものは現状の維持・持続ではありません。むしろ、時代の波に飲まれることなく、イノベーションを起こし続けることこそがサステナビリティ経営の基本であると渋澤健氏は指摘します。「失われた30年」と呼ばれる日本経済の停滞を、どうすれば乗り越えられるのか。そのヒントを渋沢栄一の『論語と算盤』から読み取ります。

※本記事は2022年3月に掲載されたものです

渋澤 健(しぶさわ・けん)
渋澤 健(しぶさわ・けん)
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
講師プロフィール
1961年生まれ。渋沢栄一の5代目の子孫。83年テキサス大学化学工学部卒業。財団法人日本国際交流センターを経て、87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。米系投資銀行、ヘッジファンドを経て、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。07年コモンズ株式会社を創業(08年コモンズ投信株式会社に改名し、会長に就任)。2021年にブランズウィック・グループのシニアアドバイザーに就任。経済同友会幹事、岸田内閣「新しい資本主義実現会議」有識者メンバー、UNDP(国連開発計画)SDGs Impact 運営委員会委員などを務める。
著書『渋沢栄一100の訓言』、他多数。

変化から一歩も二歩も先行できたのはイノベーションの力

私たちが生きている現代は、インターネットやAIなどのテクノロジーの発達によって、社会が激変している時代といってよいでしょう。

渋沢栄一が青年期を過ごした幕末から江戸時代もまた、第2次産業革命によって鉄鋼の生産という新しいテクノロジーが発達した時代でした。鉄道が普及して大量の物資や人員を陸路で一気に移動できるようになり、また電気や化学などの分野でも技術革新が進みました。

そんな時代に渋沢栄一が、世の中の変化から一歩も二歩も先んじて生き抜くことができたのは、彼が持つイノベーションの力だったと私は思います。

イノベーションを引き出す「“と”の力」

渋沢栄一のイノベーション力は、『論語と算盤』という言葉そのものに込められています。当時の人の多くは、この言葉を耳にして、「論語=道徳」と「算盤=経済」を両立させるのは無理な話だと感じたことでしょう。しかし、渋沢栄一はこの2つを「と」で結びつけました。どちらも活かす「“と”の力」が重要だと考えたのです。

そもそも、イノベーションは無から生じることはほとんどありません。多くの場合、世の中にすでに存在しているものを、うまく組み合わせることで生まれると私は考えています。別々に存在しているものを、「“と”の力」で組み合わせることで、新しい価値をつくるのがイノベーションだと思うのです。

とはいえ、誰もが思いつく組み合わせでは、新しいものは生まれません。重要なのは、一見関係なさそうに見えるものを合わせる点にあります。「と」で結ばれた2つのものに矛盾があるように見えても、そこで諦めることなく、忍耐強く試行錯誤を繰り返すことが大切です。

するとある時、「この視点ならば、うまくフィットするぞ!」というひらめきが訪れるかもしれません。このひらめきこそが、イノベーション誕生の瞬間です。最初から、「そんなのは無理」と決めつけて思考が停止するようでは、残念ながら「“と”の力」が足りません。

「“と”の力」と対照的なのが、「“か”の力」です。「論語か算盤」ならば、それは2つのうちの1つを選ぶことを示します。ゼロか1か、勝ちか負けかをはっきりさせる考え方です。もちろん、この発想も重要です。二者択一することで効率性や生産性の向上、物事の厳密な分析ができるようになるためです。企業活動には、この「“か”の力」が欠かせません。

しかし、「“か”の力」には限界があります。それは、すでに存在しているものを見比べて進めているだけなので、そこから新しいイノベーションが生まれることはないためです。

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