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【第2回】日本が再びイノベーション大国になるために

カレーうどんに象徴される「“と”の力」の価値

「論語と算盤を組み合わせるなんて、渋沢栄一のような特別な人だからできたのではないか」

そう言われるかもしれません。しかし、日本人は伝統的に「“と”の力」の感性が豊かだと私は感じています。そのいい例が、カレーうどんです。うどんは大昔に中国大陸から日本に入ってきましたが、カレーは近代になってやってきた料理です。日本人はその2つの異国から発祥した食べ物をどうしたかというと、「カレー“と”うどん」を同じ鍋に入れてしまったのです。おまけに出汁まで入れてしまいました。それが本当においしい!カレーうどんは、「“と”の力」がもたらした優れたイノベーションだと思います。

もし、「カレー“か”うどん」のままならば、それぞれの品質が向上することはあっても、カレーうどんのようなイノベーションは起こらなかったでしょう。

B級グルメから一流の高級料理まで、日本は世界一食事がおいしいといわれるのも、食材に関して余計な壁を設けることなく、「“と”の力」で組み合わせてきたからではないでしょうか。

もっとも、料理は例外かもしれません。日本の多くの業界では、異質なものを組み合わせようとしても、さまざまな規制や壁が設けられていて、なかなか「“と”の力」を発揮できないでいます。たとえ壁がなくても、あると思い込んで自己規制してしまいがちです。

これが、1990年以降の日本の姿ではないでしょうか。30年にわたって「失われた時代」と呼ばれてきましたが、失われたのは時代ではなく、日本人の自信・自尊です。自分にはできそうもない、やってはいけないんだと萎縮してしまい、枠に押し込まれているようにも見えます。そんな状態では、イノベーションは生まれません。

AIにもまねできないイマジネーションの力

「“と”の力」には、もう一つ大きな働きがあります。それは、今ある現実から飛躍して、その飛躍した状態と現実をつなげるイマジネーション力です。

生物学者に聞いた話ですが、イマジネーションというのは、地球上の生物で私たち人間だけに与えられた能力だそうです。チンパンジーやゴリラは人間に近い生物といわれますが、彼らは現実にいるところにしか「自分」はありません。

これに対して人間は、どんなに遠い場所にでも、過去にでも未来にでも、想像の力によって飛躍できます。そして、その飛躍した状態と現実をつなげることができるのです。人類だけが野生の群れの状態から抜け出し、集落をつくり、村や町、都会という文明を築き上げたのも、イマジネーションの力による部分が大きいのではないでしょうか。

イマジネーションは、AIにもまねができません。AIは、インプットされたデータをすべて保存して、忘れることなく、「“か”の力」で分析を猛スピードで行います。つまり、デジタルの0と1による分析を軸として、目前の出来事を一つひとつ予測して、それをひたすら繰り返していくだけです。AIには、関係のなさそうなものをいきなり組み合わせたり、現実から飛躍してつなげたりすることはできません。

「“と”の力」は、チンパンジーもAIも持ち合わせていない、まさに人間力そのものなのです。

渋沢栄一がいう『論語と算盤』の神髄は、「“と”の力」がもたらすイノベーションであり、人間力そのものです。時代環境がいかに変化しようとも、イノベーションの力があれば時代に先んじることができる。そして、その積み重ねこそが人類の歴史であり、サステナビリティの基本でもあるということを、『論語と算盤』は私に教えてくれるのです。

次回は、コロナ禍を超えて日本と日本企業が持続可能な発展をするために、とるべき方向性について考えていきます。

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