スマートマニファクチャリングソリューション

データ分野における水道哲学と変革管理の実現

連載『データ流通時代の日本の商機』#02

データ流通時代の現状:あたりまえの実現が王道

執筆者情報

越塚 登
  • 東京大学大学院
  • 大学院情報学環 副学環長、教授
 専門は計算機科学(Computer Science)。特に、Ubiquitous ComputingやIoT(Internet of Things)やLinked Open Data、Operating System、Computer Network、Human Computer Interfaceなどの研究に取り組んできた。近年は社会基盤としての情報システムに関心を持つ。具体的には、汎用識別子ucodeを核としたユビキタスIDアーキテクチャの研究・開発・普及の活動を中心として、場所情報サービス、食品・製品のトレーサビリティ、スマートビル・スマートシティ、ICTを用いた社会インフラ運用の高度化などにも取り組んでいる。また、オープンデータに関する取組として、公共交通オープデータやオープンデータテストベッドの活動を推進している。  現在、東京大学大学院情報学環・副学環長・教授、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所副所長、トロンフォーラム、公共交通オープンデータ協議会、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構 理事、IoT推進コンソーシアム運営委員、スマートIoT推進フォーラム委員、札幌オープンデータ協議会会長、気象ビジネス推進コンソーシアム会長、高知県IoT推進アドバイザといった活動を手がけ、電子行政オープンデータ実務者会合, 公開支援ワーキング・グループ 主査、内閣官房オープンデータ伝道師、総務省 情報通信審議会 情報通信政策部会 IoT政策部会構成員、国土交通省社会資本整備委員会・交通政策審議会技術部会・気象分科会 各委員などの政府委員を歴任。

 データ利活用の現場において、なぜ「あたりまえ」ができていないのか。その原因は、経営者に意欲や能力がないという話ではなく、ビジネスモデルに大きく関係しています。それではその「あたりまえ」の実現を阻んでいるものは何か。次にこれを考えてみたいと思います。データ利活用によって業務改善を行うユーザー企業側と、そのデータ利活用のサービスを提供するITベンダー企業側と、それぞれの課題を述べたいと思います。

変革管理(Change Management)

 最初に、データ利活用の現場、ユーザー企業側を考えてみたいと思います。データの利活用では、現実世界からデータを取り出し、取出したデータを蓄積し解析し、それを現実世界へ適用するというサイクルがあります。我が国では、データ利活用というと、情報技術に着目して、データの収集・蓄積・解析には積極的取り組みがちです。大きな課題は、最後の現実世界への適用で、ここがうまくいきません。特に、経営・ビジネスを変えていくこのプロセスに関して、経営者の意識・経験・情緒的なものを重視するあまり、ある意味で軽視されているように思います。

他方、米国ではデータを経営に結びつけるための組織変革を非常に重視してり、変革管理(Change Management)が重要な研究対象です。例えば、データの利活用によって業務プロセスを改善すれば、必ず仕事の現場は変わり、最も極端には、特定の職種は不要にすらなります。個々の現場の人には、こうした変化には反対・反感が起こり受け入れられず、そこで頓挫します。仕事の変化を受け入れてもらうための心理学的手法は、変革管理が扱う重要な分野です。それだけでなく、組織も変えなければいけませんし、その業務を支援するITシステムの更新も必要です。こうしたことが、スムーズに進んで、はじめてデータ利活用による経営改善・業務改革が実現されます。

データ利活用分野における水道哲学

 一方、「あたりまえ」が多く残存していると、データ利活用サービスを提供するITベンダーは一体何をやっているのか、とも言いたくなります。どうも「あたりまえ」が進まないところをみてまわると、ユーザー側の現場とベンダー側の間での損益分岐点が異なっています。要は、まだデータ利活用ソリューションが高すぎるのです。ベンダー側のコスト構造もわかるのですが、そのままでは多くの「あたりまえ」はそのまま残存してしまいます。ベンダーであるIT企業が、全国で広く薄く収益化し、大きく積みあげることが必要だと思います。

 松下電器の故松下幸之助氏の経営哲学の一つに「水道哲学」があります。企業の使命は、高品質の製品を広くあまねく、水道のように日本全体、隅々までの送り届けることだとおっしゃっています。データ利活用分野の対象は、ハードウェアである家電製品ではなく、サービスだという部分は違いますが、シリコンバレー的な一攫千金型ビジネスモデルではなく、水道哲学的なビジネスモデルの確立が求められていると思います。それは国内だけでなく、世界に通じる、まだ誰も確立していない方法だと思います。これから我が国におけるイノベーションを期待したいと思います。

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