コラム
社員の柔軟な働き方 第1回
企業と従業員、2つの視点で見る「テレワーク導入のメリット」
導入企業から見たテレワークのメリット
テレワーク導入は、企業にさまざまなメリットをもたらしてくれます。
総務省が発表している「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)のデータを調べたところ、導入企業数も増加傾向にあります。ここでは企業からみたテレワークのメリットを5つのポイントに絞り、内容を整理していきます。
1.コスト削減
在宅勤務者が増えれば、その分だけオフィススペースが余ります。移転によって事業所を小規模化したり、統合して事業所を一部廃止したりすることも可能です。そうすれば事業所賃料はもちろん、そこに掛かる光熱費や通信費などがカットできるでしょう。
2.ワークライフバランスの改善
完全な在宅勤務はもちろん、在宅か出社かを選べるなどの環境整備はワークライフバランスの改善に繋がります。各従業員が自身のライフスタイルに合わせ、最適な働き方を選ぶことが可能です。そうなれば、結果的に従業員の満足度が高まり、離職率低下等にも繋がります。
3.災害リスクを分散できる
災害はいつ起きるか分かりません。突然会社へ出社できない状況となった場合、通常であれば業務は完全にストップしてしまいます。しかしテレワークを導入していれば、社外でもある程度の業務が遂行できるでしょう。また、テレワーク導入のためデータのクラウド管理等を行っていれば、サーバー破損など災害に伴う物理的なリスクも回避できます。
4.生産性の向上
例えば電車移動など、出社には不要な時間やストレスが伴います。それらは心身の疲労に繋がり、生産性を低下させる要因となりかねません。テレワークによってこれらを排除できれば、従業員はより意欲的かつ集中して仕事に取り組むことができ、生産性が向上します。
5.活用できる助成金制度
テレワークを導入する企業に対しては、国及び各自治体による助成金制度が設けられています。例えば厚生労働省による『職場意識改善助成金(テレワークコース)』、また東京都による『働き方改革助成金』などが代表的です。一定の基準が設けられていますが、助成金の活用は企業にとって、テレワーク導入における資金面でのハードルを大きく下げるはずです。
従業員から見たテレワークのメリット
次に働き手である「従業員の目線」から、テレワークのメリットを3つお伝えしていきます。
1.通勤時間の削減
通勤が不要になれば、それに要していた時間を他のことに使えます。十分な睡眠時間を確保したり、趣味の時間に使ったり。さらに満員電車から開放されれば、ストレスが減って仕事にも集中できることでしょう。
2.居住地に左右されない
テレワークなら、どこに住んでいても仕事ができます。例えば地方の出身地で両親と暮らしたり、結婚を機に夫・妻に合わせて引っ越したりしても、仕事には支障ないでしょう。さらに転勤がないため、マイホーム購入では単身赴任などの可能性を考える必要がありません。
3.家庭との両立が可能
在宅で仕事ができれば、仕事とプライベートとの時間を切り分ける必要がありません。複合的にスケジューリングできるため、とても効率的です。そのため、家事・育児との両立は容易になるでしょう。
テレワークの導入で考えられる課題
メリットが多い一方で、テレワーク導入には注意すべき点もあります。しかし課題を事前に一覧化しておけば、何らかの対策が講じられるはず。具体的には、次のような課題が挙げられます。
- 仕事とプライベートが曖昧になる
- コミュニケーションがとれない
- 労働時間を管理しづらい
テレワークでは、自分の仕事を自分自身で管理しなければいけません。従業員によっては仕事とプライベートが上手く棲み分けられず、かえって働きにくさを感じることがあるでしょう。
また、相談したり叱咤激励してくれたりする相手がいないことが、仕事へのモチベーションに影響する懸念もあります。そのため、スマートデバイス等の導入支援を活用してコミュニケーション基盤を整え、離れていても密にコミュニケーションを取れる環境作りが必要です。
また管理側として、従業員がいつ、どれだけ働いているか分からない点も課題となり得ます。一人では自分自身に甘えが出てしまい、業務の生産性が低下するかもしれません。あるいは、ついプライベートな時間を取り過ぎて、業務が思うように進められないといった可能性もあるでしょう。
そのため、コミュニケーションとともに従業員の仕事ぶりについて"見える化"することが必要です。例えば仮想デスクトップを導入すれば、遠隔でも業務状況を把握しやすくなります。
テレワークの導入で職場環境を変革しよう
テレワークには、まだまだ解決すべき課題があります。興味は持ちながら、一歩踏み切れない企業は少なくありません。しかし昨今は『働き方改革』が推進されるなど、政府からのサポートにも期待できます。企業の中には一部で試験的にテレワークを導入するなど、少しずつ動きが活発化してきています。テレワーク導入は働き方の改善に繋がるものの、いきなり導入して成功させることは難しいでしょう。そのため、テレワーク導入を目指すのであれば、早い段階から準備を進めていくことが得策です。まず少しずつでも、テレワークの導入で職場環境を変えていきましょう。
まとめ
IT技術の発展に伴い、「仕事は会社で行うもの」という常識が崩れてきました。むしろテレワークを導入することで、社員の満足度アップや生産性向上など、経営面でもさまざまなメリットが得られます。とはいえ、環境整備には初期コストやセキュリティ、あるいは管理面などで懸念が拭えないのも事実。しかしこうした懸念も、社内制度を変えたり、ITツールやサービスを活用したりすることで解決できるものが少なくありません。
テレワーク導入を検討するのであれば、まずリスクを明確化し、解決策がないか検討してみてください。そのうえでメリットと比較し、小規模から導入してみることが大切です。働き方が変化する中、その流れに乗り遅れないよう取り組みましょう。
連載目次
- 第30回 【おすすめ一挙紹介】オンラインでアイスブレイクを行うメリットや注意点を解説
- 第29回 テレワークが中小企業で進まない理由とは?リスクや対策を徹底解説
- 第28回 テレワークで雑談をする重要性は?注意点や気軽に雑談する方法を紹介
- 第27回 テレワークでの勤怠管理の難しさとは?課題の解決方法や管理のポイントを紹介
- 第26回 オンラインプレゼンは難しい?伝わるプレゼンのコツを徹底解説
- 第25回 リモートアクセスとは一体なに?仕組みや種類、特徴をわかりやすく解説
- 第24回 オンライン展示会・バーチャル展示会のメリット・デメリットを徹底解説!目的別の選び方も紹介
- 第23回 オンラインイベントって?開催の流れや成功のポイントを解説
- 第22回 労働生産性の定義とは?計算方法や向上させる方法まで解説
- 第21回 生産性って?種類から算出方法まで解説!
- 第20回 在宅勤務とテレワークの違いとは?導入のメリットやポイントをご紹介
- 第19回 ワークライフバランスを正しく理解する
- 第18回 女性活躍推進に取り組む企業に求められる対応
- 第17回 モバイルワークとは?在宅勤務との違いや導入のポイントを解説
- 第16回 テレワークで始める働き方改革!メリットやポイント・留意点を解説
- 第15回 働き方改革による残業の変化はどうなる?企業・従業員視点から解説
- 第14回 働き方改革関連法とは?内容や変化ポイントを解説
- 第13回 リモートワークとは?テレワークとの違いやメリット・デメリットを解説
- 第12回 テレワークで生産性は下がるのか?正しく対処して生産性を上げる方法
- 第11回 働き方改革とは?目的や実現に向けての取り組み方法やメリット・問題点も解説
- 第10回 改善されない長時間労働の常態化……業務ルールを徹底するには?
- 第9回 タレントマネジメントで成果を上げるチームづくり
- 第8回 会議のスタイルを見直して活発な議論を促進
- 第7回 AIによる業務サポートが生産性の向上をもたらす
- 第6回 事務作業を自動化!RPAが変える仕事のスタイル
- 第5回 ワークスタイル変革が実現するものとは?
- 第4回 テレワークの課題を解決する「就業管理方法」とは?
- 第3回 テレワークに有効な「コミュニケーション基盤の活用」と「スマートデバイスのセキュリティ管理」
- 第2回 テレワーク環境の整備に使いたい「仮想デスクトップ」
- 第1回 企業と従業員、2つの視点で見る「テレワーク導入のメリット」