第3回 海外進出しなければ未来はない時代に|知らなかったではもう済まされない 夏野剛の「複雑系思考講座」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

株式会社 日立ソリューションズ

夏野剛の「複雑系思考講座」

第3回 「複雑系」社会におけるリーダー論
第2回では複雑系のアプローチにおいて求められるリーダー像、リーダーの資質を紹介。第3回では長い経済停滞期が続く日本において、複雑系の対応に乗り遅れた古い企業こそ、海外に出るべきと夏野氏は説きます。誰がリーダーをやっても同じような結果が出せた単純な時代は終わり、過去の栄光にきっぱりと別れを告げ、新しく勝てる分野を探すべきと、自身が携わった通信業界を引き合いに説明します。

高度経済成長はわずか20数年。実は日本は経済停滞期の方がスタンダード?

 高度経済成長期の20数年間は、日本では黙っていてもモノが売れる時代でした。そんな時代には、リスクを伴う革新的なアイディアを提案する社員はあまり必要とされません。だからある程度の水準の大学から「新卒一括採用」で人材を集め、誰でも一定レベルの仕事ができるよう画一的に企業教育を行いました。

 また、一旦採用した人材は、長く会社にいてもらったほうが効率がよいので、「終身雇用」を採用。誰もが平等に出世する「年功序列システム」も社員の均質を高めました。このような社員の「均質性」を重んじる制度は、別の見方をすれば「異種性の排除」ともいえる仕組みですが、それが日本人の国民性や時代状況にマッチして、世界史における「奇跡」とも呼ばれる経済成長が生み出された、と私は考えています。そして、この高度成長期のやり方や組織のあり方を守りたいから、新しいものを拒絶するのだと思われます。

経済停滞期の方が高度経済成長期より長くなってしまっている
経済停滞期の方が高度経済成長期より長くなってしまっている

 しかし、この高度成長期というものを冷静に振り返ってみると1960年代~1980年代半ばまでの"わずか20数年"です。日本経済を語る際に金科玉条のように挙げられるこの時期はたった20数年なのです。日本経済=高度成長期ではないのです。そしてその後の景気停滞期は、今やもう25年になろうとしています。「失われた●●年」は、高度成長期よりも長くなってしまい、むしろ景気停滞の方が日本経済のスタンダードになろうとしています。

 もう私が何を言いたいかおわかりでしょう。"たまたまうまくいっていた"時代のシステムをいつまで続ければ気が済むのか? もういい加減に頭を切り替えて新しいシステムを採用しないと、本当に沈没してしまうのではないでしょうか。

経済停滞期の方が高度経済成長期より長くなってしまっている
経済停滞期の方が高度経済成長期より長くなってしまっている

古い「閉じた系」企業こそ世界に出るべき

 今や他社と似た製品をつくっても売れていないので、いきなり「商品の独自性」という考え方を経営に取り入れなければ、収益が上がらない時代になりました。独自性の源泉は、「社員の多様性」に由来します。しかし、「均質性」を重視してきた日本企業では、その変化に対応することができません。

 その代表的な例が、かつて私も所属していた通信業界の世界です。通信業界といえば、IT業界とかなり密接な関係がありますので、先進性に富んだ、開かれた業界だと思っている人も多いかもしれません。しかし、通信産業はインフラさえ整備して提供しておけば、それ以上は他の業界と関わることがそれほどないという、意外に「閉じた系」の業界です。

 その「閉じた系」の通信業界に、はじめて「複雑系」の思考を持ち込んだのが、「iモード」でした。「iモード」とは何かというと、通信会社がサービスからネットワークまで全てを用意するものの、コンテンツに関しては持っている他社の力を利用しようという発想でした。インセンティブを与えることで、他社にどんどんコンテンツをつくってもらい、しかしながら通信会社は絶対にコンテンツには携わらない。なぜなら、コンテンツとは、コントロールが非常に難しいものだという認識が我々にはあったからです。これこそがまさに「複雑系」の思考ですね。そして、我々はただただコンテンツを提供してくれる会社が儲けることができる仕組みをつくってあげればいい。そうすれば、自然に人もお金も、コンテンツも集まってくるだろう、という考え方だったのです。当時、我々はそれを「エコシステム」と呼んでいました。

 この「iモード」がスタートしたのは1999年ですが、その時点では、日本の通信会社は世界でも一番進んでいました。その後2000年代に入り出現した「iPhone」と「Android」が、「iモード」をモデルとしたことは周知の事実です。

 ところが、2000年代の後半になり、「iPhone」と「Android」が世界展開していくのに対し、日本の通信業界は逆に日本国内にとどまってしまい、しまいには「ガラパゴス」と呼ばれるようになりました。これは、おそらく「iモード」の本当の意味、つまり「複雑系」の思考を理解できなかったからではないでしょうか。

 日本の通信業界は、せっかく世界に先駆け、「複雑系」思考を生かした「エコシステム」をつくったのに、それを進化させないばかりか、むしろ逆戻りさせてしまいました。

ページの先頭へ


本記事の内容は公開当時のものです。本コラムに関するご意見等ございましたら、日立ソリューションズまでお問い合わせください。

日立ソリューションズのご紹介
日立ソリューションズは、お客様の業務ライフサイクルにわたり、豊富なソリューションを全体最適の視点で組み合わせ、ワンストップで提供する「ハイブリッドインテグレーション」を実現します。