第5回 「複雑系」社会を生き抜くためのビジネスプラン発想法|知らなかったではもう済まされない 夏野剛の「複雑系思考講座」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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夏野剛の「複雑系思考講座」

第5回 「複雑系」社会を生き抜くためのビジネスプラン発想法
第1~4回までの講座の中で、一貫して「過去のやり方に固執しては、未来はない」と言い続けてきました。これまでのビジネスモデルや制度を疑い、検討し、時代に合わせていかなければなりません。そこで、この回では、時代の変化に合わせたビジネスプランを発想するためにはどうすればいいか、最近のビジネスモデルを例にして分析していきます。

大転換を迫られる任天堂の戦略とは

 今春、DeNAとの提携を発表し、スマホ向けゲームへの参入を決めたゲーム界の巨人、任天堂。任天堂は、ポケットモンスターやスーパーマリオ、近年ではどうぶつの森といった魅力的なソフトをパッケージとして販売し、そのプラットフォームをニンテンドーDSなどの自社製ハードウェアに限定することで莫大な利益を上げてきた企業ですが、昨今、そのビジネスモデルに陰りが出てきていました。それは、携帯型ゲーム機の需要が、ゲーム専用機からスマートフォンやタブレットに変化してきたからです。

 携帯ゲーム市場では、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった往年の人気ゲームが、続々とスマホに対応し、あらためて大ヒットとなっています。しかし、自社以外のプラットフォームにコンテンツを提供してこなかった「任天堂」は、ハードが売れなければ、ソフトも売れないという悪循環に陥っています。ビジネスモデルの大転換を迫られていることは誰の目にも明らかでした。

 であれば、「任天堂」もソフトをスマホ対応にすればいい、と考えていた人は多いでしょう。たしかにそれも必要ですが、それだけでは、後から参入するスマホゲーム市場で勝つことは難しいでしょう。そこで着目すべきなのが、"課金"です。

 コンテンツの課金(購入)は、毎月定額を請求する"月額課金型"と顧客が利用する度に請求する"都度課金型"に大きく分けられます。どちらも一長一短がありますが、日本の携帯コンテンツ市場は、"月額課金"で立ち上がったといっても過言ではありません。「iモード」が基本的に「月額300円」という設定をして、ドコモに大きな利益をもたらしたことが、その一番の代表例です。これに対し、今までの「任天堂」のビジネスモデルは"都度課金"です。詳しい説明は省きますが、まずはこの"月額課金"と"都度課金"との大きな違いをしっかり認識していただきたい。すると、今の時代、「任天堂」の"都度課金"にはさまざまなデメリットが現れてきていることがわかります。

 つまり、「任天堂」がビジネスモデルをどう変換すべきか? との問いに対し、私の答えは、ズバリ、"月額課金"です。具体的にいうと「任天堂の全ソフト遊び放題の月額1万円のプレミアムプラン」と、「全ソフトの中から常時1タイトルしかプレイできない月額1000円のライトプラン」を用意する。もちろん人気ソフトはすべてスマホに対応させる、すなわち"ハードを選ばない"マルチプラットフォーム戦略も同時に行います。そして月額課金とともに従来のパッケージ販売も加えます。

時代は「都度課金」から「定額課金」へと大きく動いている姿
時代は「都度課金」から「定額課金」へと
大きく動いている

 任天堂の全ソフトが1万円で遊び放題となれば、ヘビーユーザーは飛びつくでしょう。プレミアムユーザーが1年間継続すれば、1万円×12ヶ月=12万円。これは新作のパッケージソフトのおよそ20本分に相当しますが、1年で新作ソフトを20本も買う人はめったにいません。なおかつ、1000円のプランでライトユーザーも囲い込むことができます。スマホ対応により、ハードを持っていないユーザーへリーチを広げ、同時に、スマホをきっかけとして、ハードの販売も拡大することが可能。任天堂のゲームはもともとクオリティが高いので、スマホをきっかけにハマる人も多いでしょう。

 このように、"月額課金"は、ライトユーザーをヘビーユーザーへと変貌させる可能性も秘めていますから、2段階の月額課金制度とともにスマホ戦略への大転換を行うことで、ソフトを売るためにハードを安売りしなくても済むようになります。むしろ月額課金によって、ソフト販売とハード販売という2つの収益モデルを確保でき、かつ、物理的なパッケージ販売やアイテム課金も行うことで、より堅実なビジネスモデルを作り出すことができるのではないでしょうか。

時代は「都度課金」から<br />「定額課金」へと大きく動いている姿
時代は「都度課金」から「定額課金」へと
大きく動いている姿

 以上を、「コンテンツ・エコシステム」と名付け、これはゲーム業界以外でも応用が可能です。ハードを選ばないマルチプラットフォーム戦略と、月額課金を柱としたコンテンツ・エコシステムを採用すれば、「任天堂」はさらに大きくなる、と私は確信しています。

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