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図の1の返品決定ですが、EC向けの返品マネジメントプラットフォームを提供するループリターンズ(Loop Returns)では、消費者がアプリケーション上でオンライン商品の返品を希望すると、返品理由を尋ねられ、その理由に応じてサイズや色違いの製品や他の製品への交換を選ぶことができ、さらにボーナスクレジットも付加されるというサービスが提供されます。消費者に交換という選択肢を提供することで、小売事業者側の負担を軽減するとともに、製品購入後も顧客体験を向上させ、満足度を高めることも期待されます。
図の2の返品受付以降のプロセスにおいて、消費者が自身で梱包して物流事業者に持ち込むのは面倒ですし、小売事業者も個別に届く荷物を開封して仕分けるのは手間が掛かります。ここに着目した取り組みとして2つの例を紹介します。
第一に、アパレルなどの小売店を展開するコールズ(Kohl’s)とアマゾンのパートナーシップです。消費者がアマゾンのサイト上で返品手続きを行い、コールズへの持ち込みオプションを選択すると、QRコードがメールで送られてきます。そのQRコードと一緒に、返品したい商品をコールズの店舗に持ち込むだけで、コールズが梱包・発送を無料で代行してくれます。それだけでなく、コールズの買い物クーポンも入手でき、その場で店内の買い物に使用することもできます。この取り組みにより、コールズは2020年に、約200万人の新規顧客を獲得できたとのことです。
第二には、EC事業者に代わり、返品受付を代行するスタートアップ(2021年にPayPalが買収)であるハッピーリターンズ(Happy Returns)です。消費者がEC事業者のサイトで簡単な返品手続きを行った後、ハッピーリターンズが運営するリターンバーと呼ばれる返却ブースに出向き商品を返品すると、梱包が不要でその場で返金されます。このリターンバーはアウトレットやショッピングモール、都市部のショップにあり、消費者にとっては別の買い物ついでに返品ができること、ブースを用意するショッピングモールなどの事業者は、購買確率の高い消費者の来店増が期待できることと、それぞれにメリットがあります。
リターンバーに集められた返品物は、再利用可能なトートバッグにまとめて出荷され、リターンハブ(Return Hub)と呼ばれる倉庫に輸送されます。そこで開封・仕分けされた後、再販・寄付・リサイクル先に輸送されます。これによって物流コストが抑えられ、段ボールの廃棄物とCO2排出量の削減も可能にします。
2020年10月より、ハッピーリターンズは物流業者フェデックス(FedEx)と提携しました。これにより、リターンバーを設置するコストをかけずに、全米に2000以上あるフェデックスの店舗でも返品が可能になりました。フェデックスも、来店者数の増加が期待される上に、ハッピーリターンズの技術を使用して、返品商品の梱包、仕分け、処理、輸送の返品物流プロセスを合理化することができ、コスト削減が期待できます。
ハッピーリターンズは、2021年9月にオフィス用品大手のステイプルズ(Staples)とも提携するとともに、1000ブースのリターンバーを増設したことで、ニュースリリースによると全米の返却ブースは約3800箇所に広がりました。現在、米国民の75%がリターンハブの10マイル以内に住んでいるということです。
これらの動きによって、消費者は返品を気軽に行えるようになり、小売事業者は返品に関わる顧客体験の向上とともに、返品処理に関わる多大なコストの低減を実現できるようになりました。
また、返品された製品を専用の倉庫に集約して仕分けることで、サステナビリティの観点においても、梱包などの材料の削減、発送数の減少によるCO2排出量の削減といった効果が期待できます。
今回は返品について取り上げました。米国では、日常的に行われる返品のプロセスや物流をITで効率化を図るとともに、無駄なコストを削減し、顧客体験の向上やサステナビリティへとつながる仕組みが構築されており、今後ますます発展していくのではないでしょうか。













