大多数の企業がRPAを導入済みと言われており、RPAによる自動化があたりまえのようになってきた現在、「ハイパーオートメーション」という新しい自動化のキーワードが注目されています。ハイパーオートメーションは、これからの業務自動化のトレンドの中心になっていく可能性があります。
この記事では、ハイパーオートメーションとは何なのか、RPAとは何が違うのか、さらにそのメリット・デメリットについて解説します。
- ※本コラム記載の情報は2023年5月時点のものです。
ハイパーオートメーションとは
ハイパーオートメーションとは、機械学習や人工知能(AI)、RPA、iPaaS、iBPMSなどのさまざまな技術を組み合わせて実現する、新しい業務自動化の概念です。ハイパーオートメーションでは、複数の業務からなるビジネスプロセス全体を自動化することができるため、従来のRPAによるオートメーションよりも高度な自動化を実現します。
ハイパーオートメーションに用いられるテクノロジー
ハイパーオートメーションは、さまざまな技術の組み合わせで実現されます。
どのような技術がハイパーオートメーションに用いられるのか、一例をご紹介します。
- RPA:人間がパソコンで行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術です。
- iPaaS(Integration Platform as a Service):クラウド上で稼働するサービスで、さまざまなクラウドアプリケーションや業務システムを統合し、データの流れを自動化します。
- 人工知能(AI):自然言語処理、画像認識、音声認識などを活用して、人の作業を代替します。
- OCR(Optical Character Recognition):紙文書や画像からテキストデータを抽出する技術で、データ入力作業を自動化するために使用されます。
RPAとハイパーオートメーションの違い
「オートメーション」と聞くと、多くの方はRPAを思い浮かべるかもしれません。ここでは、RPAとハイパーオートメーションは何が違うのか解説します。
ビジネスプロセス全体を自動化する
RPAはコンピューター上の定型的な作業を自動化するためのツールです。データ入力、チェック作業、データを収集してサポートを作成するなど、ルーティンタスクを自動化することに特化しています。
一方、ハイパーオートメーションは、複数のツールや技術を組み合わせて、ビジネスプロセス全体を自動化することを目的とした取り組みです。複数の部門にまたがる業務プロセスであっても自動化することが可能になるので、効率的な業務遂行が可能となります。
まとめると、ハイパーオートメーションはプロセス全体を、RPAは局所的なプロセスのみを自動化することに焦点を当てていると言えます。
人の判断が必要なプロセスも自動化できる
ハイパーオートメーションでは、RPAでは実現できなかった、人間の判断が必要なプロセスも自動化することが可能です。AIを活用することで、電子メール、画像、音声、動画などの「非構造化データ」を処理することが可能になりました。また、ChatGPTに代表される自動生成AIの登場で、コンテンツの作成も自動化可能になっています。どうしても人間の判断が必要なシーンでは、SlackやTeamsなどのビジネスチャットに自動でメッセージを送付し、担当者に判断結果を返信してもらう、ということも可能です。このように、RPAでは自動化できなかった複雑な判断や判断基準の変化に対応できる柔軟性が、ハイパーオートメーションの大きな特徴のひとつです。
複数の技術を組み合わせて実現する
ハイパーオートメーションは、RPAとは異なり、複数の技術を組み合わせて実現される自動化です。昨今はRPAも進化しており、AIやローコード開発ツールなど、ハイパーオートメーションに活用される技術をあわせ持つRPAツールも存在しています。しかし、やはりハイパーオートメーションに使われる技術すべてをカバーすることは現時点では難しいため、ハイパーオートメーションに比べると、含まれている技術は少ないと言えます。
ハイパーオートメーションのメリット
ハイパーオートメーションは、ビジネスプロセスを自動化することで、さまざまな効果をもたらします。以下では、ハイパーオートメーションのメリットについて詳しく見ていきます。
1.プロセス全体を最適化できる
ハイパーオートメーションに取り組むには、まずはビジネスプロセスの最初から最後までの工程を可視化する必要があります。プロセスを可視化すると、プロセスの中で無駄な作業や不必要な手順を見つけやすくなり、それらを削減してプロセスを最適化することができます。
2.手作業によるミス・不正を低減できる
ハイパーオートメーションでは、工程のほとんどがソフトウェアによって自動実行されます。そのため、手作業による人為的なミスがなくなり、作業品質が向上します。また、不正行為を未然に防止することも可能です。RPAでも作業ミスは低減できますが、RPAよりも広範囲のプロセスにわたって自動化されるので、ミスや不正を防ぐ効果がより高まります。
3.作業のスピードアップ
さまざまな業務プロセスの一連の工程にかかる時間が大幅に短縮されます。これにより、ビジネススピードが向上します。また、顧客対応のプロセスを自動化した場合は、顧客の要望に迅速に対応できるようになり、顧客満足度の向上も期待できます。
参考:Workato 活用例 新規顧客へのサポート体制を全自動で準備
4.生産性の向上
以前まで人間の手が必要だった事務的業務を自動化することで、人材を生産的な仕事に充てることができます。また、ビッグデータなどを活用して分析を行い、経営判断や新たなビジネスアイデアに結びつけることも可能です。これにより、生産性の向上につながります。
ハイパーオートメーションの課題やデメリット
多くのメリットがある一方、ハイパーオートメーションには注意しなければならない点もいくつかあります。
1.実装コストがかかる
ハイパーオートメーションの実装には、コストや時間が多くかかる場合があります。新しい技術の導入や自動化の実装の費用にくわえて、周辺ツールやシステムのアップグレード、従業員のトレーニングなどのコストが発生することもあります。そのため、費用対効果を十分に検討したうえで、予算を確保する必要があります。
2.必要とされるスキルが多い
ハイパーオートメーションを進めるには、業務プロセス全体を可視化し、全体最適を考えたプロセス設計をする必要があります。そのため、まずは業務全体を把握し、そこから課題を抽出する力が必要です。さらに、さまざまな部門にまたがる業務を自動化するとなると、影響範囲が広くなります。要件定義やバグ管理、リリース管理といった実装面において、高度なシステム開発のスキルが要求されます。
3.セキュリティ対策
ハイパーオートメーションによってさまざまなシステムを連携させると、情報セキュリティのリスクが大きくなる可能性があります。システムの脆弱性(ぜいじゃくせい)やサイバー攻撃に対するリスクを考慮し、しっかりとセキュリティ対策をとる必要があります。
4.人間とITのバランス
ハイパーオートメーションが進むことで、従業員の役割が変化する可能性があります。人間が行う必要のある業務が減少する一方で、システムの管理や監視、トラブルシューティングなど、新たな業務が生まれる可能性があります。そのため、人間の業務とIT技術導入のメリットのバランスを考慮する必要があります。
まとめ
ハイパーオートメーションは、これまでのRPAだけによる自動化よりも、さらに高度な自動化を実現し、もたらされる効果も高いといえます。
しかしながら、自社で取り組みを進めるのは難しいことがあります。そのような場合は、プロに相談するのもよいでしょう。
日立ソリューションズは、既にRPAやiPaaSなどさまざまなテクノロジーを活用したハイパーオートメーションを実践しています。
ハイパーオートメーション、業務自動化についてお困りの際は、ぜひ日立ソリューションズにご相談ください。
- ※本コラム記載の情報は2023年5月時点のものです。
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