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【三国志から学ぶ人財戦略】第4回 結束力を高めるべし -組織をまとめる人事-

三国志は今から1800年以上も前の中国を舞台に繰り広げられた物語である。
これまで幾度となく小説、映画、漫画、ゲームの題材となり、ビジネスでも教材に取り上げられてきた不滅のコンテンツともいえる。
なぜ、いま三国志なのか。それはこの物語で展開される人材活用の妙にある。
人材不足が問題となる一方で、多くの仕事がAIに代用されていく現代。
いかなる「人“財”戦略」が必要なのか。三国志を通して考えていきたい。

チームで力を発揮できる組織を維持する

黄巾の乱
黄巾の乱

どんなに優秀なスタッフを揃えていても、適材適所に人員を配置しないと組織の力を十分に発揮できない。そのことを如実に教えてくれるのが三国志だ。漢王朝の弱体化に伴い、さまざまな新興勢力が現れては消えてゆく。その様相は現代のベンチャーやスタートアップの興亡にも似ている。
魏呉蜀の三国が樹立される前に、黄巾(こうきん)の乱があり、漢王朝の衰退に乗じて権力を私物化する者たちがあらわれる。その代表的な人物が董卓(とうたく)だが、父子の契を結び、自分の身辺警護をまかせていた呂布に命を奪われる。自分の利益を優先した強欲な態度と、部下を捨て駒のように扱うやり方では、組織として機能せず、1800年以上前の中国であろうと長続きしない。どう人材を配置するかで組織のカルチャーも変わってくる。

「ティール組織」(フレデリック・ラルー著/英治出版)
「ティール組織」(フレデリック・ラルー著/英治出版)

日本で2018年に刊行された『ティール組織』(フレデリック・ラルー著/英治出版)という本が注目されたことがある。新しい組織のあり方について示唆に富んだ提言がなされているが、そこでは組織の段階と性格によって7色で分類されている。

(1) 無色/血縁関係中心の小集団。
(2) マゼンタ/神秘的:数百人の人々で構成される種族。
(3) レッド/衝動型:組織生活の最初の形態。恐怖による支配を行う。
(4) アンバー/順応型:規制、規律、規範による階層構造をもつ。
(5) オレンジ/達成型:実力主義に基づく効率的で複雑な階層組織。
(6) グリーン/多元型:平等と多様性を重視する組織。
(7) ティール/進化型:ボスのいない自立的な組織。

董卓肖像
董卓肖像

段階が上がるほど進化した組織ということになる。三国志の時代に当てはめてみると、董卓の掌握する組織は、まさに恐怖に支配された「(3)レッド/衝動型」といえる。この董卓を倒すために反董卓連合が結成されるわけだが、漢王朝の権威を復活させ、秩序の回復を求める「(4)アンバー/順応型」と、実力主義によって漢王朝に代わる新しい世の中をつくろうという「(5)オレンジ/達成型」がせめぎあう、そんな構造のドラマとしても見ることができる。
さすがに「(6)グリーン/多元型」「(7)ティール/進化型」のような先進性をもった組織モデルは出てこないが、変化の激しい三国志の時代には、復元力のある「レジリエンス」の性格をもった「(5)オレンジ/達成型」の組織が強いことがわかる。

いかにして結束力を高め、強い組織を維持するか。魏呉蜀のいずれも新興国で、人材が流動的であり、組織の結束力を高めるのはそう容易ではない。むしろ結束の弱い時期のほうが平常といった感がある。ヒューマンリソースやエンゲージメントなどという概念がない時代だが、三国の抱えていた課題は現代にも共通するところが多い。あなたの組織に活かせるヒントはあるだろうか。

才能ある者を重用した実力主義の魏

曹操肖像(Pen 2019年8月1日号 CCCメディアハウス イラスト:阿部伸二)
曹操肖像
(Pen 2019年8月1日号 CCCメディアハウス
イラスト:阿部伸二)

結束力という点では、初期の曹操陣営はまとまりのある組織ではなかった。その原因のひとつに曹操の急進性が考えられる。三国志の時代は儒教の伝統が重んじられていたが、曹操はこれを旧弊なものとみなし、儒教にとらわれない革新的な政治をめざしていた。また賄賂や権力の濫用が横行していたが、曹操は地方の役人時代から不正を厳しく処罰する姿勢をとっていた。
臣下の中にはこうしたやり方に批判的な者も多く、その組織は決して一枚岩ではなかった。それにも関わらず強さを維持できたのは、「乱世の奸雄(かんゆう)」すなわち権謀術数に長けた英雄といわれた曹操の傑出した才能と、重臣たちの献身的なサポートがあったからといえる。では曹操陣営の顔ぶれを見てみよう。重要な局面に登場し、なおかつ正史『三国志』に立伝のある者を選んでいる。

曹操陣営

魏

主な参謀役

荀掾iじゅんいく) 荀攸(じゅんゆう) 賈詡(かく)
鍾繇(しょうよう) 程G(ていいく) 郭嘉(かくか)
董昭(とうしょう) 劉曄(りゅうよう) 陳羣(ちんぐん)
鍾繇(しょうよう) 許攸(きょゆう)

主な武将

夏侯惇(かこうとん) 夏侯淵(かこうえん) 曹仁(そうじん)
曹洪(そうこう) 曹休(そうきゅう) 于禁(うきん)
張遼(ちょうりょう) 張郃(ちょうこう) 楽進(がくしん)
李典(りてん) 徐晃(じょこう) 許褚(きょちょ)
満寵(まんちょう)

上:荀搶ム像、下:夏侯惇
上:荀搶ム像、下:夏侯惇

魏の人材はとにかく層が厚い。このほかにも有能な人物がたくさんいた。曹操の陣営には、コアメンバーともいうべき2つのグループがある。まずはブレーンとして戦略を献策した、荀揩粭、攸を中心とする名士たちのグループ。彼らは荀揩フ故郷である豫州(よしゅう)の潁川(えいせん)郡出身である。そして最前線で曹操とともに戦った、夏侯惇や曹仁を中心とした曹家の親族のグループ。この2つのグループが魏の結束力を高める大きな役割を果たした。さらに曹操が全国に広く賢才を募ったため、各地から多くの人材が集まっている。こうした智謀、武勇に優れた人たちが曹操を支えた。かつて劉備に軍師として仕えた徐庶という者がいたが、彼はのちに曹操のもとで働くことになるが、あまり出世できなかった。のちに諸葛亮が「徐庶ほどの男でも重用されないのか」と魏の人材の充実ぶりに驚いたという。

魏の特色として挙げられるのは、徹底した実力主義と成果主義だろう。現代のビジネスにたとえると、急成長を遂げているベンチャー企業と似ている。急速にマーケットの規模を拡大しているので人手が足りず、つねに幹部候補を募集しているような状況だ。「うちは仕事はきついけど報酬がいい。大きな仕事をまかせてくれてやりがいがある」といった士気の高さが、組織を強くするバックボーンとなっている。従業員の満足度、すなわちES(Employee Satisfaction)が高いといえるだろう。

陳宮肖像
陳宮肖像

反旗を翻す者もいる。もっとも激しかった反乱は、陳宮(ちんきゅう)と張邈(ちょうばく)によるクーデターだ。曹操が生涯最大の失策といわれる「徐州の大虐殺」を行っている間に、腹心の陳宮と張邈が、呂布(りょふ)を招き入れて、曹操が治める兗州(えんしゅう)をのっとろうとしたのである。重臣たちの献身的な働きと、イナゴの襲来によって、反乱は1年以上かかってようやく収束したが、組織に与えたダメージは甚大だった。陳宮によると謀反の原因は次のようなことになる。

「以前から自分の才能をもっと生かしたいと思っていた。だが、曹操は賢すぎて献策のしようがない。呂布なら自分の思い通りに動かせると思ったが、呂布は暗愚すぎて自分の策略の価値を理解できず、ちっとも採用しない。呂布が自分の言うことを聞いていれば勝てたのだ」

自分勝手な言い分ではあるが、人材活用のむずかしさをよく表した実例といえる。たとえ優秀な人材を集めても、本人の実力や希望に見合った仕事や地位を与えないと、かえって組織に危害を与えるファクターとなり、結束力を弱めることになる。ヒューマンリソース・マネジメントは、リスク・マネジメントでもあることをあらためて思い知らされる。

三国志クイズ

  • 呂布と父子の契を結び、権力を私物化したのは誰?
  • 曹操の重臣で陳宮とともに反逆した武将の名前は?
  • 呉の名門出身で呂蒙の後に大都督になった人は?
  • 蜀の五虎将軍、関羽、張飛、趙雲、馬超、もう一人は?
  • 「泣いて馬謖を斬る」の故事で有名な馬謖は誰の愛弟子?

気になる解答は次ページの最後に!ぜひご覧ください。

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