イベント企画・運営への生成AI活用事例
株式会社日立ソリューションズAIバーチャル社員との協働でイベント企画を高度化。「外部脳×内部脳」による能力拡張で協創を加速
多様な企業や組織との協創を促すコミュニティ「ハロみん」を運営する日立ソリューションズは、イベントの開催依頼が急増する中、限られた体制で企画の量と質を両立するため、Gemini と NotebookLM を組み合わせたAIバーチャル社員「ソリュートくん」を開発。外部の市場情報と社内に蓄積した知見を活用してイベント企画を支援し、業務効率化に加え、メンバーの能力拡張や企画品質の向上につなげています。
この事例に関するソリューション・商品
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*1, 2 企画時間80%削減、年間768時間の創出は、試算に基づく見通し。集客数・顧客満足度はいずれも2026年3月6日時点の集計。集客数はオンラインイベント1件当たりの平均申し込み数(194人→280人)で、リアルイベントは会場キャパシティの上限があるため集計対象外。顧客満足度(NPS®:Net Promoter Score®)は、12.8ポイント→28.3ポイントに増加
背景
依頼急増で立ちはだかった3つの壁
経営戦略統括本部サステナビリティ推進本部 ブランド・コミュニケーション部 部長代理
中崎 一成
日立ソリューションズは、コーポレートフィロソフィーに基づくブランドコンセプト「ハロー、みんなのSX。」のもと、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を推進しています。このコンセプトが描く未来の実現に向け、多様な企業や組織とつながり、新たな「協創の種」を生み出す場として、2024年4月にオープンなコミュニティ「ハロみん*3」の活動を開始。まちづくりDXやスマートモビリティ、セキュリティ、AIなど幅広いテーマで、2024年度は17件のイベントを展開しました。
活動が知られるにつれ、事業部門や人事部門との連携も深まります。2025年度には依頼が急増し、年間のイベント数が17件から24件まで拡大。しかし運営を担うブランド・コミュニケーション部では、前年度と同じ予算や人員のまま対応しなければなりませんでした。
「ハロみん」の活動をリードする中崎は、「せっかくイベントをやりたいと言っていただけたのに、対応できなければ協創の機会を失ってしまいます。どう対処すべきか模索する中で、AI活用の検討が始まりました」と、当時を振り返ります。
立ちはだかったのは3つの壁です。依頼の増加に限られた体制で対応しなければならない「量の壁」、日々の業務に追われリサーチや分析に十分な時間を割けない「質の壁」、そしてイベント企画のノウハウが属人化する「知の壁」です。活動2年目のチームには若いメンバーが多く、育成も同時に進める必要がありました。
「今回の取り組みでは、単なる業務効率化にとどまらずメンバーの能力を拡張して成果を高めるために、AIを活用したいと考えました」(中崎)
*3 コミュニティ名“ハロみん”は「ハロー、みんなの○○○○○」の略語です。○○○○○はみんなが実現したい未来が入り、さまざまな社会課題に取り組むコミュニティであることを表現しています。
取り組み
外部脳と内部脳をあわせ持つAIバーチャル社員
経営戦略統括本部サステナビリティ推進本部 ブランド・コミュニケーション部 主任
後藤 桃香
同部が作り上げたのは、2つのAIツールを「外部脳」と「内部脳」として組み合わせたAIバーチャル社員です。
まず外部脳を担う「 Gemini 」が、PEST分析、5 Forces分析、3C分析といったフレームワークを活用し、市場トレンドや顧客インサイトを調査・分析して戦略レポートを作成します。そのレポートを、社内ナレッジを読み込ませた内部脳の「 NotebookLM 」に連携し、イベント企画(告知ページ原稿)、パネルディスカッションのシナリオ、集客メール文面、SNS投稿文面などを生成する仕組みです。担当者は、テーマ、ターゲット、目的、ゴールを示し、AIとの対話を重ねながら企画を具体化していきます。
「どちらか一方だけでは成立しません。NotebookLM は内部データしか参照しないため、単体では外部環境の変化を反映した企画を作れないからです」(中崎)
精度を引き上げるまでには、試行錯誤がありました。Gemini のプロンプト設計では、1回の分析に30分ほどかかるため、出力を確認しては修正する作業を繰り返しています。内部脳の学習データも、当初の約20件から、過去2年分のイベント企画や集客実績、メール文面、アンケート回答結果など233件まで拡充。単に量を増やすのではなく、登録方法をマニュアル化して必要な情報を厳選し、ファイルの命名規則や台帳、登録権限も整備しました。
数値だけでなく、イベントごとの振り返りコメントといった定性情報もあわせて学習させ、良し悪しを判断する基準を与えています。過去の成功・失敗を含む知見を整理し、AIが活用できるナレッジ資産として再構築したことが、本取り組みの重要な成功要因となりました。
さらに、親しみを持って使ってもらうため、当社のプロモーション活動でおなじみのマスコットキャラクター「ソリュートくん」を、ブランド・コミュニケーション部のAIバーチャル社員として起用しました。ソリュートくんには、マーケティングのプロフェッショナルという人格を与え、「時流を捉えて参加者の熱量を高め、期待に応える」「登壇者の魅力を最大限に引き出すシナリオを設計する」「すべての発言に理由を述べる」といった行動指針を設定しています。その一方で、意思決定には必ず人が介在し、担当者が内容と根拠を確認したうえで企画を進めることで、AIと人それぞれの強みを生かして協働できることも意識しました。
効果
AIとの協働で、より人に向き合える組織に
経営戦略統括本部サステナビリティ推進本部 ブランド・コミュニケーション部
鍵屋 夏綺
同部はソリュートくんを活用して、限られた体制でも、増加したイベントに対応しながら企画業務の効率化を進めています。これにより、企画にかかる時間が80%削減され、年間768時間を創出する(0.5人分の増員に匹敵する)見通しです。
運営と実行を担うメンバーたちも、プロンプトを一から設計することなく、一定水準の出力が得られる点を評価しています。
「プロンプトが組み込まれていてすぐに動かせるため、アイデアの具現化や文章の構成案作成に要する時間が大幅に短縮されました。短期間で企画・文章のたたき台を多く作成できるため、イベントの戦略的な検討やディスカッションをスピーディーに進めることが可能になり、非常に助かっています」(後藤)
事業部門との連携企画を新たに担当するメンバーも効果を実感しています。
「ソリュートくんには過去のイベント実績やアンケートデータが蓄積されているため、多角的な企画の切り口を瞬時に提示してくれます。これにより、個人の経験則だけに頼らない、データに基づく確実な企画立案ができるようになりました」(鍵屋)
効率化によって生まれた時間は、参加者同士の対話を促す工夫や会場対応といった「人ならではの業務」へ割り振られました。新たに協創ワークショップ型のイベントを立ち上げ、参加者とともに未来の事業アイデアを創出するなど、コミュニティ活動をより付加価値の高い段階へと引き上げています。2025年度のイベント平均集客数は前年度比144%、顧客満足度(NPS®:Net Promoter Score®)は前年度比221%まで向上しました。なお、これらはAI活用だけでなく、事業部門との連携なども含めた成果です。
「ソリュートくんと組んで企画を立案することで、ターゲットのインサイトに共鳴する企画を実現でき、集客や満足度向上にもつながっています」(中崎)
AIにリサーチや過去データを生かした企画支援を任せ、人は参加者一人ひとりと向き合う時間に力を注ぐ。こうした役割分担によって、業務効率化だけでなく、企画の質の向上やメンバーの能力拡張にもつなげています。
展望
マーケティングノウハウの実装を全社員に
次に見据えるのは、ソリュートくんの活用領域の拡大です。まずは部内から着手し、SNSなどのコンテンツ制作を担うチーム向けの展開が始まっています。ブランド調査やWebアクセスログといったデータの分析・活用を支援するAIバーチャル社員も準備中です。
対外的なコミュニケーションが求められる場面は、営業や採用など多岐にわたります。同部が見据えるのは、この取り組みの全社展開です。プロンプトのテンプレートと NotebookLM に読み込ませるデータの定義をまとめた「スターターキット」を用意することで、他部署でも同様の仕組みを活用できるようにする構想です。
中崎は、「AIを活用することで、マーケティング的な思考やコミュニケーションのノウハウを、全社員に実装できるのではないかと考えています。その結果、お客さまやパートナーの皆様へ的確に価値を届けられるようになり、皆様とともにSXを力強く推進していきたいですね」と今後の展望を語ります。AIとの協働によって一人ひとりの能力を拡張し、その力を新たな協創へとつなげていく日立ソリューションズの取り組みは、これからも続きます。
※コミュニティ「ハロみん」はこちら
https://future.hitachi-solutions.co.jp/community/
株式会社日立ソリューションズ
| 所在地 | 東京都品川区東品川四丁目12番7号 | ![]() |
|---|---|---|
| 設立 | 1970年9月21日 | |
| 従業員数 | 単独5,129名、連結14,630名(2026年3月31日現在) | |
| 事業内容 | ソフトウェア・サービス事業、情報処理機器販売事業 | |
| URL | https://www.hitachi-solutions.co.jp/ |
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本事例の内容は2026年9月29日公開当時のものです。
最終更新日:2026年9月29日

