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【知られざるヒット商品のオモテとウラ】第4回 「兵庫・但馬漁協の『ほたるいか飯』」

今回は、長引くコロナ禍で経営難にあえいでいる漁業にスポットライトを当てました。2020年の春、兵庫県の日本海側にある但馬漁協に水揚げされたホタルイカは緊急事態宣言を受けて行き場がなくなり、大量の在庫となって漁協の肩に重くのしかかっていました。これを有効活用しようと立ち上がったのが、地元のメーカーと高校生たちだったのです。6次産業化で注目を集める「ほたるいか飯」の感動秘話をご紹介しましょう。

漁師の危機を救うために地元漁協と高校生が動いた

北村 森

1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。「日経トレンディ」編集長を経て独立。商品ジャーナリストとして、製品やサービスの評価、消費トレンドの分析を続けるほか、経済産業省やJETROなどと連携した地域おこし事業に数々参画。現在は「中日新聞」など8媒体でコラムを執筆、NHKラジオ第1「Nらじ」などのテレビ・ラジオ番組でコメンテーターを務める。サイバー大学IT総合学部教授(地域マーケティング論)。

コロナ禍の中、兵庫県の日本海側、但馬漁業協同組合の取り組みによって生まれたヒット商品があります。地元のメーカーだけでなく地元の香住高校も連携して開発した「ほたるいか飯」(ホタルイカの炊き込みご飯)の缶詰です。

2020年の春のこと。ホタルイカの旬が、新型コロナウイルスの感染拡大の第1波の時期にぶつかってしまいました。2カ月で400トンほどの漁獲高があったにもかかわらず、飲食店の休業などによって例年ほど買い手がつかず、底を打った時の浜値は前年の10分の1まで下がってしまったのです。

漁協が自ら買い支えるなどの努力もしましたが、それでも前の年の38%の価格。しかも買い支えたホタルイカの在庫が増えるばかりで、倉庫もいっぱいになってしまいました。

「さあ、どうするか。これは加工品にするしかない」と漁協は判断します。そこで頭に浮かんだのが、ちょうどその1年前に開発したのどぐろの炊き込みご飯でした。売り先のない小ぶりののどぐろを活かすために、地元メーカーがレシピを考え、さらに地元の香住高校海洋科学科で水産関係を学ぶ学生たちが製造に全面協力して製品化したという先例があったのです。

漁師の危機を救うために地元漁協と高校生が動いた

「今度は、ホタルイカでそれをやれないか……」。倉庫が詰まってしまったほどですから、時間は急を要します。5月から急ぎ開発を始めましたが、それでも完成したのは9月でした。調理に関しては、今回も地元の高校が一肌脱いでくれました。余談ですが、一般的に産学連携のプロジェクトというのは、学生たちからアイデアを募る程度で終わるものが多いようです。しかし、但馬漁協のプロジェクトは違いました。香住高校の学生たちがホタルイカの下ごしらえから最終的な味付けまでを担い、商品の生産にしっかりと携わったのです。まさに真剣勝負でした。

こうして完成した「ほたるいか飯」の缶詰は、地元自治体が備蓄用食料として5000缶を買い取ったこともあり、すぐに反響を呼んだそうです。そして、缶詰が発売された2020年9月からの7カ月間で、缶詰(「のどくろ飯」と「ほたるいか飯」)の売り上げは500万円を超えました。見事な数字ですね。

値段は1缶972円と安価ではありませんが、食べて納得! 皿に移し替えて電子レンジで1分半ほど温めると、ご飯はもっちり、ホタルイカの香りがふんわり。本当においしかったです。聞くところによると、但馬漁協が自ら開発した『麹(こうじ)の魚醤(ぎょしょう) ホタルイカ』を味付けに使っているそうです。

こうして地元漁師の苦境を助けた商品ですが、もう一つ、思わぬ効果が表れました。それは、プロジェクトに参加した高校です。缶詰の製造のために汗をかいた香住高校の海洋科学科は、この春の推薦入学枠の倍率が2.5倍になったとか。過去にはなかったほどの高い倍率だといいます。コロナ禍の苦しい場面で踏ん張ったおかげで、ホタルイカはもちろん但馬漁協も地元高校も注目を集める結果となりました。

日本海の豊かな漁場を有する但馬漁協。カニ、イカなど、魚種は多岐にわたる
日本海の豊かな漁場を有する但馬漁協。
カニ、イカなど、魚種は多岐にわたる

6次産品化に積極的な姿勢を

1次産業の関係者が、付加価値のある商品の開発から販売までを担う形態を「6次産業」という。農業や漁業などの活性化に不可欠とされながらも、実はなかなか成功事例が生まれにくいジャンルでもある。但馬漁協は、2011年ごろから6次産品の開発に取り組み、いわゆる未利用資源(売り物にならない素材)の活用に注力してきた。脚の取れたカニを使った魚醤などを商品化しており、そこでつかんでいたノウハウが、今回の「ほたるいか飯」の開発にも活かされている。

https://www.jftajima.com/

6次産品化の先陣を担った「麹の魚醤」シリーズ。缶詰の味付けにも活用している
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但馬漁協の商品開発担当者と、地元の香住高校海洋科学科が、見事な協業をやり遂げた
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