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【ニューノーマルの世界を生きる知恵〜ガラリと変わるビジネスを先読み〜】第3回 「テクノロジーはどう変わる?」

彼の名前は、シンジョー・ダイ(新常 態)。とある会社で経営部門のリーダーを務める。withコロナにおける会社の指針を探るべく、専門家のアドバイスを得ながら、ビジネスの「ニューノーマル」を読み解く。

登場人物の図

登場人物の図

コロナ禍で急速に進化したテクノロジー

シンジョー

これまでwithコロナ時代の働き方、会社のあり方について考えてきましたが、今回はテクノロジーをテーマにしたいと思います。最初に一部の国や地域で接種がはじまった新型コロナウイルス用ワクチンについて、マキ教授にお聞きします。通常は数年かかるといわれるワクチンが異例の早さで開発されましたが、どんなバイオテクノロジーがあったのでしょう。

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マキ教授: 注目したいのはアメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社、アメリカのモデルナ社が開発したものです。これらは「mRNA」、つまり「メッセンジャーRNA」という遺伝子の仕組みを活用したテクノロジーを使っています。
遺伝情報はDNAから直接的に伝えられるのではなく、いったんRNAに「転写」してから伝えられます。RNAはDNAの情報のコピーとして「伝令」の役割を果たすわけです。このときのRNAを「メッセンジャーRNA」と呼びます。
中国やロシアでもワクチンが開発され、接種がはじまっていますが、「メッセンジャーRNA」は使われていません。

新型コロナウイルスのワクチン開発イメージ

シンジョー: 「メッセンジャーRNA」を使ったワクチンとはどんなものでしょう。

マキ教授: 「メッセンジャーRNA」は、体内の細胞核中のDNAから情報を読み取り、細胞内でさまざまなタンパク質を作らせる指令を出す物質です。従来型のワクチンは免疫反応を引き起こす抗原タンパク質を体内に入れるわけですが、新型コロナウイルス用ワクチンは新型コロナウイルス表面のタンパク質を解析して合成した「メッセンジャーRNA」によって、抗原となるタンパク質を自分の体内で作らせます。
最新の遺伝子治療に使われている遺伝子技術ですが、これまでアメリカでは遺伝子技術を医療用ワクチンに使用することが承認されていませんでした。ただエボラ出血熱のワクチンだけは例外的に承認され、効果が認められています。今回の新型コロナウイルスのワクチンは緊急性が高いことから、この技術を使うことが認められました。この技術を応用することによって短期間でワクチンを開発できたというわけです。

シンジョー: 「メッセンジャーRNA」はさまざまな感染症だけでなく、ガン治療にも応用できると聞きました。医療のイノベーションとしてかなり期待できますね。他にもコロナ禍によって加速度的に開発が進んだテクノロジーはあるのでしょうか。

トモ教授: いくつかあると思います。アメリカのガートナー社が毎年発表している「先進テクノロジーのハイプサイクル」がひとつの参考になるかもしれません。2020年版は2020年の8月に発表されました。

シンジョー: どのようなテクノロジーが挙げられているのでしょう。

トモ教授: そこでは次の5つのテクノロジーのトレンドが導き出されています。
(1)デジタル・ミー(Digital me)、(2)コンポジット・アーキテクチャー(Composite architectures)、(3)フォーマティブAI(Formative AI)、(4)アルゴリズムの信頼(Algorithmic trust)、(5)シリコンの先へ(Algorithmic trust)
どれも興味深い内容ですが、私がもっとも注目するものをひとつ選ぶとすると「デジタル・ミー」です。

重要度が一気に高まった「デジタル・ミー」

シンジョー: 「デジタル・ミー」って何でしょう?

トモ教授: 「デジタル・ミー」という言葉そのものは、そう新しいものではなく、1999年にアメリカのソフトウェア会社、ノベル社が同じ名前の個人情報管理アプリケーションを販売しています。この頃のノベル社のCEOは、のちにGoogleのCEOとなったエリック・エマーソン・シュミット氏で、ユーザーがインターネット上の個人情報を自分で管理するニーズが高まるという将来の社会を見据えた先進的な試みだったともいえます。現代では「デジタル・ミー」は、自分の分身となるデジタルの「かたち」です。いわば人の「デジタル・ツイン」のようなものです。

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ソーサ教授: コロナ禍において「デジタル・ミー」が注目されるのは、「ヘルス・パスポート」や「ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジー」の分野ですね。人とデジタルの融合を加速させる技術として大きな期待が寄せられているようです。

トモ教授: そうですね。特に「ヘルス・パスポート」はまさに新型コロナウイルス感染対策の産物といえますね。中国政府がアリババなど複数のIT企業の協力を得て開発したアプリ「健康コード」は、その先駆けといえます。スイスでも早くから「ヘルス・パスポート」の導入が検討されましたが、プライバシーの侵害を危惧する声が強く、やや導入の速度が鈍っています。

ソーサ教授: 中国の「健康コード」はユーザーが個人情報を入力すると、その人が新型コロナウイルスに感染しているリスクが緑・黄・赤の3段階で表示されます。個人の行動履歴や他人との交流に関する情報、また医療機関の情報を組み合わせて判断されるわけです。さらにこのアプリには緑・黄・赤の3色でQRコードを表示する機能があり、公共施設や交通機関でQRコードを読み取り、感染リスクがない人しか入場できない仕組みになっています。2020年12月からは中国から日本に渡航する人は、PCR検査と抗体検査のダブル陰性を証明する「健康コード」をスマートフォンに入れておく必要があります。

『ガタカ』
『ガタカ』発売中
Blu-ray 2,619円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ
エンタテインメント
©1997 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES,
INC. ALL RIGHTS RESERVED.

トモ教授: とても優れたシステムだと思いますが、1997年にアメリカで制作された『ガタカ』というSF映画を思い出します。原題 は『Gattaca』で、DNAの基本塩基であるguanine(グアニン)、adenine(アデニン)、thymine(チミン)、cytosine(シトシン)の頭文字が題名の元になっています。この映画では公共の機関を通過するたびにDNAチェックを行う未来社会が描かれていました。社会的に適正と認められていない者はゲートを通過できないのです。中国の「健康コード」は新型コロナウイルス感染抑止に効果を上げているので有用といえますが、監視社会を強化するシステムにもなりえる。個人のプライバシーは適正に守られるのだろうかという不安を感じます。

ソーサ教授: 確かにプライバシーの問題は気になりますが、こうした認証システムはwithコロナ時代において日本でも浸透してくる重要なテクノロジーであることは間違いないといえるでしょう。プライバシーを確保しながら、こうしたシステムをうまく活用できるかどうかが今後の課題ですね。

Digital Me

アーバン教授: ちょっと内容は違いますが、台湾がIT担当閣僚のオードリー・タン氏のもと、健康保険証によって実名によるマスク販売を行ったのも興味深いテクノロジーです。台湾の健康保険証には名前、生年月日とIDナンバーが記載されているほか、個人の資料を格納したICチップが埋め込まれています。そこには病歴、服薬の履歴などが紐づけられているので、カードリーダーで読み取ると、クラウド上に記録されている情報にアクセスできるようになっています。これも一種の「デジタル・ミー」といえるでしょう。withコロナ時代の医療を支えるうえで、欠かせないインフラだと思います。

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