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『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』続:IoT 先行企業の狙いを見極める。|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第4回 IoTビジネスに成功する日本企業の取り組み 第4回 IoTビジネスに成功する日本企業の取り組み

 「続:IoT 先行企業の狙いを見極める。」というテーマでコラム連載を続けてきました。
 第1回はドイツ、米国、日本の現状について、第2回はドイツの現状と長期戦略について、第3回は米国の変化とその対処についてご紹介してきました。今回が最終回で、IoTビジネスで日本企業が勝ち残るためのIoT戦略について考察していきます。IoTビジネスをテーマとするため、社内や工場内におけるIoT活用ではなく、売上/収益を得るための新しい事業モデルをIoTで実現することを想定しています。IoTビジネスモデルやIoT課金モデルについては、まだ整理した論文や書籍などが見当たらないため、取り組み途上ですがここまでの活動を踏まえて整理してみました。

ヒト・モノ・経験を捨てられない日本企業

 IoTビジネスでは後発となっている日本企業ですが、テクノロジーがドイツや米国に劣っているわけではありません。むしろセンサーやロボットでは、世界トップレベルの実力があると言えます。しかし、数多くのIoTプロジェクトに取り組んで、日本企業に共通する弱点があることに気が付きました。それは、「捨てられない」日本企業が多いということです。
 IoTという技術は、従来の考え方とは違った新しい取り組みです。製造業においては、製品や生産設備にセンサーやコンピュータを搭載して、ここから得られるデータを活用したサービスをユーザーへ提供します。このサービスが、新しい価値を提供して企業の売上/収益に貢献します。ここで、欧米企業と日本企業が大きく異なるのが、日本企業がどうしても「捨てられない」3つがあることです。

■1つ目の捨てられない「ヒト」
 日本企業の雇用形態は、基本的に正社員で終身雇用モデルです。従って、ビジネス環境が変わったからと言って簡単に従業員を解雇することはできません。最近では、転職も珍しくなくなりましたが、欧米のような感覚で雇用を切ることはできません。つまり、IoT技術が導入されて、単純作業や手間の掛かる業務がIoT化されても、配置転換などで雇用は維持しなければなりません。そして、IT化する新しい業務に対応できる従業員はほんの一部です。

■2つ目の捨てられない「モノ」
 日本の製造業では、生産設備や機器、治具などは大切に使います。最低でも10年間は使い続けます。装置産業などの工場では、欧米企業では耐用年数20年が常識ですが、日本企業では最低20年、工場によっては40年以上稼働している設備もよくあります。
 モノを大切に使うことは決して間違っていませんが、さすがに10年違うと設備の生産能力や機能に大きな差が出ます。40年以上となると、比較する以前に設備を製造したメーカーにすら情報が残っていないケースもあります。メカ(機械)ならば、熟練技術者のノウハウや工夫である程度性能を補完できますが、IoT技術はメカ(機械)とITが融合した技術です。PCなどコンピュータやシステムは、5年以上使い続けると性能面で厳しいものがあります。10年以上となると、PCの基本ソフトに例えるとWindows 95やWindows XPを使い続けるようなものです。適切にメンテナンスすれば動くことは動きますが、処理性能で最新型と勝負にならないのは言うまでもありません。つまり、適切なタイミングで改廃しなければならないのですが、日本企業はこれを否定するところが多いのです。

■3つ目の捨てられない「経験」
 日本はかつてものづくりで世界を席捲したことがあります。1980年代の日本経済の黄金期は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉で呼ばれていますが、今でもこのイメージから脱却できない経営者やトップが多いようです。平成生まれの現役世代には、全く理解できない経験なのですが、成功体験の呪縛が企業の価値観を縛っているケースがまだ多く見られます。特に、経営層や管理者層の価値判断は過去の経験に基づいています。
 しかし、IoTビジネスはまだ開発途上であるため確固たる成功モデルがありません。だからこそ失敗を積み重ねて、試行錯誤しながら手探りで進むしか無いのですが、このやり方には不安が伴うため大半の日本企業は事例に頼ろうとします。事例に頼るということは、これを真似することはできても超えることは難しいのです。ドイツ企業は、道なき道を進んで事例を積み上げているため、こうしたアプローチに慣れています。これが、先行する企業と後発の企業の最大の違いとなります。

7つのIoTビジネスモデルと3つのIoTビジネスの課金モデル

 IoTビジネスモデルは、事例などを整理すると7つ見つけることができます。

1)モノコト見える化:

アナログ→デジタル(暗黙知→形式知、データ、位置情報、状況把握など)

デジタル化することで価値を生むもの。例えば建機の位置情報や3Dの現場図面データ
2)ランニング&メンテナンス:

保守運用・メンテナンスなどの継続サービス提供(IoTビジネスのメイン)

保守運用サービスから価値を生むもの。例えば、航空機エンジンの省燃料や建機のリモートコントロール
3)コンテンツ&コンサルティング:

個別サービスの提供、高い価値、高い効果を期待(ヒトが提供するサービス)

省エネ、省人化などのコンサルティングや業務プロセス、オペレーションの見直しによるコスト削減など
4)マスカスタマイズ:

量産品ベースにカスタマイズ、仕様を選択できる、機能を選べる(ソフトウェアで対応)

既存製品(ハード)の中のソフトウェアを更新するだけで新しい機能が得られる(テスラ社の自動車など)
5)ロットサイズワン:

個別受注で製品を生産して提供(ハード対応)

個人のニーズごとに個別生産された製品(ハード)、ハーレーダビッドソンやアンダーアーマー社のシューズ
6)リモートコントロール:

遠隔操作による価値の提供、人件費/時間/コスト/生産性向上に効果

遠隔操作によるサービス提供、建機のリモートコントロール、自動運転自動車、ドローン、ロボットなど
7)シェアリングモデル:

あらゆるリソース(ヒト/モノ/カネ/データ/時間など)をシェアリング

Uber(ウーバー)、Airbnb(エアービーアンドビー)などシェアリングモデル

 7つを組み合わせている事例もあります。この中で最も確実に売上/収益を上げられるのは、2)ランニング&メンテナンスのビジネスモデルです。

 そして、IoTビジネスの課金モデルは、「従量課金型」「定額サービス型」「スポットサービス型」の3つがあります。

1)従量課金型:

インフラビジネスと同じモデル、IoTでは最も多い課金体系

考え方は電力やガス、水道といったインフラサービスと同じ課金体系。ポイントは、何を物差しに考えるのか?である。例えば、ケーザー・コンプレッサー社のコンプレッサーは製造した圧搾空気の容量、STILL社のフォークリフトは走行距離というように、インパクトが強くてお客様のビジネス(コスト)に訴求力が強い物差しが有効。
2)定額サービス型:

従来の保守契約と同じ、使い放題や段階スライド型などが一般的

従業員全員が対象であったり、全ての機器などが対象となる。ランニング&メンテナンスなどのサービス提供には月額または年額固定の定額サービス型がニーズに合致している。管理すべき従業員数が多すぎる場合や、処理数量がカウントできないというケースは定額サービス型の方が管理の手間とコストを省ける。
3)スポットサービス型:

サービス内容ごとに提示、個別対応型やカフェテリア型などがある

一時的なサービス提供や部分的な支援などは、内容や回数ごとに課金するモデルが望ましい。膨大なデータから市場動向を分析して、そのレポートを販売するケースやアウトソーシングで業務代行サービスを提供する場合などに有効。

 このようにIoTビジネスを事業化するには、IoTビジネスモデルとIoT課金モデルを組み合わせて様々な視点から試算することが望ましいと思います。また、後発企業が同じビジネスモデルで参入してくることなどを想定して、課金モデルを変更したり、次のビジネスモデルを仕込んでおくようなしたたかな準備も勝ち抜く手段として有効です。

IoTプラットフォームと、IoT時代を勝ち抜くために企業が取り組むべきポイント

 最後にIoTビジネスで勝ち残るためのポイントについて考察します。
 まず最も大切なことは、常にエコシステムを念頭に置くことです。例えば、工作機械業界では、ファナックが「FIELD system」というプラットフォームを提唱して、ここに競合となる同業他社や異業種となるITベンダなど250社を集めてパートナーシップを組んでいます。
 2016年秋に開催された、JIMTOF2016「第28回 日本国際工作機械見本市」では、ファナックとパートナー80社以上が実際にシステムをつないで、その状況はファナックブースのモニターでリアルタイムに見ることができるという内容でした。
 このシステムを構築したのは日立製作所で、「FIELD system」のトータルインテグレーションパートナーです。

イメージ

 IoTビジネスで勝ち残るためには、自前主義を捨てて多くの企業とアライアンスを組み、スピードと互いに補完しあう環境を構築する必要があります。この枠組みの中でイニシアティブをとることは、生き残る確率を高めることにつながります。

 IoTビジネスを実現するためには、IoTデータを収集管理して、そのデータを活用するソフトウェアを簡単に構築できるクラウドベースのIoTプラットフォーム(IoT基盤システム)が必要不可欠となります。
 ここで注目すべきは、SAP社やマイクロソフト社といったITベンダが提供するIoTプラットフォームではなく、GE社の「Predix」やファナックの「FIELD system」といったユーザー企業のIoT基盤システムです。その理由は、ITベンダではIoTを利用するユーザーの様々なニーズや業務内容を正確に把握することが難しいからです。刻々と変化するビジネス環境に適用して進化するためには、これまで以上にエンドユーザーに近い位置にいる必要があります。

 IoT時代を勝ち抜ける企業の条件は、スピードと行動力にあります。
 コマツやGE社など既に先行している企業は、長期戦略に掲げた目標とビジョンに向かって先行逃げ切り型でビジネス展開を行っています。日本企業は、意思決定が遅く失敗やリスクを極端に嫌いますが、このやり方では先行企業に追いついても直ぐに突き放されて置いて行かれてしまいます。
 また、IoTビジネスに取り組む組織体制も欧米企業では若手を多く登用しているのに対して、日本企業は40代や50代の担当者がメインです。10年先のIoTビジネスを創出するのに、10年後には定年している人材を集めているのは不思議なことです。もしかすると、こういう日本企業の経営者は本気でIoTビジネスなど考えていないのかもしれません。

 失敗しても気にせず直ぐに再チャレンジすれば、いくらでもリカバリできるのがIoTビジネスの特徴です。二匹目以降のドジョウが餓死するくらい、厳しいビジネスだと言う人もいます。チャレンジしなければ成功するチャンスは得られませんから、まずは先行事例の真似からでも構わないので、行動することが重要です。

鍋野 敬一郎 氏の写真

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン 代表取締役
ERP研究推進フォーラム講師

1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

鍋野氏寄稿ムック 丸わかり!! IoT入門の写真

鍋野氏寄稿ムック

丸わかり!! IoT入門

出版社: 洋泉社 (2017/2/16)

家電や自動車、住宅、ロボット、工場など身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる――。
IoT(モノのインターネット)によって、10年後の私たちの暮らしやビジネス、産業構造は、大きく変わるでしょう。
第4次産業革命と呼ばれる「IoT」を徹底解説するビジュアルムック。

鍋野氏寄稿ムック インダストリー4.0の衝撃の写真

鍋野氏寄稿ムック

インダストリー4.0の衝撃

出版社: 洋泉社 (2015/7/24)

製造業に押し寄せる新たな波「インダストリー4.0」――。
生産システムがつながる「スマート工場」の登場により、生産現場、サプライチェーン、われわれの暮らしはどう変わるのか!?
インダストリー4.0の立役者ヘンニヒ・カガーマンはじめ、日本GE、経産省のインタビュー、専門家の論考などにより、21世紀の新産業革命を多角的に読み解く。

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ご参考サイト

2015年7月31日(金)開催「日本の製造業はインダストリー4.0にどう対処すべきか」スペシャルレポート(SBクリエイティブ株式会社(ソフトバンクグループ)のサイト「ビジネス+IT」へ)

インダストリー4.0から見る日本企業が執るべき戦略~日本的「つながる工場」とは何か。その示唆を探る~ 講演資料ダウンロードはこちら

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