ページの本文へ

第3回「都市」の安心 前編| 次の情報セキュリティのヒントがここに つくろう!安心ニッポン|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第3回「都市」の安心 前編
安心のつくりびと 佐土原 聡 先生
横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院
研究院長 教授
地球環境未来都市研究会 会長

プロフィールを見る
聞き手 ひろた みゆ紀さん
フリーアナウンサー
プロフィールを見る

都市が進化するほどリスクが高まる?

佐土原 聡 先生

ひろた

佐土原先生は、横浜国立大学の都市イノベーション研究院の研究院長として、また、産官学民が参加している地球環境未来都市研究会の会長として、都市が直面しているさまざまな課題の解決に取り組まれています。今日はよろしくお願いいたします。

佐土原 聡 先生

よろしくお願いいたします。

ひろた

今、都市のリスクとして一番気になるのはやはり災害です。災害のリスクに対して都市はどのような状況にあるのでしょう。私たちは大丈夫なんでしょうか。

佐土原 聡 先生

残念ながら、リスクは高まりつつある状態かもしれません。
例えば建造物がまったくない大草原に人がひとり立っていたとします。そこに大地震がやって来たとしても、多少生態系に影響は出るでしょうが、基本的にはその人がびっくりするくらいのことですよね。
でも人々が密集して暮らし始めると、家や水道や道路など生活を便利にするさまざまなものが、どんどん造られていきます。そして、そこに大地震が起きるとそれらが壊れて被害という形になって現れる。
今、暮らしを豊かにするために都市はますます高度化、複雑化を進めてきていますが、それは同時に、脆弱性も高めてしまっていると言えるんです。

ひろた

うわ、密集して便利に暮らすことで、リスクが高まってしまうんですね。私たちはそんなリスクにどう立ち向かえばいんでしょうか?

佐土原 聡 先生

災害のリスクは、その都市単体を見ていても、決して解消できるものではありません。
例えば水。横浜市はその水源を、横浜から約40キロ離れた道志川や、さらに離れた丹沢の酒匂川、桂川などに頼っています。1923年の関東大震災では、その道志川の流域の森林に大きな被害が出ました。森には水を蓄える機能があり、森が壊れれば水源の水量も水質も低下するんです。その後、道志川流域の森林は天然のダムとしての力を再生・保護するための取り組みが継続して進められています。一方で酒匂川水系の丹沢の森は、残念なことに生態系の荒廃で土壌流出が進んだことでよく知られ、神奈川県が近年保全に力を入れている状況です。
これから都市はさらに巨大化が進みます。安心して水を利用し続けるためには水源地域の地盤や森林の状況などを継続して観察していく必要があるんです。

ひろた

都市の水のことなのに、地盤のことや、遠く離れた森林のことまで視野を広げて考えなくてはならないんですね。

佐土原 聡 先生

はい。エネルギーも同じです。
災害という視点からは、巨大発電所によるエネルギー供給よりも、各地区が小規模な発電設備を設ける自立分散型のほうが有利なことがあります。つまり地震が起きて、ある地区の発電設備が止まっても、隣の地区の生きている発電設備がエネルギーを融通するようなしくみです。そうなるとエネルギーは地区単体の「点」ではなく、周辺の地区も組み合わせた「面」で考えていく必要が出てきます。
そして、おそらく小規模発電設備のいくつかは自然エネルギーを利用したものになるでしょう。そうなると太陽や風といった気象の状態も把握できるようにしておかなければなりません。

ひろた

水道に川に地盤に森林に、あと「面」としての発電設備に太陽に風に…。それらすべてが見える目がないと都市を災害のリスクから守れないんですね。

佐土原 聡 先生

今、そのしくみづくりに私たちは取り組んでいるところです。

リスクと「共生」する

佐土原 聡 先生

地震などの自然災害は、否応なく都市を襲います。つまり、リスクを失くすことは不可能なんです。でも目の前のリスクがどのような要素で構成されているのか、その正体を科学的に見極めることができれば、リスクを減らすことが可能になります。

ひろた

先程お話にあった震災時の水不足の問題であれば、地盤や森林の土壌や地盤を保全・改善することでリスクを軽減することができますね。

佐土原 聡 先生

はい。リスクの力を弱められれば、私たちはリスクを受け入れることができるかもしれない。我々はこれを「リスク共生」と呼んでいますが、リスクの力を弱めるためには関連する情報を幅広く集め「可視化」することがとても大事になってきます。

ひろた

リスクの正体を見極めるんですね。

佐土原 聡 先生

私が会長を務めております「地球環境未来都市研究会」では、産官学、そして民が共同で活用できる情報プラットフォームを今、つくろうとしています。
ここでは、研究者が持っている地圏、水圏、大気圏、生物圏、人間圏に関する学術的なデータ(ディープデータ)、企業が集めた大都市の中での人間の活動――例えばSNSでのつぶやきや位置情報など――に関するデータ(ビッグデータ)、そして自治体が持っているさまざまな行政情報(オープンデータ)を統合できればと考えています。

ひろた

ものすごく巨大なデータベースになりますね!

佐土原 聡 先生

情報をできる限りたくさん集めて、正確性を高める、つまり解像度を上げる狙いです。刻々と変化する都市の大気や水や地質の状況、地域の里山や里海の状態、そして都市の人間活動の様子、さらには地球規模の気象データまで重ねあわせることで、都市に対するリスクを高精細に映し出す。そして産官学はもちろん、市民に対しても情報をわかりやすく可視化して提供する――そんなしくみへの第一歩を踏み出したいと考えています。

ひろた

すごい!都市という大きな船を安全に航行させる操舵室みたいになるんですね。

災害の問題と環境の問題をトータルに解決

佐土原 聡 先生

私は災害の問題と環境の問題は、分けることなくトータルにマネジメントした方がいいと考えています。両方の問題とも、人が地球の上に都市をつくり高密度に暮らし始めたことに起因するのですから。

ひろた

と言いますと?

佐土原 聡 先生

地球の上に乗っかった都市という人工物が、地球現象からさまざまな不都合を被っているのが災害の問題です。そして、都市が地球の営みの上に乗っかって、生態系をかく乱しているのが環境の問題です。
つまり両方の問題とも解決策は、地球と都市とのバランスがとれた関係のあり方を探ることにあります。
そのためには、都市における人の活動の状況と、都市につながる大気や水や地盤、そして動植物など生態系の状況を可視化することが不可欠なんです。

ひろた

先程の情報プラットフォームが、環境保全にも役に立つんですね。

佐土原 聡 先生

旧来、生態系は人々を風水害から守ってくれる存在でした。しかし人は都市活動によって生態系の荒廃を招きました。そのことで本来の防災力は低下し、さらにまた温暖化、エネルギー不足、食糧問題などを引き起こし都市のサスティナビリティ(持続可能性)を脅かしています。

ひろた

人間はもっと生態系に対して謙虚に暮らさなければ、ですね。地球を他の動植物といっしょにお借りしている存在なんですから。

ひろた's VIEW

人間活動と自然環境の状態を重ねあわせて可視化して、都市がリスクに対して適応しているかどうか、つねに確認できるしくみ。一日も早く完成させていただきたいと思います。あらゆるリスク対策にとって、統合されたプラットフォームは不可欠なものなんですね。
情報セキュリティにおいても、あらゆるビジネス活動を同一のポリシーで管理するプラットフォームがなければリスクを見逃す可能性が高まります。今回、その重要性を改めて感じました。

プロフィール

佐土原 聡 先生
横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院
研究院長 教授
地球環境未来都市研究会 会長
1980年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。
1985年、早稲田大学理工学研究科建設工学博士課程単位取得退学。
横浜国立大学大学院工学研究科教授、横浜国立大学大学院環境情報研究員教授などを経て、現在、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院研究院長教授。東京大学空間情報科学研究センター客員教授。
また産官学連合の地球環境未来都市研究会会長、横浜市環境影響評価審査会会長なども務める。

ひろた みゆ紀さん
1971年、岐阜薬科大学大学院薬学研究科 博士課程修了。日本食品安全協会理事長として、食と健康に関するアドバイスを行う「健康食品管理士」の育成に長年携わる。
また「多幸之介先生」のニックネームでウェブなどに「食」の問題を取り上げたコラムを執筆。臨床病理研究会奨励賞、坂幹夫賞、生物試料分析株式会社学会賞などを受賞。「長村教授の正しい添加物講義」(ウエッジ社)「健康食品学」(日本食品安全協会)「臨床化学」(講談社)など、著書多数。

ページの先頭へ

つくろう!安心ニッポン

第1回「食」の安心 第2回「健康」の安心 第3回「都市」の安心 第4回「情報」の安心

もっと学ぶ

もっと学ぶ

本記事の内容は公開当時のものです。本コラムに関するご意見等ございましたら、日立ソリューションズまでお問い合わせください。

ページの先頭へ