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2ページ目 |第5回 一流が行っているメンタルトレーニング術とは ~川崎宗則選手のしなやかなメンタルと松井秀喜氏のおおらかなメンタル~|久瑠あさ美のメンタルトレーニング講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

一流が実践!「勝負力」を生むメンタルを身に付ける
第5回 一流が行っているメンタルトレーニング術とは ~川崎宗則選手のしなやかなメンタルと松井秀喜氏のおおらかなメンタル~

潜在意識に働きかける

トレーニングを始めた当初、打撃低迷に悩んでいた川崎選手は、打撃コーチのアドバイスを受けながら素振りの練習を繰り返していたようです。しかしその時、私は彼に対して、やみくもな猛練習で克服する方法を取らないように伝えました。感覚が狂った状態での猛練習には、大きな心理的リスクが伴いかねません。潜在意識の中に「打てない自分」が刷り込まれ、自分を信じられない状態でむやみに練習に取り組むと、元の感覚を取り戻すどころか、逆に迷いを深めてしまう可能性があるからです。

そこで私が川崎選手に勧めたことの一つが、サバンナを駆け巡る野生動物や、他の競技のアスリートの精悍な動きをビデオで繰り返し見ることでした。彼がスピードを持ち味としていることもあって、動物としては俊敏な走りのチーターを、アスリートとしては当時活躍していたサッカー選手、ロナウジーニョのプレーを見るように勧めました。全力疾走するチーターの映像をスローモーションで再生し、その動きのリズムやテンポ、間合いを感じることで、脳は無意識に自分と重ね合わせて体感が生まれます。またロナウジーニョ選手の野性的なプレーや神業的なドリブルやラストパス、絶妙なタイミングを体感することで、脳は無意識に自分の成功体験として内在化させます。

トレーニングによって川崎選手が普段の感覚を取り戻すことができたように、こうしたイメージトレーニングは、潜在意識に働きかけるのに非常に有効な方法といえます。

その後もスランプに陥ることはありましたが、そのたびに川崎選手には感受性の強さゆえにキャッチしてしまうさまざまな物事を受け流すのではなく、受け入れることでパワーに変えていけるのだと伝え続けました。そうして心の視点を引き上げることで、受容する器はどんどん広く、深くなって、彼が本来持つ調和力やしなやかな強さはさらに力を増していきました。

心の視点を上げて逆境を克服

2012年1月、川崎選手は子供の頃から憧れの存在で、ヒーローでもあったイチロー選手とともにプレーすることを夢見て、メジャーリーグへの挑戦を決めました。シアトル・マリナーズとマイナー契約を結んだのです。ところが、移籍から約半年。夢をかなえ、イチロー選手と同じチームでプレーしていた際、彼は信じがたい出来事に直面します。ご存じの方も多いとは思いますが、同年7月にイチロー選手のヤンキースへの電撃移籍を知るのです。

イチロー選手の移籍を知った当日、彼は「コメントは、なしにしてください」という言葉を残してロッカールームに去りました。ショックで何も言葉が出なかった気持ちはよく分かります。

しかし翌日、わずか一晩で気持ちを切り替えた川崎選手は、「イチローさんが覚悟を決めたことなので応援したい」「今ここにいられるのはイチローさんのおかげ」といったコメントをしました。

彼の当時のメンタルを考えると、自暴自棄になって、イチロー選手に恨みごとを言ったとしても不思議ではありません。しかし、彼は心の視点を上げ、目の前に起きたことをしっかりと受け入れることで、これまでの自分や現在の状況に対するネガティブな感情を浄化したのです。

私はこのコメントを聞いた時に、一流選手として、最高のコメントをしている彼のさらなる成長を知り、嬉しくなりました。プレーヤーとしての彼の前向きな発言を聞いて、温かい気持ちになった方も多いでしょう。彼が常々持っていたプレーを通して人を元気にしたいという美意識や美学を、信念を持って貫いたのです。

もちろん彼の心が100%切り替わっていたわけではなく、格好をつけていた部分もあったと思います。しかし、たとえ強がりであったとしても、前向きなコメントができる生き方を選んだことに意味があります。彼はイチロー選手の覚悟を応援し、自分は別の道で頑張るという笑顔になれる選択をしたことで、自分の人生をも肯定したのです。私たちが変えていけるのは「これまでの過去ではなく、この先の未来」なのです。

アスリートが生きているのは結果を常に求められる厳しい世界。今後も川崎選手の人生には、数々の試練が起こるかもしれません。ただ、どんな逆境においても心の視点を高く持つことができる彼なら、乗り越え、克服できると確信しています。

今回は、一流アスリートのメンタル術についてお伝えしました。最終回となる次回では、混沌とした時代に求められるリーダーの在り方についてお話しします。

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