ページの本文へ

第3回 大人気「雲海テラス」の発案者はリフト係だった。スタッフ自らコンセプトを考え抜くことが成功につながる。|星野佳路の「組織活性化」講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

~星野リゾート流 意識改革~ 星野佳路の「組織活性化」講座
第3回 大人気「雲海テラス」の発案者はリフト係だった。スタッフ自らコンセプトを考え抜くことが成功につながる。

その土地に埋もれていた地方性を巧みに抽出し、人気のサービスや商品にまで昇華させる星野リゾート。そんな「再発見」を生み出すのはあくまでも現地スタッフ。彼らをやる気にさせる組織マネジメントとははたしてどのようなものなのでしょう。

スタッフが自由に発言できる環境づくりがマネージャーの仕事

 星野リゾートを語るうえでよくキーワードに上がるのが“再発見”。その土地に埋もれて陽の目を浴びていなかった地方性を巧みに抽出し、人気のサービスや商品にまで昇華させるというものです。

 旅行者は何を求めてわざわざ遠い地方に足を運ぶのでしょうか。それはその土地ならではの非日常感に尽きます。日本中、駅や駅前のスペースもどこに行っても似たような光景が広がっている今、旅館の存在は極めて重要です。快適な宿泊施設というだけでは満足してもらえない。その土地の文化的エッセンスをしっかりと演出できないとお客様に見限られてしまうのです。

 しかし、残念ながらその土地で日常を過ごす人は、地方性こそ価値があるということになかなか気が付かないのです。

 ここまで述べると、私や星野リゾートの本部マネージャーが現地に乗り込んで「地方性の重要さ」について熱く語り、地方性のある具体的なサービスやものづくりを命じていると勘違いされると思います。しかしながら、我々は何も指示していません。あくまでも“再発見”はスタッフ自らに考えてもらっているのです。私が行うのはスタッフが自由に発言できるような環境=フラットな組織をつくり、議論の場を設けるだけ。すなわち「意見を出し合える文化」を整えることなのです。スタッフは自分たちで七転八倒しながら考え抜き、議論を推し進めるなか、ようやく地方独自の文化の価値に気づいていきます。そしてぎりぎりまで考えることで本当に素晴らしいアイデアが生まれてくる。でもそれは地元の人だからこそ気づきにくいのも事実ですが、逆にその土地から長年受けてきた「ホンモノの恵み」を見つけ出せるのも地元の人だけなのです。

 星野リゾートの“再発見”の象徴としてたびたび取り上げられるものに、北海道のアルファリゾート・トマムの「雲海テラス」があります。自然の神秘ともいえる雄大な雲海を見下ろしながらコーヒーなどを楽しめる「雲海テラス」の営業は、夏の数ヶ月間、毎朝数時間だけ。しかも雲海が見られる確率は100%ではありません。それでも毎年、全国から何千人もの人がやって来ます。

 この「雲海テラス」を発案してサービス化したのは、宿泊や料飲部門のスタッフではありません。スキー客を運ぶゴンドラ・リフト部門のスタッフなのです。「お客様にも、この眺めを見てもらいたいなあ」。このスタッフの一人の何気ない一言からすべてが始まったのです。お客様に喜んでもらうためにはどうしたらいいか、素直に口をついて出た言葉だと思います。彼らの本来の業務は、ゴンドラとリフトの運行と整備。言葉悪く言うと「リフト係のおっちゃん」で、まさに“裏方”です。モチベーションが低い組織であれば、裏方の人は大抵、「自分の仕事さえしっかりやっていればそれでいい」と考えがちです。しかし2004年に我々が運営に携わると、リフト係のスタッフも「自分たちに何ができるか」を考え始めました。もちろん最初は何を考えていいかも分からなかったと聞きます。それはそうでしょう、それまでホテル全体のサービスについて考える習慣がなかったのですから。しかし、それまでは自分たちの仕事ではないと思っていた、“顧客満足度”の向上という課題を、自分たちの問題として意識するようになったところ、「雲海テラス」というアイデアが生まれました。

 雲海が出ること自体は、地元では誰もが知っていました。見慣れている人にとっては、それが当たり前すぎて、観光資源になるとは夢にも思わない。しかし、モチベーションを高く持ち、顧客満足度を向上させることを真剣に考えることで、埋もれていた資源を「再発見」することにつながる。これは一般ビジネスでも活用できると私は思っています。

モチベーションが「再発見」の源

 ここで大切なことは、現場のスタッフが自ら考えて発言したこと。その施設のことを一番よく知っているのは、毎日現場で働くスタッフです。だから現場スタッフから出たアイデアが、一番良いものであることが多い。しかも、自発的に出したアイデアであれば、人一倍愛着も生まれる。多少の困難にもめげずに実現化していくのです。何よりも好結果が出れば、それは確かな自信となり、さらなる向上へと向かいます。

 「雲海テラス」の場合も、実現に至るまでは相当の困難がありました。ゴンドラ部門として出したアイデアは、ゴンドラ部門で責任を持って取り組まなければならなかったからです。しかし、「トマムが変わるためには、自分たちが変わらなくては」という意識の統一を図り、彼らは克服していきます。部門全員が接客経験ゼロということに関してはレストラン部門に頼み研修をしてもらい、一から身につけたそうです。何よりもカフェを開くために生じるゴンドラやリフトのメンテナンス時間の減少も作業手順を見直し、効率を上げることで解決しました。そうしてゴンドラ山頂駅の小さな広場にテーブルとイスを並べただけのテスト営業を開始し、2ヶ月の期間中に約5000人を集めたのです。大成功でした。

意見を出し合える環境を作ることが自発的な問題解決につながる
意見を出し合える環境を作ることが自発的な問題解決につながる

 現場スタッフが、「お客様に喜んでいただきたい」と本気で思うようになった時、大きな力が生まれる。私はそう考えていますが、それが正しかったことを、トマムのゴンドラ部門のスタッフが証明してくれました。

 この事例でも分かるように、組織の再生や活性化のためには、その組織のスタッフすべてが“顧客満足度”という意識を持たなければいけません。顧客満足度を高める努力を続けるには、やはり高いモチベーションが必要です。スタッフのモチベーションが最も高まるのは、それはお客様に褒められた時が絶対です。顧客に評価されることが他のどのような方法よりも効果があるのです。つまり、スタッフのモチベーションと顧客満足度は比例するのです。

ページの先頭へ

今回の内容

他の回へ

ビジネスコラム

最新IT事情が5分でわかる! ITバー つぐみ物語

もっと学ぶ

もっと学ぶ

本記事の内容は公開当時のものです。本コラムに関するご意見等ございましたら、日立ソリューションズまでお問い合わせください。

ページの先頭へ