Chapter01「話す」際に、いちばん大切なこととは?
私たちは、普段話すときに、自分自身が経験したことや理解していることの中から言葉を選んでいます。つまり、自分がよく知っていることでも、相手はまったく知らない可能性があるのです。たとえば、「コップ」という言葉を口にしたとき、自分はマグカップをイメージして話していても、相手はワイングラスを想像しているかもしれません。あるいは、「大きな木」と言ったとき、自分は背丈くらいの木をイメージしていても、相手はてっぺんが見えないくらいの巨木をイメージしているかもしれません。そういったことを考えずに一方的に自分の感覚で言葉を選ぶと、言いたいことが相手に伝わらなかったり、誤解が生じたりします。
話すことはコミュニケーションの一つ。話し方を学ぶことは、コミュニケーションを学ぶことでもあります。
人とコミュニケーションを図るときにいちばん大切なのは、「相手の立場に立つこと」。基本的にこれが理解できれば、どんな状況でも相手に伝わる話し方ができます。ただ、頭の中で理解をしていても実践はできないものです。
それもそのはず、欧米では、学校でスピーチやディベートを学ぶ授業がありますが、日本の学校教育のプログラムには、通常、スピーチや話し方の授業が組み込まれていません。小さいときから話の組み立て方を訓練する機会に恵まれていなかった日本人がスピーチ力を身につけるには、日常的な対話の中で自ら訓練していくしかないのです。
今からでも遅くはありません。訓練すれば話し方をマスターすることはできます。まずは、自分の話し方を客観的に分析してみることから始めましょう。そうすれば、「相手の立場に立った」話し方ができるようになります。