CHAPTER4 粋に見える「寿司屋での注文の仕方」とは?|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。
「お好み」は寿司屋ならでは注文の仕方、ぜひマスターしたい。しかし、値段やメニューが出ていないことも多く、行き当たりばったりで頼むと予算オーバーの危険もある。スマートに頼みつつ、上手くまとめる方法はないのだろうか。
「基本はよく『白身、赤身、こってり、巻きもの』といわれますが、これを原則として10貫が1人前と考えてください。しかし、トロを3貫食べてからお酒を飲み出す人、エビや貝類からはじめる人、いずれも正解。法則を踏まえつつも、自分の食べたいように食べればいいんです」
それでも「はじめの一言」がなかなか難しい。それならば、まずは軽くおつまみとして、お造りを出してもらうといいという。ビールや日本酒をちびちびといただいていれば「そろそろ握りましょうか」の声がかかる。自分から「そろそろ握ってもらえますか」と声をかけてもいい。
「10貫1人前の目安の中で、自分で食べたいものを組み立てる。それが『お好み』の楽しさです。お客様が『お好み』を希望されるなら、予算を決めて店側に伝えておき、その範囲を越えそうになったら合図をしてもらうとよいでしょう」
淡白なもの
↓
濃いもの
↓
↓
↓
甘いもの
この流れは原則ではあるが、絶対ではない。基本を踏まえつつ、食べたい物を選んでまとめていくのが寿司本来の楽しみ方である。
*ツメ:あなごなどの煮汁を煮"つめ"たもの。
「お好み」でコースを組み立てる上で、いくつか注意点がある。まずは誰もが恐れおののく「時価」である。頼んでみたら予想外に高くて予算を大きくオーバー、なんて話はよくあること。そう漏らすと、重金さんはこともなげにいう。
「時価は聞けばいいんですよ。無邪気に聞けるのも若さの特権ですしね。実はそれよりも回転寿司に慣れている方が陥りがちなのは、回転寿司で食べ慣れた『ネギトロ』のような安価なお寿司です」
ネギトロは、本来はマグロの骨の近くの「すき身」を指し、魚を1本丸ごと買い付けるような店でなければ出せない隠れメニューの1つだった。しかし、マグロのペーストに植物油を混ぜるなど、似ても似つかない代物が出まわってきた。それで安価なわけだが、その感覚で通常の寿司屋で頼むと、予想を遥かに越えた値段に驚くことになる。
「ウニやトロも、回転寿司とはまったく違うものと考えた方がいいでしょう。コハダも仕事の細やかさがまったく違う。そのあたりの質に対する値ごろ感は、少しずつ覚えるしかないでしょうね」
他にも、輸送技術の進歩により、サケやキンメダイ、サンマなど、従来の江戸前寿司にはなかった新顔の魚も登場し、ますます選択肢は広がっているという。賛否両論あるようだが、重金さんは「あまり堅苦しくなく今の寿司を楽しめばいい」とあくまで自然体だ。
そして「そろそろ一人分が終わるが、ちょっと食べ足りない」という時は、巻きものが来る前に追加を依頼するのが約束事だという。巻き物は、いわば"食べ終わり"の合図。間をおかずに椀物が出てくることも多い。万一、それでも食べたりない場合、他の巻き物を頼むといい。
以上を踏まえて、いざ実践。私のリクエストは「おまかせ」コースの中に、「マグロの赤身」と「いくら」を入れてもらうこと。ただそれだけなのに、声をかけるのは妙に緊張する。余裕しゃくしゃくで時価のものを頼めるのはまだ先のようだ。
頼み方ももちろんそうだが、知っておきたいのがマナーと失敗した時のリカバリー法。重金さんは「気軽にリラックスして」というが、知っておくだけでも不安が解消される。
「寿司屋は、職人と客がカウンター越しに1対1で話をしながら食事を組み立てていく、それが醍醐味ですから、楽しみつつ自分らしい食べ方を見つけられるといいですよね。ぜひ、旬の魚やお薦めについて、また食べ方や値段にいたるまで、話しかけてみてください。妙に博識ぶったり、無茶を言ったりせず、素直な態度で接すれば職人も快く応じてくれるでしょう。そのやり取りが、いっそう寿司をおいしくしてくれると思いますよ」
そこで職人さんと対等に会話を楽しむために必要なのは、魚についてのちょっとした知識と食への好奇心。加えて寿司職人というプロに対しての尊敬と信頼だという。
「寿司屋独特の言い回しである『あがり』や『ガリ』、『お愛想(おあいそ)』など、符牒(ふちょう)や隠語を使いすぎるのも、通ぶっている様で嫌われますね。花柳界の言葉や女房言葉が由来である場合も多く、職人側の隠語もあります。素人が使うのはちょっと嫌みな印象になりますからね」
あまり堅苦しく考えず、周りに迷惑をかけないことを意識しながら「自然体」でいましょう。素直な心で向き合うことが、一番のマナーといえるかもしれません。
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