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デジタルトランスフォーメーションの基礎知識・Chapter1:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

変動価格はスタンダードとなるかダイナミックプライシングの現在と未来

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監修者プロフィール

依田 高典 氏

依田 高典 氏

京都大学 大学院経済学研究科 教授

1965年7月29日、新潟県生まれ。1989年、京都大学経済学部卒、1995年、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。甲南大学講師・助教授(1995-2000年)、京都大学大学院経済学研究科助教授(2000-2007年)を経て、現在、京都大学大学院経済学研究科教授(2007年-現在)。その間、イリノイ大学(1997-1998年)、ケンブリッジ大学(2000-2001年、2005年)、カリフォルニア大学(2011-2012年)客員研究員を歴任。専門は応用経済学。情報通信経済学、行動経済学の研究を経て、現在はフィールド実験とビッグデータ経済学の融合に取り組む。

Chapter1価格が柔軟に変動するダイナミックプライシング

近年、同じモノやサービスであっても状況に応じて価格が変動する「ダイナミックプライシング」が注目されています。航空機やホテルはずいぶん前から時期によって異なる料金制が導入されていますし、最近はプロスポーツなど興行系のチケットで変動料金が試行され始めています。今後は渋滞対策で高速道路料金、あるいは地球環境の観点から電気料金でもダイナミックプライシング導入の声が出ています。

ビジネスがお金を儲けるものである以上、モノやサービスの価格を決める「プライシング」(価格設定、値付け)はきわめて重要な要素。まずは価格がどのようにして決まるのか、その復習から始めておきましょう。

需要と供給の関係で決まる価格の仕組み

基本中の基本ですが、経済学において、価格は「需要」と「供給」の関係によって決まります。需要、つまりあるモノやサービスを買おうとする量が、供給、つまりそのモノやサービスを売ろうとする量よりも多ければ、価格は上がります。

反対に、供給が需要よりも多ければ価格は下がります。需要量の多い・少ないを表す「需要曲線」と、供給量の多い・少ないを表す「供給曲線」が均衡したところで価格が決まる……経済学の教科書にはそう書いてあります。中学や高校の社会の授業で勉強したことを思い出した人もいるでしょう。

図版

需要と供給が均衡したところで、価格が決定する

ところで、需要量と供給量は、季節によって、あるいは日々、さらには時々刻々と変化するものです。たとえば冬物のコートは、寒い季節には需要が増えますが、夏には減ります。学習参考書や就職ノウハウ本は、試験が行われる時期には需要が増えるでしょうが、試験が終われば買いたい人は減るでしょう。居酒屋のビールも、夜7時以降は需要が増えますが、夕方の早い時間にビールを注文する人はそれほど多くないかもしれません。

これは供給についても同様で、季節的な影響、生産や在庫の状況、その他もろもろの事情によって、供給量は変わります。野菜や果物のように、天候の影響で生産量が増減する、あるいは供給したくても季節的に生産できない、といったモノもあります。

ごく単純化してしまえば、需要と供給の変動を一切意識せず、常に同じ値段でモノやサービスを売っているような状況は、価格設定が静的(固定的)であるといえます。制度やルール、業界慣行などさまざまな要素も絡んできますが、たとえばリアル書店の書籍は通常一年を通して同じ価格で販売されますし、都市部の電車も通勤時間だろうが昼下がりのすいている時間だろうが料金は一律同じです。

一方、コートは夏場に安く売り、冬場は高く売ることがあるでしょう(冬場にあえてセールを打って安く販売するような戦略ももちろんありますが)。ビールに関しては、夕方の早い時間はハッピーアワーなどと呼び、通常の半額程度で提供する店も多く見られます。

モノやサービスの価格には、このように、需要と供給の変動に応じて変わっていくタイプのものがあります。こうしたタイプの中でもとくに、日々や時間ごとの需要と供給の動きに動的に(ダイナミックに)対応し、価格設定を柔軟に変動させていくものを、「ダイナミックプライシング」(動的価格設定、変動料金制)と呼びます。

古くから存在するダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングの考え方自体は、実は古くから存在します。わかりやすいのがスーパーマーケットの例でしょう。午前中に製造した惣菜を夕方になったら安くする、閉店間際に生鮮食品の値段を下げて売り切る……といった手法は、以前から当たり前のように用いられてきました。

また、冒頭に書いたように航空機やホテルの料金もダイナミックプライシングの典型的な例です。航空機やホテルはゴールデンウイークやお盆、正月といった繁忙期に高く設定され、閑散期には安くなります。温泉宿に泊まろうとしたとき、金曜・土曜泊は驚くほど高いのに、日曜やその他の平日は安く泊まれる……といった経験を持っている人もいることでしょう。先ほど通勤電車は混雑時もそうでない時間も料金一律だと書きましたが、同じ鉄道でも新幹線の指定席は時期によって値段が変わります。

京都大学大学院・経済学研究科の依田高典教授は、ダイナミックプライシングの定義を次のように説明します。

「動的(ダイナミック)の意味をどうとらえるかによっても理解は変わってきますが、簡単にいえば、刻一刻と変わる需要と供給それぞれの要因に応じて、需要と供給が均衡するような値付けをその都度行うことを、ダイナミックプライシングといいます」

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公開日:2019年9月5日

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