Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービスの導入事例
イリソ電子工業株式会社様「 Dynamics 365 」のビッグバン導入で全拠点のERPを同時刷新。IT基盤最適化と業務プロセス改革の両輪で経営強化
コネクタメーカーのイリソ電子工業は、オンプレミスで利用していたERPを日立ソリューションズの支援のもと、「 Microsoft Dynamics 365 」(以下 Dynamics 365)に刷新しました。あわせて業務プロセス改革も実施し、グローバル全拠点での一斉切り替えを成し遂げました。同時にセルフサービスBI/情報利活用基盤の整備やBCP/DRおよび内部統制の強化を進め、将来の売上倍増を現在の経営リソースのままで対応できる体制強化の実現に向けて運用を開始しました。

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背景
売上倍増を見越し、経営体制を強化

豊嶋 光由 氏
2025年度に創立60周年を迎えるイリソ電子工業株式会社は、コネクタの開発・製造・販売を柱に、グローバルで事業を展開する企業です。なかでも車載分野において、基板同士を接続する「BtoB(Board to Board)」は、市場で高く評価されています。
「振動や熱など過酷な車載の環境でも、高速大容量のデータ通信を高品質で行えるBtoBコネクタは、当社のコアコンピタンスです。AIの普及などで自動運転が社会に広く普及していくこれからの時代は、当社にとって大きな成長機会です」と豊嶋氏は語ります。
加えて、営業部門が売上・利益を牽引するフロント・ドリブン志向を、メーカーでいち早く導入しているのが同社の強みです。
「将来の事業規模拡大を見据え、売上が倍増しても、現状の人員以下でオペレーション可能としたい」と豊嶋氏は語り、同社は経営体制の強化を進めています。
取り組みの1つがERPの刷新です。従来のERPは業務面で課題を抱えていました。業務改革チームリーダを務めた丸山氏は「当社は国内外の5つの生産拠点と9つの販売拠点を持っていますが、グローバルビジネス展開に適合した管理会計の実施や、業務オペレーションの統一が不十分でした。更にグローバルでの情報共有基盤がないため、情報を適切に可視化できず業務の質や生産性の低下を招いていました。その影響により意思決定プロセスの正確さやスピードにも支障をきたし、統制の利いたPDCAサイクルを回すことが困難でした」と思い返します。
プロジェクトマネージャとして、プロジェクトを主導した松田氏はシステム面での課題を「社員一人ひとりの意思決定を迅速化する仕組みが求められていました。また、旧ERPはオンプレミスで構築していたため、BCP/DRにも不安がありました」と振り返ります。
取り組み
ERPを「 Dynamics 365 」に刷新

松田 仁 氏
同社は2018年のサポート更新を契機に、ERPの刷新に着手。まずは将来の事業規模拡大に最適なTo Be像を検討し、全体的な方針を定めました。
「投資対効果をより高めるべく、業務プロセスを全面的に考え直し、ERPを作り直すことがベストだと判断しました。Fit to Standardの思想に基づきERPの機能に合わせて業務プロセスを標準化し、カスタマイズは必要最低限に抑えてバージョンアップに対応しやすくし、陳腐化のリスクを最小化しました」(豊嶋氏)
「ERP選定で重視した点がクラウド(SaaS)型であることです。限られた人員で構築・運用するには、クラウド型が必須でした。標準サービスで提供できる点でもクラウド型が最適と考えました」と松田氏は続けます。さらに「グローバルでの情報共有基盤と意思決定迅速化を支援する仕組みとして、セルフサービスBIの導入も決めました」と丸山氏は言います。
複数のクラウド型ERPを比較検討した結果、採用を決めたのは「 Dynamics 365 」です。
「『 Power BI 』や『 Microsoft 365 』との親和性が高く、可用性の点でも安心できます。『 Azure 』のDR環境がそのまま使えるのも魅力です」(松田氏)
「 Dynamics 365 」導入のパートナーには、日立ソリューションズを選びました。
「グローバルを含めた『 Dynamics 365 』の大規模導入実績の豊富さが決め手となりました。マイクロソフトからの強い推薦も後押しになりました」(松田氏)
システム構築は2021年5月から開始し、2024年に本稼働しました。グローバルの全拠点で一斉に切り替えるビッグバン方式を導入したことがユニークです。
「当社はグループ間取引が多いので、新旧ERPを併存させて段階的に移行する方式は適していません。旧ERPがシングルインスタンスであったこともあり、ビッグバン方式を採用しました。入念にテストを重ね、移行プロセスやスケジュールを各部門と調整したうえで一斉切り替えを実施しました」(松田氏)
同社はビッグバン方式を成功させるための組織体制や教育方法も工夫しました。
「単なるシステムのリプレースではなく、実際に現場が困っている原因への歯止めを打つために、BPO(Business Process Owner)をはじめ各プロセスチームを発足し、一斉に業務フローの見直しを行いました。また、各拠点にキーユーザーを選任し、BPRも含めた教育やエンドユーザーへの浸透のために、日本本社に出向いて短期間で集中的に受講してもらうなど、さまざまな形で多くの人に協力してもらいました。そのお陰で大きなトラブルもなく無事に本稼働を迎える事ができました」と丸山氏は語ります。
効果
クラウド化でBCP/DRと内部統制強化

室長
丸山 和幸 氏
同社は「 Dynamics 365 」導入によって、多様な効果を得ています。
「業務プロセス改革と一体となったERP刷新を、確実にやり遂げたことが大きな成果です。クラウド化によって、BCP/DRおよび内部統制を高いレベルに引き上げられました」(松田氏)
セルフサービスBIついては、「各社員が自身でデータ分析を行い、意思決定の迅速化を図っていけるように利活用を促進していきたいと思います」と松田氏は続けます。
丸山氏も業務面での導入効果を「グローバルビジネス展開に適合した管理会計の実施や業務オペレーションの統一は、一部の課題は残るものの、おおむね達成したと言えます。グローバルの情報共有と適切なPDCAサイクルを回す基盤は整備できたので、これから活用を広げて業務の質や生産性の改善の継続、意思決定の正確さや迅速化への成果をあげ、経営体質の強化を進めていきます」と語ります。
「 Dynamics 365 」導入とあわせて、「mcframe」の原価管理システムや日立ソリューションズが開発したモバイル端末向け業務テンプレートで創出したハンディターミナルのアプリケーション、Web-EDIなど、ほかシステムとのERP連携も日立ソリューションズの支援で行っています。これらによって、将来の売上倍増時にも、現在の人員で対応可能な経営体制強化が見込まれます。
展望
有機的なシステム連携などでDX推進
今後は「 Dynamics 365 」の利用促進と並行して、ほかシステムの導入も進めていきます。松田氏はその一例を「当社は製造業なので、MES(Manufacturing Execution System)の必要性を感じています」と語ります。
さらにはCRMなど製造関係以外のシステムも含め、「『 Dynamics 365 』を軸に各種システムを有機的に結合させることで、DXを実現したいですね」と豊嶋氏は語ります。
世界各国に製造・販売拠点を持つ同社のビジネスを、日立ソリューションズはこれからもITの力で支えてまいります。
イリソ電子工業株式会社
所在地 | 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目13番地8 | ![]() |
---|---|---|
創立 | 1966年12月 | |
従業員数 | 単体:594名/連結:2,936名(2025年3月31日現在) | |
事業内容 | コネクタの製造、開発及び販売 | |
URL | https://www.irisoele.com/jp/ |
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本事例の内容は2025年6月2日公開当時のものです。
※所属・役職は取材当時のものです。
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最終更新日:2025年6月2日