スマートマニファクチャリングソリューション

経営と製造現場をつなぐ「OTとITの融合」について

連載『スマートマニュファクチャリングの実現』#01

「OTとIT」の足がかりとなる
MES(製造実行システム)とその役割

 製造現場には、ものづくりに必要となるさまざまな情報があります。例えば、企業の経営状況は、お金に関する財務情報や取引先との販売情報、仕入先への調達情報、社員の人数や配置など情報を見ればわかります。このような経営に関わる情報は、ERPで管理することができます。ものづくりを行う工場に関わる情報は、MES(製造実行システム)というシステムで管理することができます。MESとは、製造オペレーションのさまざまなデータを収集管理するシステムで、「生産(計画/進捗など)」「在庫(原材料/仕掛品/製品など)」「保全管理(設備やAGVなど)」「品質管理(トレーサビリティなど含む)」といった業務を対象としています。
(図表1:ものづくりのための機能と情報フロー相関イメージ)

図表1:ものづくりのための機能と情報フロー相関イメージ

すべての工場にMESが導入されていれば、製造現場の情報をいつでも入手できると思われるかもしれませんが、それは違います。通常工場ごとに生産する製品や役割が違うため、MESの機能や要件もバラバラです。MESは大企業の工場では比較的導入されていますが、中小企業では紙やExcelといった手段で情報管理されているケースが大半です。また、同じ企業の工場でも、工場ごとに生産する製品や役割が違うため、MESの機能や情報が違っているというケースも良くあります。つまり、工場ごとにMESの仕様がバラバラで情報が共有できないというケースも良くあります。

例えば、ある工場で大量の注文が入ったとします。納期にしたがって、生産計画を立てて原材料の手配や設備の準備、作業者の割り振りを行います。こうしたケースで一番良くある問題は、原材料を確保することです。最近は、極力在庫を持たない経営をしているため余剰在庫はありません。仕入先へ問い合わせても確保できないケースが良くあります。

工場の調達担当が仕入先の次に問い合わせるのが、他工場の在庫です。他工場への問い合わせ手段は、メールや電話、FAXです。「原材料の在庫情報ならERPシステムで直ぐわかるはずじゃないのか」と思われるかもしれませんが、確かに在庫は直ぐわかりますが前述のとおりその在庫は何かの製品を作るためのものです。一時的に借用したことで、別の製品が生産できず納期に間に合わなくなれば意味はありません。つまり、他工場ごとに影響する製品の納期と生産計画を洗い出して、借用しても大丈夫な量を確認しなければなりません。こうした情報はERPではなく、MESやExcelにしか無いのです。いずれにしても、管理体系や内容が工場ごとに違っています。

こうした問題を解決する鍵は、MESにあります。工場ごとに分断されている「OT:制御システム」を「IT:情報システム」でつなぎます。製造設備の稼働データや製造オペレーションの実績データをMESに集約、すべての工場でMESを共通化します。工場間でMESの情報を共有すれば、こうした問題は解決できます。
(図表2:ERPとMESの比較)
(参考情報:MES(製造実行システム)とは何か?主要パッケージや生産管理向け11の機能を解説 https://www.sbbit.jp/article/cont1/34515)

図表2:ERPとMESの比較

スマートファクトリーの狙い、
大量生産からマスカスタマイゼーションへ

 これまで多くの製造業では、特定の製品を決まった製造ラインで大量生産してきました。1つの工場で作れる製品は決まっていて、その工場の製造ラインでは製品をできるだけ安く、早く、大量に生産できるように設定されていました。しかし、製品を作れば作っただけ売れる昭和の時代は終わり、さまざまな製品を少しずつ生産する少量多品種生産の平成時代へと変わりました。この変化はさらに加速して、近い将来大量生産と同じコストで1つずつ仕様が異なる製品の生産が可能になる時代が来ると言われています。これを実現する工場をスマートファクトリーと言います。

多品種少量生産を行うためには、注文ごとに異なる仕様や数量などの情報を生産現場へ伝える必要があります。スマートファクトリーの狙いは、「マスカスタマイゼーション(個別大量生産)」を実現して見込み生産と同等の低コスト、短納期で個別受注生産に対応することです。スポート用品メーカーのアディダス社は年間約3億足のスニーカーを生産していますがトップのナイキ社を追撃する秘策として、全自動工場「スピードファクトリー」を本社のあるドイツに建設しすでに生産を開始しています。この「スピードファクトリー」は米国にも建設され、さらに2020年ごろには日本にも「スピードファクトリー」が建設される予定と言われています。
(参考情報:アディダスの全自動工場「スピードファクトリー」は何がスゴいのか https://www.sbbit.jp/article/cont1/32964

まとめ

 今回はスマートマニュファクチャリングについての第1回目ということで、日本の製造業の課題「経営と製造現場の乖離」を解決に導くシステムへの期待としてMES(製造実行システム)についてご紹介しました。次回は、日本の強みである“匠の技”をスマートマニュファクチャリングにおいて実現する方法についてご紹介します。

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