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第3回 米国GE社『インダストリアル・インターネット』の狙いと戦略を探る 第3回 米国GE社『インダストリアル・インターネット』の狙いと戦略を探る

製造業のビジネスモデルを変える『インダストリアル・インターネット』とは

 米国のIoT(Internet of Things)に対する取り組みが活発になっています。米国の取り組みは『Industrial Internet』(インダストリアル・インターネット:産業のインターネット)と呼ばれ、IoTよりもCPS(Cyber Physical System:サイバーフィジカルシステム)という言葉が使われています。
 ドイツの『インダストリー4.0』は、ドイツ流製造業を世界標準にするという『スマートファクトリー』というコンセプトが背景にありましたが、米国の『インダストリアル・インターネット』は製造業だけをメインにするのではなく、エネルギー、ヘルスケア、製造業、公共、運輸の5つの領域を対象としています。

 この活動を主導しているのは 「Industrial Internet Consortium」(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)という組織です。ゼネラル・エレクトリック社(GE社:世界最大のコングロマリット)、インテル社(半導体大手)、シスコシステムズ社(ネットワーク大手)、IBM社(IT大手)、AT&T社(通信大手)の5社が創設しました。
 その参加企業は既に100社を超え、米国企業のみならず欧州企業、日本企業、中国企業など幅広く参画しています(2015年1月現在)。

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 『インダストリアル・インターネット』の中核となる企業はGE社です。GE社は、金融や重電、航空、医療、エネルギー、家電など世界最大のコングロマリットですが、現在その事業ポートフォリオを変革し、製造業へシフトしています。
 GE社が掲げているのは、「ハードウェア(機械)とソフトウェア(情報)を融合する新しい産業革命の実現」です。GE社は、「産業革命」「インターネット革命」に続く第3の革命が『インダストリアル・インターネット』であり、「産業機器(モノ)とビッグデータ(データ)を人間(ヒト)に結びつける、オープンでグローバルなネットワークである」と定義しています。これは、モノをインターネットに繋げることで、様々なデータを収集し、このデータを解析することで、顧客に価値を提供するという考え方です。

 これまでの製造業のビジネスモデルは、モノを作って売ること、製品の販売後に保守やサプライなどサービスを売ることでした。しかし、『インダストリアル・インターネット』は、機械(モノ)からのデータ解析と、機械(モノ)に組み込まれたソフトウェアで、顧客価値を飛躍的に高める新しいビジネスモデルだとしています。
 GE社は、自社グループが取り扱っている電車や船舶、航空機エンジン、発電所のタービン、医療機器など、ネットワークに繋がる機械からの膨大なデータを解析し、効率化することで顧客に価値を提供できるとし、「1%の効率化が年間200億ドル(2兆4,000億円)の利益を生みだせる」と効果を試算しています。

米国流IoTの取り組みの鍵はコンソーシアムによる協業

 『インダストリアル・インターネット』は、企業グループがコンソーシアムを組んで推進するスタイルです。米国政府も Smart America Challengeという取り組みを行っていますが、取り組みを主導しているのは企業です。これは、アメリカ国立科学財団(NSF:National Science Foundation)が2006年にCPS(サイバーフィジカルシステム)への取り組みを表明したにも関わらず、具体的な成果があがっていないことなども影響していると言われています。しかし、サイバーフィジカルシステムの基本コンセプト「サイバー(コンピュータ空間)とフィジカル(現実世界)を連携する仕組み(システム)」は踏襲されています。

 GE社は、『インダストリアル・インターネット』のメリットを説明するケースを、

フィジカル(現実世界)の機械(モノ)にセンサーを組み込み、ネットワーク化してデータを収集、これを解析してコスト削減、効率化、最適化で利益を得るという、フィジカルからサイバー(コンピュータ空間)への連携

サイバー(コンピュータ空間)にある設計データや制御データを利用して、フィジカル(現実世界)の3Dプリンターで部品を造成し、『スマートファクトリー』で機械(モノ)を組み上げるという、フィジカルからサイバーへの連携

フィジカル(現実世界)にある機械(モノ)の機能を、サイバー(コンピュータ空間)から機械に組み込まれているソフトウェアを入れ替えることで、新しく追加できる

としています。

 3Dプリンターを使った製造技術は、現在航空機のエンジン開発で実証実験が行われており、その活動を今後全社へ展開していく計画です。これは『マイクロファクトリー(極小工場)』という構想で紹介されています。ドイツの『インダストリー4.0』では、『スマートファクトリー』というコンセプトが紹介されていましたが、GE社は、ユーザー企業が保有している3Dプリンターや製造設備にデータをダウンロードして、故障した機械の部品を造成するという手法を考えているそうです。そして、こうした取り組みを展開する実行組織がGE社とアライアンスを組むインテル社、シスコシステムズ社、IBM社、AT&T社が提供する各種ソフトウェアや開発プラットフォームです。

基本ソフトウェア“Predix(プレディクス)”が勝敗の鍵を握る

 GE社のCEOジェフ・イメルト氏は、「ハードウェアだけで競争に勝てる時代は終わった。ハードウェアは同じままでもソフトウェアを使ってハードウェアの能力を引き出して、顧客にとっての価値を最大化することができる。」と語っています。つまり、ハードウェアの能力を引き出すソフトウェアが、競争の勝敗の鍵を握るということになります。

 GE社が目指している『インダストリアル・インターネット』のコアとなる基本ソフトウェアは“Predix(プレディクス)”です。10億ドルを投資して2011年に設立されたGEソフトウェアが開発した、機械(モノ)をネットワーク化するOSに相当する基本システムです。
 “Predix”上で膨大なデータを収集保管するデータベース“Data Lake(データレイク)”は、EMC社とVMware社が出資するPivotal社が開発しています。
 GEソフトウェアは、既に業種向けアプリケーションを24種類以上リリースしており、ユーザー企業へ提供を開始しています。さらに、GE社はソフトバンクテレコムと戦略的提携を締結、この“Predix”をソフトバンクグループで取り扱うことが決定しています。

 GE社とインダストリアル・インターネット・コンソーシアムで協業しているシスコシステムズ社は、膨大なデータを解析に役立つ情報に変換するためには手間とコストが掛かることを指摘。その解決策となるアイディアを「データセンタにあるクラウドではなく、より近い場所のノードが処理を受け持つ仕組みが有効である」とし、これを「フォグコンピューティング」(“クラウド:雲”との対比で“フォグ:霧” )と命名。自社のネットワークOS「Cisco IOS」と「Linux OS」を統合した「Cisco IOx」を、プラットフォームとして展開しています。
 これによって、ネットワーク経由で一箇所に生データを集積するのではなく、データセンタの手前に処理ノードを置き、効率的に適切なデータに変換することが可能となります。

 さらに、あらゆる機械(モノ)をIoTに対応させる手段として、インテル社はIoT端末用のプラットフォーム“Edison(エジソン)モジュール”を提供しています。これは、切手サイズの小型コンピュータです。Atomプロセッサに無線LAN/Bluetoothなどの通信機能を統合したSoC(システム・オン・チップ)が搭載されていて、7,000円程度から誰でも簡単に入手することができます。
 2015年1月には、世界最大の家電見本市2015 International CESで、さらに小さいボタンサイズの超小型コンピュータ“Curie:キュリー”が発表されています。
 インテル社は、次世代FA(ファクトリーオートメーション)システムの開発で三菱電機と協業することを発表しており、製造装置のセンサーから収集した情報をもとに「予防保全ソリューション」の開発を目指しています。

 このように米国はGE社の『インダストリアル・インターネット』を旗印として、「ハードウェアとソフトウェアの融合」と、「サイバー(コンピュータ空間)とフィジカル(現実世界)を連携する仕組み」を実現しようと取り組んでいます。ソフトバンクテレコムや三菱電機などがIoTビジネスのこうした取り組みにいち早く参画しているのも、注目すべきポイントです。

(公開日:2015年3月18日)

鍋野 敬一郎 氏の写真

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン 代表取締役
ERP研究推進フォーラム講師

1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

鍋野氏寄稿ムック 丸わかり!! IoT入門の写真

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IoT(モノのインターネット)によって、10年後の私たちの暮らしやビジネス、産業構造は、大きく変わるでしょう。
第4次産業革命と呼ばれる「IoT」を徹底解説するビジュアルムック。

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鍋野氏寄稿ムック

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出版社: 洋泉社 (2015/7/24)

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生産システムがつながる「スマート工場」の登場により、生産現場、サプライチェーン、われわれの暮らしはどう変わるのか!?
インダストリー4.0の立役者ヘンニヒ・カガーマンはじめ、日本GE、経産省のインタビュー、専門家の論考などにより、21世紀の新産業革命を多角的に読み解く。

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ご参考サイト

2015年7月31日(金)開催「日本の製造業はインダストリー4.0にどう対処すべきか」スペシャルレポート(SBクリエイティブ株式会社(ソフトバンクグループ)のサイト「ビジネス+IT」へ)

インダストリー4.0から見る日本企業が執るべき戦略~日本的「つながる工場」とは何か。その示唆を探る~ 講演資料ダウンロードはこちら

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