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特集・コラム

第1回 FTA/TPPとは何なのか 第1回 FTA/TPPとは何なのか

FTAとは

 日本経済新聞などでTPPやFTA、EPAという言葉をよく見かけるようになりました。最近では2015年1月15日に日本とオーストラリアのEPAが発効(協定が実際に運用されることを「発効」と言います)されました。日本・オーストラリアEPAの恩恵でスーパーでは「オージービーフ」の値下げ特売が行われました。

 では、TPP、FTA、EPAとは何なのでしょうか。これらは基本的にはFTAという言葉に集約されます。
 FTAとはFree Trade Agreement、日本語で自由貿易協定と言います。平たく言えば、2つの国や地域の間の貿易を自由にする協定のことで、貿易上の「自由ではない部分」の規制や制約を緩和することです。
 わかりやすい点を挙げれば、商品にかかる関税が削減・撤廃されます。先のオージービーフも日本に輸入される際にかかる関税が削減されたため、それが売価に反映されたのです。
 関税の削減されるイメージを図1に記しました。日本からマレーシアに輸出する場合に、関税が20%かかる事例です。例えば、FTAがない場合、日本での価値が100であったものが、税関で関税を払った後の価値が126になります。もし、関税が撤廃されれば税関を通過後の価値が105。21もの違いが発生します。これがFTAの効果です。

図1 FTAがもたらす関税削減効果

図1 FTAがもたらす関税削減効果

 もう少し、FTAについて詳しく説明しましょう。
 少し前までは経済は国の単位で完結していました。人や企業が国の中で生活、経済活動をしていました(図2:左)。このことは、国=企業(ビジネス)=人という「国境」構造であったわけですが、経済の発展と共にものを海外から輸出・輸入するようになり、国の中だけではなく、国を越えた交易が増加するようになります。
 また、それに伴い、その国にあった生産拠点やビジネスそのものが国を越えるようになりますと、今度は国を越えた人の行き来が増えてきます。
 国境を越えるボーダーレス経済が進むようになると、スムーズな人や物の行き来を制限する「国境」が交易の邪魔になります。地理的な国境もその1つですが、国境を越える際の関税やその関税手続の煩雑さ・遅さ、輸入にかかる法的規制、またその国への投資に関わる規制など、その国の経済を守るルール(広い意味での「国境」)が交易の発展の障害となります。

図2 FTAがもたらす経済統合効果

図2 FTAがもたらす経済統合効果

 農作物のように「国境」で高関税を設定して国内の産業を守ろうとすることは大事なことと納得される方々も多いと思います。ただ、歴史を振り返ると、保護をするよりも自由化した方が経済の発展につながるという考え方が趨勢です。その「国境の自由化」のためにFTAを推進しているのです。
 企業にとっては相手国での関税を撤廃してもらえば、安価に相手国に商品を供給できます。また、投資をする際には相手国の企業と同等の条件を適用してもらえば、競争上劣後しません。
 経済の根幹である人の行き来も自由にすれば、経済活動は更に活発になります。そういうオープン化を果たした国で高成長を遂げた国は多くあります。
 FTAは、二国間の経済オープン化のルールを導入しようとする協定なのです。つまりは、経済の面での「国境」をなくそう、FTA締結によって締結国の経済がシームレスになるというのがFTAの基本概念です。特に企業にとっては、相手国での輸入関税が低減、もしくは撤廃されることが何よりのメリットです(図2:右)。

WTOとFTA

 しかし、一方、世界にはWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)という世界レベルで貿易の自由化を果たす組織があります。これがなかなか前に進みません。小学校などのクラスで全員一致にならないように、世界規模で自由化を推進しようとしますと、意見の対立がどうしても起こってしまい、「クラス全員が仲良くしよう」ということが具現化しづらいのです。
 そこで、「クラスの中で仲良しを作ってもいいですよ」ということになるのです。これがFTAです。少なくとも今よりは「仲良し」が増えますから。貿易の自由化が部分的にではありますが推進されるので、WTOもFTAを容認しています。

仲良しグループとしてのFTAとその先

 日本はFTAと呼ばず、EPAと呼んでいます。Economic Partnership Agreementの略称で、経済連携協定と呼ばれています。このEPAの前にC(Comprehensive:包括的な)という単語と付けたCEPAというものもあります(日本とインドのEPAはCEPAと呼ばれています)。
 日本政府はEPAをFTAの経済連携の度合いを更に進めたものであるという見解をとっていますが、現実の内容としてはFTAと同等と考えていいでしょう。この呼称を使うものは他国にもありますが、あまり例が多くありません。

 また、日本を騒がしているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、FTAの固有名詞です。12カ国の間のFTAと考えてもらえればいいでしょう。

 当初は二国間の自由貿易協定が主体だったFTAも、二国間での締結が一段落し、今は地域内及び地域間のFTAが盛んに協議されています。
 12カ国で交渉しているTPP然り、アジアのRCEPも、ASEAN10カ国とその周辺6カ国の経済圏を模索しています。EUも基本はFTAを更に進化させ、統一通貨も導入した進化形です。中近東のGCC、中南米のメルコスールなども同類です。
 一般論では言えませんが、これらの経済ブロックは5~6億人の経済圏を目指しているようです。それらが今は地域間でFTAを結ぼうとしています。日本はここで、TPP、RCEP、日EU、そして日中韓と大きな経済圏を構成するFTAの交渉を現在行っているのです。

 こういった地域経済圏に参加するのとしないのとでは、先の説明のように国の経済の成長が違ってきます。また、企業はこういったFTAを中心とした地域経済圏をどう企業のグローバルSCMに取り込めるかで競争力が違ってくるのです。

 FTAがもたらすビジネスのボーダーレス化、それが企業にとってどのような戦略を可能にするかを次回見ていきたいと思います。

嶋 正和 氏の写真

嶋 正和 氏

株式会社ロジスティック 代表取締役

【学歴】
東京大学工学部電子工学科卒業
欧州経営大学院(INSEAD)MBA取得

【職歴】
コンサルティング、物流企業での実経験の中から、ノンアセット型3PLサービスを経営の立場から構築、運営を展開。株式会社プランテックコンサルティング(社外)取締役

-ボストン・コンサルティング・グループ
 ・情報システム・ロジスティクス関連プロジェクト
-フットワーク・エクスプレス
 ・物流会社にマーケティング、戦略の導入を実施
-ローランド・ベルガー・アンド・パートナー・ジャパン
 ・ロジスティクスの包括アウトソーシングを核とした改革コンサルティング
-ロジスティック
 ・設立時に大前研一氏主催のビジネス・プラン・コンテストで大賞受賞

嶋氏著書 戦略的FTA 活用ハンドブック メリットとコンプライアンスの写真

嶋氏著書

戦略的FTA 活用ハンドブック メリットとコンプライアンス

出版社: Web販売のみ(2018年6月発売予定)

章立て(予定)
 -第1章 FTAと戦略的活用
 -第2章 FTAの基礎
 -第3章 FTAのメリットを享受するには
 -第4章 日本企業のFTA活用の問題
 -第5章 日本企業の課題の解決はこれでできる!
 -参考資料
 -図表目次
 -索引
 -語彙集
 -FTAお役立ちサイト
 -FTAに関する相談窓口

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