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ブロックチェーンと分散型台帳技術・Chapter1:ブロックチェーンとは何か|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

信頼のプラットフォームとしてビジネスを変えるブロックチェーンと分散型台帳技術

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監修者プロフィール

杉井 靖典 氏

杉井 靖典 氏

カレンシーポート株式会社 代表取締役・CEO。

1973年生まれ。インターネット黎明期よりWeb・IT分野の幅広い事業に携わり、在籍した企業ではWeb媒体やコンテンツの企画開発を手掛け、ECやデジタルコンテンツ流通の分野で複数の起業経験を持つ。2015年10月、カレンシーポート社を創業。ブロックチェーン関連では国内トップクラスの実績を持ち、経済産業省や日本銀行などでも有識者としてアドバイスを行っている。ブロックチェーン推進協会(BCCC)副代表理事。日本ブロックチェーン協会(JBA)理事。

Chapter1ブロックチェーンとは何か

ブロックチェーンという言葉を目にする機会が増えています。採用事例も、金融、物流などの分野で出始めています。

事例を見てみましょう。みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループという日本の3大メガバンクは、銀行間の送金業務を担う新システムの実証実験を2016年に行っています。ふくおかフィナンシャルグループは、同社傘下の複数の地銀のアプリで活用可能なポイントのシステムを2018年秋に刷新すると発表しています。米スーパー大手のウォルマートらは、食品の流通過程をリアルタイムに把握できるトレーサビリティ(追跡可能性)のシステムを構築中です。また、海運大手のデンマークのマースク社らは、複数の国を結ぶ海上輸送の貨物をリアルタイムに追跡可能なシステムを構築したことを2018年8月に発表しました。

これらのシステムの基盤に使われているのが、「コンソーシアム型ブロックチェーン技術」や「分散型台帳技術」(Distributed Ledger Technology、DLT)と呼ばれている技術です。コンソーシアム型ブロックチェーン技術は、複数の企業から構成する団体(企業コンソーシアム)が情報を共有するために用いる技術を指す言葉ですが、多くの場合は分散型台帳技術と同じ技術を指します。

分散型台帳技術は、「誰が、いつ、どんな情報を台帳に書き込んだのか」を、偽造や改ざんがきわめて困難な形で記録・保管し、複数の当事者(企業)の間で共有する技術として使われています。といっても、これだけではピンとこないかもしれません。詳しいことは今後追って説明していきます。

このように具体的な取り組みが登場しつつある一方、世の中で流布しているブロックチェーンに関する情報は、率直に言ってまだまだ混乱しています。その理由は、専門家の間でも用語や概念について議論があること、それに一般向けに流布されている情報の水準にばらつきがあるからです。

今回の特集では、ブロックチェーン技術にはどのようなメリットがあり、どのような仕組みで動き、どのような用途に利用できるのか。そこを、なるべく誤解が少ないように、最初から説き起こして分かりやすく説明することにします。他の記事でブロックチェーンに関する知識を得ている読者の方は「他の記事で読んだ内容と違う」と思われる場合があるかもしれませんが、それは先に述べた事情があるからです。

ここまでのポイント
  • ・「コンソーシアム型ブロックチェーン」は、複数の企業による団体が情報を共有するために用いる技術で、多くの場合「分散型台帳技術」も同じ技術のことを指しています。

ビットコインにまず注目しよう

ブロックチェーンを知るには、まず仮想通貨ビットコインを知ることが近道です。ビットコインは今までの情報システムの常識を大きく塗り替えました。このビットコインの動作原理に注目して、その性質の一部を応用した製品を作る取り組みが相次ぎ、それらの製品がブロックチェーンや分散型台帳技術と呼ばれるようになりました。そしてビットコインは今でも最新技術が投入され続けている最大級のブロックチェーンなのです。

ブロックチェーンの説明図(経済産業省による「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」より)

ブロックチェーンの説明図
(経済産業省による「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」より)

ここまでのポイント
  • ・仮想通貨ビットコインの性質の一部を応用した製品が、ブロックチェーンや分散型台帳技術と呼ばれるものです。
  • ・分散型台帳技術は、ブロックチェーンに含まれる技術となります。

統治主体がないにも関わらず、信頼できる台帳を作り上げたビットコイン

仮想通貨ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物が、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークで送金できる電子的なお金として設計したものです(P2Pネットワークとは、クライアントサーバー方式とは異なり、複数のコンピュータ同士が対等な立場で通信する形態のネットワークです)。ビットコインは2009年の1月から動き始めています。2018年8月の時点でビットコインは足かけ9年半に渡りほぼ無停止で動いている実績を持ちます。

ビットコインはインターネットで誰でもアクセスできるP2Pネットワークの上で動いています。そして、数え切れないほどのサイバー攻撃を受けてきました。それにも関わらず、ビットコインのP2Pネットワークが外部からのサイバー攻撃により深刻なダメージを受けたことは、まだありません。

このように、ビットコインは止まらないこと、そしてサイバー攻撃に強いという実績があります。それに加えて、記録された情報の改ざんが極めて困難となるデータ構造を備えています。このような特徴をうまく活用すれば、ビットコインという「電子的なお金」以外の用途でも役に立つのではないか─そのようなアイデアに基づいて出てきた技術が、ブロックチェーンや分散型台帳技術です。

ところで、ブロックチェーンや分散型台帳技術といった用語の定義は、実は専門家の間でもまだ定まっていません。以下では、なるべく「最大公約数」となるような説明をしていきます。

ビットコインに代表される仮想通貨のインフラは「パブリックブロックチェーン」と呼ばれ、インターネット上で誰でも参加できるオープンなP2Pネットワークとして機能します。従来の情報システムの常識とは異なり、"運営主体となる組織による統治"を前提としないことが大きな特徴です。特定の運営主体を持たない代わりに、”P2Pネットワークの参加者全員による統治”がなされているのです。少数の参加者の機械が故障した場合や、一部の悪意を持った参加者がハッキングで不正な操作を試みた場合にも、P2Pネットワーク全体では正しく動作するように設計されています(※1)

パブリックブロックチェーンとは、誰でも参加できるにもかかわらず、悪意のあるユーザーが妨害しようとしても、止まらず、データが消えず、データの改ざんもできない仕組みです。このような性質を備えているパブリックブロックチェーンが、本来の意味でのブロックチェーンだと考えればいいでしょう。

ここまでのポイント
  • ・ビットコインは止まらない、サイバー攻撃に強いという実績があり、さらに情報の改ざんが極めて困難という特徴を持ちます。
  • ・「電子的なお金」以外の用途でビットコインを活用したいというアイデアに基づいて出てきた技術が、ブロックチェーンや分散型台帳技術です。
  • ・ビットコインに代表される仮想通貨のインフラは、「パブリックブロックチェーン」と呼ばれ、誰でも参加できます。

分散型台帳技術は、複数の企業が台帳を共有する仕組み

ブロックチェーンと呼ばれる技術は、大きく見るとパブリックブロックチェーンと「分散型台帳技術(DLT)」に分類されます。その分散型台帳技術(DLT)は、パブリックブロックチェーンの性質の一部を利用した別の種類の技術です。この分散型台帳技術は従来型の情報システムの一部として使われることを想定しており、”統治する組織が存在すること”を前提としています。情報システムの一部として、特定の参加者だけが参加できる閉じたP2Pネットワークで機能します。

この分散型台帳技術の大きな目的は、複数の企業が一つの台帳を共有することです。金融、物流、小売、製造など、あらゆる業界の課題が高度化、複雑化しており、デジタル化による課題解決が進められています。その際、1社の内側に閉じた情報システムでは解決が難しい課題も多く、組織の境界を越えた情報共有を実現する手段が求められていました。この大きな問題を解決する技術として分散型台帳技術が期待されているのです。先に利用事例として挙げた企業ポイントや物流管理などの事例でも、1社に閉じず、複数の組織を横断的に結ぶエコシステムの構築をめざして分散型台帳技術を採用しています。

分散型台帳技術は、既存の情報システム技術に比べれば台帳の信頼性を向上させ、平等な情報共有を実現する技術と考えていいでしょう。電子署名と、複数のコンピュータが相互の動作を検証する仕組み(合意形成の仕組み)を組み合わせることで、「誰が、いつ、どんな情報を台帳に書き込んだのか」を、従来の技術よりも信頼できる形で記録します(※2)。そして、分散型台帳技術は1社だけが集中管理するのではなく、複数の企業が対等な立場で記録し読み出せるように作られています。

ここまでのポイント
  • ・ブロックチェーンと呼ばれる技術は、大きく見ると「パブリックブロックチェーン」と「分散型台帳技術(DLT)」に分類されます。
  • ・分散型台帳技術は特定の参加者だけが参加できます。
  • ・分散型台帳技術は複数の企業が対等な立場で記録・読み出しができます。
  • ※1
    パブリックブロックチェーンの参加者(ノード)は、原則として検証済みの正常書式のデータのみを真として記録する約束に基づいて動作します。そのため、正常に動作している参加者(ノード)は、誤りのある書式を許容しません。もし一部の参加者がデータを不正に改ざんしたとしても、記録されているハッシュ値の連鎖状態を検証することで直ちに検出することができ、周辺の参加者から承認済みの正常なデータが取寄せられ、自動的に修正されます。
  • ※2
    分散型台帳技術は、信頼のプラットフォームとして設計された技術です。その一方で、2018年10月時点の分散型台帳技術(DLT)には、ビットコインのパブリックブロックチェーンのように何年間も無停止で運用を続け、激しいサイバー攻撃に耐えてきた実績がある訳ではありません。また、そのような使い方を意図した技術という訳でもありません。パブリックブロックチェーンと分散型台帳技術は違うものです。
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公開日:2019年3月29日

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