ページの本文へ

ブロックチェーンと分散型台帳技術・Chapter4:金融分野では実証実験が多数行われる|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

信頼のプラットフォームとしてビジネスを変えるブロックチェーンと分散型台帳技術

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 前編
  • 中編
  • 後編

Chapter4金融分野では実証実験が多数行われる

ブロックチェーン技術の性質の一部を応用した「分散型台帳技術」(Distributed Ledger Technology、DLT)製品の活用が始まりつつあります。これまでも解説したように、分散型台帳技術(多くの場合は「コンソーシアム型ブロックチェーン技術」と同じ技術を指します)の大きな目的は、複数の企業が一つの台帳を共有することです。また、パブリックブロックチェーンに比べて処理能力を追求しやすい点が特徴です(※1)。この分散型台帳技術に早い段階で注目したのは、銀行や証券会社など金融分野の企業でした。

金融機関は最新のITの動向を常に調べています。またビットコインを代表とする仮想通貨は、インターネットで送金できるP2P型の電子的な「お金」として、金融機関からも関心を集めました。ビットコインの技術にヒントを得た分散型台帳技術は、金融機関の各種システムに有効に応用できるとの期待が持たれています。

ただし、2018年秋時点で金融業界における分散型台帳技術の採用が進んでいるとは言えません。ほとんどの取り組みは実証実験の段階にあります。多くの金融機関にとって分散型台帳技術は継続的な調査や研究の対象ではあるものの、技術が発展途上であること、また金融というミッションクリティカルなシステムの要求水準に対して課題が残されていることから、まだ本格的な導入を急ぐ段階ではないようです。

3大メガバンクは早い段階から実証実験を実施

日本の銀行での取り組みとして、2016年にはみずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループと3大メガバンクが参加して、日本の銀行のほとんどが参加する「全銀システム」の送金業務に相当する業務を分散型台帳技術に置き換える実証実験を行いました。この実験ではスループットとして取引1,500件/秒の能力を確認し、「当該領域に対してブロックチェーン技術の適用可能性があるものと考えられる」と報告しています。この実験で利用した技術は、ビットフライヤーが開発したMiyabiです。

2017年には、全国銀行協会(全銀協)が「ブロックチェーン連携プラットフォーム」の実証実験の環境整備に乗り出しています。これは、複数のベンダー、複数の分散型台帳技術(※2)を試せる環境を整備し、複数の銀行が協力した実証実験を実施しやすくするためのプラットフォームです。ここで参加するベンダーはNTTデータ、日立製作所、ビットフライヤー、富士通の4社です。ビットフライヤーは自社のMiyabiをプラットフォームとして提供し、他の企業は主にHyperledger Fabric(※3)という分散型台帳技術を推進しています。

ここまでのポイント
  • ・銀行の送金業務を分散型台帳技術に置き換える実証実験が実施されています。
  • ・そこで使われている分散型台帳技術は、MiyabiやHyperledger Fabricなどがあります。

証券業界は本人確認プラットフォームに応用の方向

日本取引所グループ(JPX)は、金融サービスに欠かせないKYC(本人確認)業務に対して分散型台帳技術を適用する実証実験を実施し、2018年7月に報告書を公開しています。業界の各企業が参加するコンソーシアムに窓口を一本化することを想定して、コンソーシアムに参加する各社で本人確認を実施した結果を、他の企業でも共有できるプラットフォームを作り、効果を確認しました。

日本取引所グループ(JPX)は複数のメーカーや証券会社と協力して分散型台帳技術を応用したKYCシステムの実証実験を実施(JPXワーキング・ペーパー「KYC業務におけるブロックチェーン技術適用実証実験」:2018年7月12日より)

日本取引所グループ(JPX)は複数のメーカーや証券会社と協力して分散型台帳技術を応用したKYCシステムの実証実験を実施
(JPXワーキング・ペーパー「KYC業務におけるブロックチェーン技術適用実証実験」:2018年7月12日より)

利用した分散型台帳技術は、R3 Corda(※4)とHyperledger Fabric v1.0です。この実証実験では、機密性、運用保守性、可用性、性能・拡張性について評価したうえで「導入することで効果が得られる」と結論付けています。

ここまでのポイント
  • ・証券業界では、本人確認の業務に分散型台帳技術を適用するための実証実験を行っており、分散型台帳技術を「導入することで効果が得られる」と結論付けています。

ふくおかFGはポイントサービスに活用

金融分野で実用段階にある数少ない利用事例が、ふくおかフィナンシャルグループ(ふくおかFG)のポイントシステムです。同グループの関連会社であるiBankマーケティングでは、複数の銀行と連携するスマートフォンアプリと地域ポイントサービスを運営しています。

そのバックエンドシステムとして、アクセンチュアが構築したプラットフォーム「ブロックチェーン・ハブ(仮称)」を2018年秋に実稼働させると発表しています。このブロックチェーン・ハブとは、複数の分散型台帳技術(※5)と情報システムとの連携を疎結合(ゆるやかな結びつけ)にすることを狙った技術です。利用する分散型台帳技術としては、当面はHyperledger Fabricを対象とします。

このシステムは、分散型台帳技術を銀行の基幹システム(勘定系)とは独立したポイントサービスに対して適用する試みです。ポイントサービスは、複数の地銀、それに地域の商店街などに密着したサービスをめざしていることから、複数の企業にまたがりポイントを運用する可能性を視野に入れています。この点で、企業コンソーシアム向けの分散型台帳技術を使う意味がある事例だと考えられます。

多くの金融機関、証券会社、証券取引所は分散型台帳技術の実証実験を通して経験を積もうとしています。ふくおかFGのように実稼働に至る事例も出てきました。今後の数年で、金融機関での分散型台帳技術の導入がどのように進むのかがはっきりするでしょう。

次回では、物流など非金融分野について見ていきます。

ここまでのポイント
  • ・金融業界では、ふくおかFGによるポイントサービスの利用事例があります。
  • ・このポイントサービスは、複数の企業にまたがって運用する可能性を視野に入れており、1つの台帳を複数の企業で共有するために分散型台帳技術を使う方向で進んでいます。
  • ※1
    分散型台帳技術の処理能力を高める取り組みには、単位時間あたりのトランザクション処理性能を高めることと、決済確定までにかかる時間の短縮することの両方があります。分散型台帳技術は、パブリックブロックチェーンに比べてこの両方を追求しやすい点が特色です。
  • ※2
    実証実験名では「ブロックチェーン技術」との用語を使っていますが、本解説ではパブリックブロックチェーンとの混乱を避けるために「分散型台帳技術」の用語を用いる形としています。
  • ※3
    Hyperledger Fabricは、IBM、アクセンチュア、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所など情報システム構築に携わる大手企業が推進しているオープンソースの分散型台帳技術です。特にHyperledger Fabric v1.0以降では処理性能を改善したとIBMは説明しています。
  • ※4
    R3 Cordaは、R3という企業が開発する分散型台帳技術「Corda」のことで、数多くの金融機関が参加するプラットフォームです。
  • ※5
    技術の名称は「ブロックチェーン・ハブ(仮称)」ですが、本解説ではパブリックブロックチェーンとの混乱を避けるため「分散型台帳技術」に用語を統一しています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
公開日:2019年3月29日

おすすめ

ページの先頭へ