スマートマニファクチャリングソリューション

“匠の技”をデジタル化して日本のものづくりを強くする方法

連載『スマートマニュファクチャリングの実現』#02

“匠の技”をデジタル化して日本のものづくりを強くする方法

執筆者情報

鍋野 敬一郎
  • 株式会社フロンティアワン 代表取締役
  • IVI パブルシティ委員長
  • エバンジェリスト
同志社大学工学部化学工学科卒業(生化学研究室)、1989年米国総合化学デュポン社(現ダウデュポン社)入社、1998年独ソフトウェアSAP社を経て、2005年にフロンティアワン設立。業務系(組立工場、化学プラントなどの業務知識・経験)、基幹系(ERP/SCMなど)、クラウド(エンタープライズ系:PaaS、SaaSなど)、製造現場システム(MES/MOM/IoTなど)の調査・企画・開発・導入の支援に携わる。一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)のサポート会員であり、IVIのエバンジェリストをつとめる。

はじめに

 前回は「OTとITの融合」について、問題を解決する鍵となるのがMES(製造実行システム)にあることをお話しました。今回は、日本の製造業の強みである“匠の技”を今後どのように継承すればよいのか、さらに日本のものづくりの強みをどのように世界へ展開しつつ競争力を維持すればよいのかについてお話しします。

“匠の技”をデジタル化して
暗黙知を形式知へ変換する

 リーマンショックからようやく立ち直った日本経済ですが、少子高齢化による人手不足は30年前のバブル期を超えたらしく仕事の内容を選ばなければ職を得ることができる状況になっているようです。製造業においても人手不足は深刻な状況となり、自動車やハイテク、機械など産業の決算報告でも過去最高の売上・利益ですが人手不足による納期遅延や人件費高騰による収益の減少が懸念されています。特に製造現場では、技術者不足による影響が顕在化しています。日本のものづくりを支えているのは、『匠』と呼ばれる熟練度の高い技術者のノウハウです。10年、20年の経験と豊富で幅広い知識が“匠の技”の源泉です。『匠』が持つ技術の継承は、生産現場において直接指導による時間と手間をかけるやり方しかありませんでした。しかし、このやり方には限界があります。若手技術者は、『匠』の主観的で曖昧な指導に耐えきれず技術の習得をあきらめて転職や、職種転換してしまうケースが目立っています。海外工場では、言葉や価値観の違いから“匠の技術”の継承がさらに難しくなります。

 こうした状況を打開する試みとして、筆者が所属しているIVIという学術組織では、“匠の技術”継承をIoTやデジタル化で突破口を開くという取り組みが行われています。ここでは、『匠』が持つ暗黙知を最新のセンサーなどを使ってデジタル化して具体的な数値やグラフでノウハウを可視化して形式知にしています。『匠』の気づきは、経験によるものですが、その要因は光や音、振動など複数要因から導かれた結果です。1つの情報が1つの判断につながるのではなく、複数情報から判断するポイントが絞り込まれていくのです。この絞り込みを数値や値で可視化して、若手技術者にもわかりやすく理解できるようにしています。こうしたデジタル化された情報をデータベースに蓄積するとともに、これをタブレットなどで簡単に検索して利用できるような仕組みを作っています。

(参考情報:IVI2016公開シンポジウムSpring資料より、WG211「人と設備の共働工場における働き方の標準化」 https://iv-i.org/docs/doc_160310_s4_4_211.pdf)

(参考動画:アナログからデジタルへの取り組み、匠の技術継承 https://www.youtube.com/watch?v=M61FUZbZrQs)

具体的なユースケース付き
【詳細資料】スマートマニュファクチャリング
カタログ詳細資料ダウンロード

進化し続けるIoTやAI、ビッグデータといったデジタル技術を活用し、工場の製造データ連携や生産技能伝承さらにはアフターサービスの付加価値向上など製造業のパフォーマンス向上をめざす取り組み「スマートマニュファクチャリング」が注目されています。
この資料では具体的なユースケースを交え、日立ソリューションズがご提案するスマートマニュファクチャリングソリューションの詳細を紹介します。

具体的なユースケース付き 【詳細資料】スマートマニュファクチャリング カタログ詳細資料ダウンロード
ダウンロード
NEXT「デジタル化された“匠の技”を収集/活用するシステム」
  1. 1
  2. 2
IoTユースケースをプレゼント
IoTユースケースをプレゼント
資料を貰う

おすすめコンテンツ

“失敗しない、止まらない”IoTプロジェクトの処方箋

なぜほとんどのIoTプロジェクトは途中で止まってしまうのかについて事例をもとに説明します。

データ流通時代の現状:あたりまえの実現が王道

データ利活用の現状と「当たり前」による劇的な改善についてご説明します。

スマートマニュファクチャリングソリューション コンテンツ一覧

関連商品・キーワード