Fan-Life Platformの導入事例
オリックス野球クラブ株式会社様データの収集、一元管理によるファンの「見える化」と、分析に基づいた戦略立案を可能にするためにCRMを導入。
プロ野球「オリックス・バファローズ」の球団経営を行っているオリックス野球クラブ株式会社では、ファンの行動履歴の把握とエンゲージメントの向上によるファン拡大を可能にするシステム構築を検討。クラウドサービスによる「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」を導入しました。

この事例に関するソリューション・商品
導入の背景・従来からの課題
コアファンの「見える化」と、データに基づくPDCAサイクル実現をめざして。

緒方 貴弘 氏
オリックス野球クラブのCRM導入プロジェクトが本格的にスタートしたのは2011年10月。そのきっかけとなったのは、球団のファン構成の特長であり中心でもあるコアファンの行動履歴をほとんど把握できていないことへの問題意識でした。同じ関西地区に阪神という人気チームがある環境の中で新たにファンを拡大していくためには、既存ファンのデータ蓄積とその分析に基づく戦略的なサービスが重要。そうした施策を、PDCAで回していくためのツールが求められていました。
「CRM導入に踏み切るにあたっては、二つの大きな目的がありました。一つは、これまでできていなかったコアファンの『見える化』です。われわれの球団は、主に毎月球場に来てくれている熱心なファン層に支えられているのですが、その人たちの真の姿が見えていませんでした。従来は、来場するたびに手帳にスタンプを押して、それがたまったらプレゼントをしていましたが、この方式ではファンには喜ばれても次のサービスにつながるデータが残らなかったのです。これを変えて、コアファンの行動履歴を把握したかったというのがまず一つ。もう一つの目的は、そうしたコアファンの球団への愛着をさらに高めることによって、その周りの人たちを球場に連れて来てもらえるようにすることでした。これらをシステムというツールを使いながら実現したい。それがCRM導入の主な狙いでした」(緒方氏)。
選定までの経緯
クラウドのコストメリット、システムの柔軟性、サポートの信頼感などが決め手に。
CRMシステムの導入決定後、選定段階では30社以上の製品を比較し、提案を受けたと言います。その中にはスクラッチでシステムを構築するタイプ、パッケージをベースにカスタマイズするタイプ、そして日立ソリューションズと同様にクラウドを利用する提案もありました。
「まず前提としてあったのが、自前のシステムではないだろうという考え方でした。どんなシステムでも、時間が経てば陳腐化するからです。そこにコストをかけて、専用のサーバや人員を確保するという選択は考えていませんでした。その点で、システムではなくサービスを提供するという日立ソリューションズの考え方はうまくマッチしていましたね」(緒方氏)。
もう一点、システムに求められていた特性は柔軟性でした。チケット販売、グッズ販売、飲食販売それぞれにオンライン・オフラインの販売窓口や店舗があり、各々が既存の販売システムを利用していて、新システムはこれらのすべてと連携する必要があったからです。
「新しいシステムでは、スタンプの代わりにポイント制度の導入を考えていました。その場合、ファンがチケットやグッズや飲食物をネットや売店で購入するたびに自動的にポイントが加算されるように、既存の販売システムとCRMシステムが連携しなければなりません。また、現場の販売員の業務フローにも変化が出るため、接客方法やカードの取り扱い方を説明して協力してもらう必要がありました。これらをスムーズに行うためには高い柔軟性を備えたシステムが必要で、この点でも日立ソリューションズのシステムは十分に期待できるものでした。加えて選定への後押しになったのは、稼働までの難関を一緒に乗り越えてくれそうだというサポート体制への信頼感ですね。これも決め手の一つになりました」(緒方氏)。
導入時の取り組み
ファンの間でも大きな話題に。1年間の修正でデータの活用も容易に。
2012年11月、従来システムからのデータ移行も済んでCRMシステムが稼働を開始しました。
また、2013年2月には、外部システムとの連携もスタート。チケットを購入するとポイントがたまるなど、シーズン開幕に向けて新システムの機能を活用した新しいファンサービスが始まりました。
「CRMシステムのスタートとともに球団サイトのインターフェースも一新しましたし、ポイント制度の導入もファンの間で大きな話題になりました。その一方で、稼働開始直後には、トラブルもありましたが、これに対しては急遽スタッフを常駐させて素早くリカバリーしてくれました。機能面でも収集したデータを活用し、簡単にPDCAサイクルを回すには、まだまだ満足いくものではありませんでした。ただそれも、1年間使っていくうちに修正されて、現在は大変使いやすくなっています。選定の段階から信頼はしていましたが、そうしたサポートは本当にありがたかったですね」(緒方氏)。
導入後の効果
想定とは違っていたコアファンの行動履歴。次の戦略につながる貴重なデータに。
CRMシステムの稼働から約1年半。導入後初となる2013年シーズンを通じて使用してみた感想を緒方氏に伺うと、ファンからの反響はおおむね好評だったとのこと。
「やはり、これまで手帳にスタンプを押していたものが、入場ゲートのタブレット端末にカードをかざしてピンポーンに変わったので、カッコイイという印象もあったでしょう。コアファンの皆さんも、違和感なく使ってくれていました。確かに、開幕してすぐのころには、カードをかざす場所が分かりにくいとか迷惑をかけたこともありました。そうしたことも含めてもともと勉強の1年だと思っていましたが、終わってみれば成功の1年だったと言えるでしょう」(緒方氏)。
また、運営側から見た効果については、これまで把握できていなかったさまざまなデータが浮かび上がってきたことだと言います。特に、システム導入の大きな目的であったコアファンの行動履歴は、CRM導入前に想定としていたものとはかなり違っていたようです。
「例えば、ファンクラブ会員のために内外野自由席のフリーパスチケットをつくることは機会損失になってしまうのではないか、という議論も社内にありました。ところが、そうしたクラスの会員の方は、入場料以外の部分でもグッズや飲食を購入したりほかの人を連れて来てくれたりと、大変な貢献をしてくれていることがデータで分かったのです。こうした『見える化』は、次の戦略立案につながりますし、仮説に対して検証もできるようになります。今後についても、社内のみんなが共通認識を持ってより深い議論ができるようになりました。それは、本当によかったところですね」(緒方氏)。
今後の展望
今後はソーシャルメディアとの連携も。 日立ソリューションズには継続的なチャレンジを要望。
「もちろん、データが見えたといっても1年だけのもので、まだまだ不足しています。マーケティングの分母としても少な過ぎるし、これはコツコツと蓄積していくしかありません。そのうえで今後やりたいことは、ソーシャルメディアとの連携ですね。ファンのエンゲージメントをより高めることで新たに興味を持ってくれる層を呼び起こしていくには、ファンの間に情報を拡散するためのツールが必要になってくるので、それはCRMシステムだけでは満足とは言えません。そのツールがフェイスブックなのか、ラインなのか、ツィッターなのかはまだ分かりませんが、ファンがファンを増やしていくというサイクルを確立するために、ソーシャルメディアとの連携はぜひやりたいと思っています」(緒方氏)。
現在ログインしているのは、ほぼファンクラブの担当者に限定されているとのこと。今後はグッズや飲食の担当者にも見てもらうようにすることで社内の共通言語にしていきたいと語る緒方氏に、今後の日立ソリューションズへの要望を伺うと。
「クラウドを活用したいいシステムだと思っていますが、どんなにいいシステムでも陳腐化は避けられないので、新しい機能を追加するなど付加価値の向上は継続してやっていってもらいたいですね。そうすることで、このシステムが他球団や違う分野にも使われるように広めていって欲しいというのが最大の要望です。それによって、われわれにもメリットが出てくると考えているので。あとは、100点で満足するのではなく、プラスアルファの面白みという部分に投資していくのも必要だと思っています。例えば、ブラウザに限らずアプリとの連携など。われわれも一緒にチャレンジしたいという気持ちはあるので、日立ソリューションズにも積極的に取り組んでいってもらいたいです」(緒方氏)。
オリックス野球クラブ株式会社
オリックス野球クラブ株式会社は、2004年に発足したプロ野球「オリックス・バファローズ」の球団経営会社。2014年シーズンからは、前身となる阪急・近鉄・オリックス球団の伝統を受け継ぎつつ選手とファンが「さらに、ひとつになろう」と、「Bs sprits(ビーズスピリッツ)」というムーブメントを展開しています。
本社所在地 | 大阪府大阪市西区千代崎3-北2-30 | ![]() |
---|---|---|
設立年 | 1988年 | |
事業内容 | プロ野球球団経営 | |
URL | http://www.buffaloes.co.jp/ |
この事例に関するソリューション・商品
導入事例ダウンロード
本事例の内容は2014年3月28日公開当時のものです。
最終更新日:2014年3月28日