スマートマニファクチャリングソリューション

PoCの無限ループから抜け出して成功するIoTプロジェクトの進め方

連載『“失敗しない、止まらない”IoTプロジェクトの処方箋』#02

めざすべきゴール、目先の成功より困難なチェレンジ

 先行する欧米企業などの事例を参考にしたIoTプロジェクトは、多くの日本企業が取り組んでいてその内容は欧米企業の同等かそれ以上のできだと思います。しかし、こうしたPoCを何度も繰り返しながらその先へ進めない企業が多く居るのも現実です。IoTやインダストリー4.0は日本で生まれた考え方では無いため、どうしても『めざすべきゴール』が漠然としたものになります。具体的な目的やイメージが無いため、次に何をすればよいのか見失っています。“IoTの活用を学ぶPoCプロジェクト”と、“IoTをビジネス化するプロジェクト”ではめざすべきゴールとメンバーの覚悟が全然違います。

例えてみると、トップが『山に登ろう!』と言い出すのに似ているのかもしれません。ポイントは、『どの山に登るのか?』、を明確にすることです。トップがイメージする山が、高雄山や富士山ならば気軽にハイキング気分で構いませんが、エベレストやマッターホルンといった世界最高峰クラスならば企業として本格的な登山部を設立して真剣にチャレンジしなければならないでしょう。前述した通り、企業の本気度によって難易度がまるで違います。PoCから抜け出すためには、トップとめざすべきゴールを明確にする必要があると思います。

 日本語の特徴は、目的語が無くてもおおむね意図が伝わることです。逆に、目的語が違っているとまったく異なる結果となります。目的語をわざと無くすことで、目的を曖昧なままにして失敗したくないと考えたのかもしれませんが、IoTプロジェクトのPoCを終わりにしたいと考えるならばゴールを決めなければなりません。PoCの成果を上手く廻せば、何かよい製品やサービスが作れるほどビジネスは簡単ではないように思います。IoTプロジェクトで多いのは「見える化」に取り組むプロジェクトなのですが、設備やモノや人の情報が「見える化」できて詳細なデータが収集できるようになるところまでは誰でもできます。最大の課題は、「見える化」の先に何をめざすべきかにあります。実は多くの企業がその答えを持っていません。「見える化」したデータを現場のカイゼンに使うケースは多いのですが、その取り組みを深掘りしたり他部門へ横展開したりはできても、お客さま向けサービスとして新製品/サービス開発や新規ビジネスに取り組むといったレベルの取り組みは苦手です。

その理由として、IoTに会社の存亡をかけて取り組んでいるわけではないこと、そして2,3年程度の短期的な目的はあっても、5年先、10年先といった中長期的な具体的なゴール設定をしていないことがあげられます。どのような開発プロジェクトでも、具体的な目的がなければ実現などできないと思います。本気度が足りないのではないかと思います。

まとめ

 今回は、『PoCの無限ループ』に陥りかけている方々やこれからPoCをはじめようと考えている方へのお話でした。

シンプルにまとめると、『①とりあえずPoCをやってみる、②5年先、10年先の具体的なゴールを決める、③結果が出るまでプロジェクトを進める』この3つです。①の「とりあえずPoCをやってみる」ところは誰でもできます。多くの企業は、このPoCに「見える化」を置きます。その理由は、「見える化」はほぼ失敗しないからです。逆に言えば、誰でもできてリスクが無く従来の弱点を見つけやすくなるというメリットがあります。デメリットは、誰でもできるので他社との差別化にはならないことです。ハードルは②の「5年先、10年先の具体的なゴールを決める」ところです。これが曖昧なままだと結果は出ません。しかし、中長期プロジェクトの計画策定は難しく会社全体が支えるレベルで本気でプロジェクトに取り組まないとゴールにはたどり着けないでしょう。

思い出して欲しいのは、ドイツの「インダストリー4.0」や中国の「中国製造2025」のゴール設定が2025年から2030年になっていることです。最初から中長期プロジェクトとして設定されています。さて、次回は『成功につながるPoCの取り組み方』ついてご紹介したいと思います。

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