スマートマニファクチャリングソリューション

PoCの無限ループから抜け出して成功するIoTプロジェクトの進め方

連載『“失敗しない、止まらない”IoTプロジェクトの処方箋』#02

“失敗しない、止まらない”IoTプロジェクトの処方箋

執筆者情報

鍋野 敬一郎
  • 株式会社フロンティアワン 代表取締役
  • IVI パブルシティ委員長
  • エバンジェリスト
同志社大学工学部化学工学科卒業(生化学研究室)、1989年米国総合化学デュポン社(現ダウデュポン社)入社、1998年独ソフトウェアSAP社を経て、2005年にフロンティアワン設立。業務系(組立工場、化学プラントなどの業務知識・経験)、基幹系(ERP/SCMなど)、クラウド(エンタープライズ系:PaaS、SaaSなど)、製造現場システム(MES/MOM/IoTなど)の調査・企画・開発・導入の支援に携わる。一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)のサポート会員であり、IVIのエバンジェリストをつとめる。

はじめに

 IoTプロジェクトのPoC(実証実験)はすでにいくつか行ったという話を良く聞きます。しかし、IoT活用に成功しているという話はあまり聞きません。多くの企業が、「PoCは行っているが、まだ実用化するのは先です」 と言います。

「いつごろを目処に実用化するのか?」と聞くと、決まって「まだ具体的な計画はありません」と言う答えが帰ってきます。結局、当面IoTのPoCは継続されることとなります。トップ肝入のIoTプロジェクトは、具体的な成果や期限を伴わない曖昧でヌルい活動となり、IoTプロジェクトメンバーのモチベーションは次第に低くなっていきます。

『失敗ではないが成功とは言えない』、そんなIoTプロジェクトが巷にはあふれています。

IoTに成功する企業と失敗する企業は何が違うのか!?

 IoTに成功している企業として、前回はコマツのケースを紹介しました。しかし、コマツと同じことを同業他社が行っても世間の評価は恐らく成功とは言わないでしょう。これが、米国建設機械大手キャタピラー社や国内大手日立建機、コベルコ建機などの悩みです。もちろんIoT技術を利用して、建設機械の操作性を向上したり作業支援サービスを提供したりすることは同様に求められると思いますが、同じサービスを後追いで提供してもIoTに成功した企業とは呼ばれないのです。こうしたことを踏まえて、IoTに成功する企業と失敗する企業の違いはどこにあるのか考えてみます。

PoCとビジネスの違いは、言うまでもなく企業における本気度が違うことです。先行事例を参考として実施したPoCは、成功した事例を超えることはありません。冒頭で述べた『失敗ではないが成功とは言えない』ということになります。仮に“IoTの活用を学ぶPoCプロジェクト”が失敗しても会社へのダメージは小さく、せいぜいプロジェクトチームが解散する程度です。しかし、“IoTをビジネス化するプロジェクト”の失敗は、会社の業績に大きな影響を与えることになります。

社長が気軽に「IoTをやってみろ」と言う訳はなく、社長が真顔で「IoTビジネスでどれくらい稼げるのかすぐに事業計画を出せ!」と言われるPoCでなければ、『PoCの無限ループ』が繰り返されるか、あるいはIoTプロジェクトが自然消滅することでしょう。

 ちなみに、建機大手のキャタピラー社は、PLM関連ソフトウェア大手PTC社と組んでIoTとAR(拡張現実)を組み合わせたサービスを提供しています。コマツがタブレットやドローンを使った作業支援を行っているのと比べると、キャタピラー社はオペレーションを行う作業者をウェアラブル端末でオペレーションをガイドして使い易さを強く訴求しています。実はコマツと同じ取り組みも行っていますが、それを強く訴求してはいません。つまりキャタピラー社は、先行事例の真似では無いとひと目でわかるサービスを提供することで後追いのイメージを払拭するとともに独自の強みを誰にでもわかりやすく訴求することに努めているのです。

(参考動画: https://www.youtube.com/watch?v=VGtCQWROytw)

 『PoCの無限ループ』から抜け出すためには、先行事例から学ぶPoCを行ったあとにこれとは異なるサービスを考えて先行事例を超える目標を見せる必要があると思います。キャタピラー社の強みは、建設機械トップメーカーとしての製品開発力とその膨大なデータをわかりやすく見せてオペレーション支援サービスを提供することです。タブレットのタッチ操作だと操縦桿から手を離すことになるため、その煩雑さを省いてよりわかりやすく作業をガイドするウェアラブル端末を使ったガイドサービスの開発を差別化ポイントとしています。このように、PoCから抜け出すためにはPoCには無い要素や特徴を目的に組み込む必要があります。お客さま目線を強く意識したサービス提供を目的としていることも、コマツの真似とは違うという訴求になります。

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