顔認証とは

顔認証とは、生体認証技術の一つです。カメラで撮影した顔の画像から、目・鼻・口などの特徴的な位置や形状の抽出により個人を識別し、あらかじめ登録された顔のデータと照合することで、非接触かつスピーディーに個人を識別する認証方法です。近年は認証時のセキュリティ強化や業務効率化などを目的に、さまざまな分野で活用が広がっています。

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顔認証が必要とされる背景

顔認証が必要とされる背景としては、以下の理由が挙げられます。

セキュリティ脅威の深刻化
近年、デジタル化の進展に伴い、業務システム上に保存している企業の機密情報や個人情報の量が増加しており、これらの情報を狙ったサイバー攻撃や不正アクセスが深刻化しています。
従来のID・パスワード方式やICカードのみの認証ではなりすましのリスクが高いため、確実な本人確認の手段となる生体認証の必要性が高まっています。
多要素認証の必須化
総務省や金融庁をはじめ、さまざまな省庁・団体によるガイドラインで「多要素認証」の導入が必須化される動きが加速しています。顔認証は、紛失・忘失のリスクもなく認証のための追加のハードウェアが不要な場合も多いことから、導入が容易な認証方法として注目されています。
<例>

・総務省
「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月版)」別紙2

<一部抜粋>
情報システムが正規の利用者かどうかを判断する認証手段のうち、二つ以上を併用する認証(多要素認証)を利用しなければならない。また、業務毎に専用端末を設置することが望ましい。

・金融庁
「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」2.3.1. 認証・アクセス管理

<一部抜粋>
システムや情報の重要度に応じて、認証要件(多要素認証、リスクベース認証等、認証時におけるリスク低減策等)を決定すること。特に、重要なシステムへのリモートアクセスには、多要素認証を使用すること。

認証場面の多様化
物理的なセキュリティや個人認証、情報システムへのログインだけでなく、イベント会場の本人確認や決済機能との連携など、確実な本人確認が求められる場面が増加しています。顔認証は、スマートフォンや身近なデバイスで対応することが可能になったため、より手軽な生体認証の方法として活用されています。

顔認証システムの仕組み

顔認証システムは、AI(人工知能)の活用により、近年その精度と認証速度が飛躍的に向上し、高いセキュリティと利便性を両立する認証技術としてさまざまな分野で活用されています。その仕組みは、以下の3つのステップで構成されます。

  1. 画像データから顔を検出

    カメラで撮影された画像や映像から、顔の位置や顔以外の背景を区別し、認証に必要な顔部分を検出します。

  2. 個人を識別する 特徴を抽出

    検出された顔領域から、個人を識別するための固有の生体情報の特徴を抽出します。

    • 特徴の抽出: 目、鼻、口などの位置関係や形状、顔全体の輪郭、皮膚の凹凸など、個人差が大きい箇所を詳細に分析します。
    • 特徴量への変換: 抽出された特徴は、個人を特定するための「特徴量」と呼ばれるデータに変換されます。
      特徴量は、元の顔画像を復元できないよう数値化・暗号化された「生体情報テンプレート」として扱われ、高いセキュリティを保ちながらデータベースに登録・利用されます。
  3. 顔の特徴をもとに照合し、認証

    認証時に抽出された特徴量と、データベースに事前に登録された特徴量を比較照合します。

    • 照合(スコアリング): 2つの特徴量がどれだけ似ているかを類似度として数値化(スコアリング)します。
    • 認証の判断: この類似度スコアが、あらかじめ設定された「しきい値(基準値)」を超えた場合に、「本人である」と認証され、下回った場合は「別人である」と判断されます。

顔認証の特長

紛失・盗難リスクがない高セキュリティな認証
顔認証は、個人固有の生体情報(バイオメトリクス)にもとづいた認証であるため、パスワードのように「忘れる」ことも、ICカードや鍵のように「紛失・盗難」されることもありません。顔認証データは復元不可能な特徴量(テンプレート)として処理・保存されるため、高い情報セキュリティを保ちます。
外付け機器不要でリモート環境に有効
追加の認証デバイスを必要としないため、モバイルPCやノート端末での利用に適しています。リモートワークや出張先など、物理的なトークンやICカードを持ち歩く負担をなくし、内蔵カメラだけで安全な認証を実現します。
高い柔軟性で既存環境への導入が容易
顔認証システムは、PC・タブレット・スマートフォンなど、既存のデバイスを認証に活用可能。追加の専用リーダーを必要としないため、導入コストの削減につながります。
システム導入のハードルを下げ、さまざまな利用シーンで生体認証の利便性を提供します。

顔認証の活用例

高いセキュリティと利便性を両立する顔認証技術は、オフィスから日常生活まで多岐にわたる場面で活用が拡大しています。

-入退室管理
オフィスビル、マンション、工場、データセンターなどの重要施設において、部外者の侵入を確実に防ぎ、なりすましによる不正入室を阻止。鍵やカードに代わる強固なセキュリティを実現します。
-スマートフォン・PC、システムへのログイン
端末や社内システムへのアクセスに顔認証を用いることで、ログイン操作の手間(パスワード入力)を簡略化。ID・パスワードの紛失・盗難や総当たり攻撃のリスク、ICカードの紛失リスクがなくなり、情報漏洩のリスクを低減します。
-決済
店舗や自動販売機、公共交通機関などでのキャッシュレス・ウォレットレス決済に顔認証を活用します。
利用者はスマートフォンや財布を持たずに買い物やサービス利用ができ、手ぶらで行動できます。
また、決済時間が短縮されるため、レジや受付の混雑緩和につながります。
ポイントカードや会員情報との連携時にも確実な本人確認が可能。第三者による不正な利用を防止します。
-勤怠管理・作業時間管理
出勤・退勤時の打刻や、特定作業の開始・終了時刻の記録に顔認証を活用し、正確な労務管理を支援します。
「なりすまし(代理打刻)」を防止し、正確な在席・労働時間の管理を実現します。
-受付業務
病院、ホテル、イベント会場、行政窓口など、本人確認が必要な場面での受付業務に活用します。
事前に登録された顔データと照合することで、写真付き身分証明書を目視で確認する手間を削減します。

顔認証システムを導入・利用する際の主な注意点

顔認証システムの運用効果を高め、安全に活用するためには、以下の点に留意し、適切な対策を講じる必要があります。

環境・物理的な要因による認証精度の変動
顔認証の精度は非常に高い水準にありますが、利用時の環境条件や顔の状態に影響を受ける可能性があります。
課題 具体的なリスク 対策の方向性
照明条件 逆光や暗所、強い光など、照明の明るさや向きによって認証精度が一時的に低下する場合がある。 登録時に、正面だけでなくやや左右や異なる照明条件で顔情報を取得することで、変動環境下でも認証精度を維持する。
顔の状態変化 髪型や化粧の大きな変化、時間の経過による顔の変化(老化など)によって、登録時とのデータ差異が生じる場合がある。 定期的な再登録(アップデート)を推奨する運用ルールを設ける。
一時的な遮蔽物 マスクやサングラスの着用、または大きなメガネなどによって、認証に必要な特徴点が遮蔽され認証が困難になる場合がある。 マスク着用でも認証可能なシステムを選定するか、認証時は一時的にマスクを外す運用を検討する。
生体情報データの厳格な管理とプライバシー保護
顔認証データは、個人を識別するために抽出された特徴量を含む「生体情報」であり、個人情報保護法の対象となる重要なデータです。万が一漏洩した場合の影響が甚大であるため、その取り扱いには極めて慎重な対応が求められます。
課題 具体的なリスク 対策の方向性
生体情報の漏洩 特徴量が漏洩した場合、ほかの認証システムへ不正利用されるリスクや、生体情報そのものが恒久的に悪用されるリスクがある。 特徴量を元の顔画像に復元できない方式で暗号化・保存する。データ保存場所を隔離し、厳重なアクセス制御を設ける。
個人情報の取り扱い 顔画像などの収集・利用は、個人情報保護法にもとづいた適切な運用が求められる。 利用目的を明確化し、データの収集・利用時に本人の同意を必ず得る(オプトイン)。データの保管期限や廃棄ルールを厳格に定める。
内部アクセス制限 組織内での顔画像・生体データの閲覧・利用範囲を制限する必要がある。 権限のない第三者によるデータ閲覧・持ち出しをシステム的に制御し、監査ログを徹底的に記録する。
導入・運用にかかる初期コストと手間
顔認証システム導入の費用は、単にソフトウェアやハードウェアの購入費だけにとどまらないことに注意が必要です。
課題 具体的な費用・手間 対策の方向性
初期導入費用 ライセンス費用や、認証機器がない場合の機器調達費用が発生する。 PCやタブレットの既存カメラを利用できるシステム(ソフトウェアベース)を選定し、初期ハードウェアコストを抑える。
セキュリティ強化費用 生体データ保護のため、専用サーバーの設置や、強固なネットワークセキュリティ対策(ファイアウォール、VPNなど)が別途必要となる場合がある。 クラウドサービスを利用し、セキュリティ対策をベンダーに委ねることで自社側の設備投資と管理工数を削減する。
利用者への周知 新しい認証方法の導入にあたり、システムへの顔データ登録作業や、利用ルールの周知徹底(照明や姿勢の注意点など)に工数がかかる。 登録手順の簡略化が図られたシステムを選定し、利用者向けのマニュアルを整備する。

顔認証システムを選ぶ際のポイント

顔認証システムを選定する際は、単に「認証できる」だけでなく、利用環境、セキュリティ要件、そして将来的な拡張性を考慮することが不可欠です。

  1. 利用環境と利用状況に対応した「認証の確実性」

    システム導入後のトラブルを避けるため、実際の利用シーンで安定した認証精度を発揮できるかの確認が重要です。

    • 高精度な認証技術の採用
      誤認識が極めて少ないシステムを選びましょう。
      認証速度(レスポンスタイム)が速いかどうかも、利用者のストレス軽減に直結します。
      また、なりすまし対策機能があることも重要です。
    • 環境変化への耐性
      設置場所の照明条件(逆光、暗所)や、気温・湿度の変動、または経年による顔の変化などに、システムがどれだけ自動で対応できるかを確認します。
    • 遮蔽物への対応
      認証時にマスクや帽子の着用が避けられない場合は、それを着用した状態での認証可否、およびその際の認証精度(本人拒否率など)を確認しましょう。
  2. 生体情報データを守る「セキュリティと管理体制」

    顔認証データは不可逆な個人情報であるため、データが「いつ、どこで、どのように」管理・保護されるかを確認することが重要です。

    • データ保存形式の確認
      顔認証データは、元の顔画像に戻せない「特徴量(テンプレート)」として保存され、強固に暗号化されているかを確認します。
    • 保存場所と管理方法
      データをクラウドで管理する場合と、オンプレミスで自社管理する場合のメリット・デメリットを比較し、自社のセキュリティポリシーに合った形態を選びましょう。
  3. 既存システムとの「連携・拡張性」

    利用している業務システムとの連携についても確認が必要です。

    • 連携インターフェースの豊富さ
      既存の入退室管理、勤怠管理、顧客管理(CRM)システムなどと連携するための、APIやSDK(ソフトウェア開発キット)の提供状況を確認します。
    • 柔軟な運用形態への対応
      認証機器が固定型(特定の場所でのみ認証)か、モバイル型(スマートフォン・PC内蔵カメラなどでの持ち運び認証)かを確認し、リモートワークや複数拠点での利用に適しているかを検討しましょう。

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※本ページの一部は、生成AIにより生成されたコンテンツを使用しています。

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