VUCA時代のタイ工場で「原価が武器」になる瞬間
~ERPだけでは届かない“改善につながる原価”を、どう作るか~

※VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)が高まった、予測困難な経営環境を指します。

竹下 順也 Junya Takeshita

Vice President, Client Delivery
Hitachi Solutions (Thailand) Ltd.

1996年に日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現 株式会社日立ソリューションズ)へ入社。製造業向け基幹業務システム開発を経て、2002年より SAP ERP を中心としたエンタープライズシステム導入プロジェクトに従事。プロジェクトマネージャーとして多数の大規模ERP導入を成功に導く。 その後、ERPビジネスの拡大に向けたマーケティング活動や、新規ソリューションの企画・立ち上げを推進。SAP および Microsoft Dynamics 365 をはじめとするERPソリューション分野において豊富な経験を有する。
2024年よりHitachi Solutions (Thailand) Ltd. にてVice President, Client Deliveryを務め、タイおよびAPAC地域の日系企業を中心にERPソリューションの提供をリードしている。

Part.1 いまタイ工場で起きていること:競争のステージが変わった

タイの製造業は、依然として国の経済を支える中核です。世界銀行の統計では、タイの製造業(製造付加価値)のGDP比は最新年2025年で約24%に達しており、製造業の強さが国の競争力に直結していることがわかります。 一方で、工場運営を取り巻く環境は「静かな変化」ではなく「構造変化」に入りました。代表例が、電気自動車 EV(BEV)です。JETROの分析では、タイのBEV新規登録台数は2023年に前年比7.8倍(約7.6万台)へ急増し、2024年上半期も増加基調が続いています。

さらに、デジタル基盤面でも変化が見えます。BOI(タイの投資委員会)によるデータセンター投資が進み、報道では2026年初の会合で総額960億バーツ規模のデータセンター案件が承認されたとされています。これはクラウド/AI/IoTを前提にした産業構造へ向かっているシグナルです。 くわえて、EEC(東部経済回廊)では、法人税免除や輸入税免除などの優遇が示され、投資(自動化・高度化)が進みやすい環境が整っています。

結論として、タイ工場は「低コスト生産拠点」から、環境変化に追随しながら利益をつくる拠点へと役割が高度化しています。

Part.2 ところが現実はこうだ:「原価が見えない」工場が多い

現地の製造業の方々から聞いた話が象徴的です。

「現場でも自分たちの原価の実態がわからず、本社報告のたびに情報を集めて調整している。」

これは、現場が怠けているわけでも、経理が弱いわけでもありません。原価を“使える形”で捉える仕組みが無いと、どうしても起きる構造問題です。原価が見えないと、工場でよくある「改善の問い」が答えられません。

  • どの工程の不良が、原価を押し上げたのか
  • どの製品ミックスが、固定費吸収を悪化させたのか
  • どのラインの段取りが、工数差異を生んだのか
  • そのほか、原価差異の原因がどこにあるのか

そして次に起きるのは、工場が複数国に跨るときの“経営の迷い”です。日本から見て「どこで何を作ると安いか」がわからない。為替・物流・調達条件が変わる中で、最適生産地の判断ができない。EV化が進むほど部品構成も変わり、調達も変わります。

つまり「比較できる原価」がないと、グローバル最適は絵に描いた餅になりやすい。

Part.3 なぜ標準原価がズレるのか:VUCAで“前提”が崩れている

かつて、標準原価は強力な武器でした。

「一度決めた標準が、しばらく有効である」ことが多かったからです。しかし今は違います。

  • 原材料価格の変動
  • 為替の急変
  • サプライチェーン分断・再編
  • 技術進化(EV、電子化、工程変更)

こうした要因が同時多発的に起きる、VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の環境では、標準原価を固定前提にすると、実際原価との乖離が大きくなりやすい。

ここで重要な視点転換があります。乖離は“問題”ではなく、変化を検知する“シグナル”になり得る。

本来、原価差異は次の問いに答えるための“センサー”です。

  • 何が起きたのか(材料?歩留まり?工数?稼働?)
  • どこで起きたのか(工程?ライン?製品?拠点?)
  • 何を打つべきか(対策はどこに効くか)

つまり、VUCA時代ほど、差異を早く・正しく・改善単位で捉える仕組みが重要になります。

Part.4 ではERPを入れれば解決するのか?――ここに落とし穴がある

もちろん、ERPは不可欠です。

購買・在庫・生産・出荷・会計を統合し、定義統一と統制を作る基盤だからです。

しかし、現地の製造業の方から語られた「現場で原価が見えない」問題は、ERP単体で解決しにくいことがあります。主な理由は3つです。

まず、ERPの標準原価については、標準原価の原則に沿うための制約が整理されていることが多く、会計整合性には有効ですが、工程・ロット・日次の改善単位へ落とすには追加設計が必要になりがちです。 また、コストセンターや指図、ビジネスプロセス、オーダーなどに配賦できるような仕組みを持つ場合、これらは強力である反面、設計・運用・入力が重くなりやすいという側面があります。 この結果、工場現場では、ERPが複雑/入力が重いという理由で、紙・Excel・現場システムへ回帰し、ERPと現場のギャップが残る、という現象が指摘されています。

つまり、ERPは「統合基盤」として必須でありながら、“改善に使える原価”の実装には別の工夫が要ることがあります。

*ERP:Enterprise Resource Planning

Part.5 現実解:ERP+PCM併存という設計思想

ここで登場するのが「ERP+PCM併存」という考え方です。

  • ERP:購買・在庫・生産・会計の統合/統制(全社の“1つの真実”)
  • PCM(原価管理):改善に必要な粒度で原価PDCA(差異→原因→対策→効果)

これにより、ERPを“経営の背骨”として生かしつつ、改善活動に必要な原価の粒度とスピードを別レイヤで担保できます。

*PCM:Product Cost Management

Part.6 mcframe PCM が「解決策の一つ」になり得る理由

この併存アプローチの中で、原価管理レイヤの有力な選択肢の一つが mcframe 7 PCM です。

mcframeの製品ページでは、原価管理PDCA、4つの原価計算、配賦機能、原価分析・利益分析、さらに原価管理モジュール単独導入(既存システム併存)などが明記されています。

Web記事として重要なので、ポイントを“読者目線”で言い換えるとこうなります。

  1. 「差異を出して終わり」ではなく、PDCAに載せる設計

    mcframe PCMは、原価管理のPDCAを支えることを前面に出しています。これが意味するのは、差異が「説明資料」ではなく、改善の起点になる設計だということです。

  2. 改善に必要な粒度へ落としやすい(=現場が動ける)

    工程・部門・品群・品目など、改善テーマに落ちる単位で原価を見て、原因と対策へつなげられる。「現場でも原価がわからない」「本社報告が寄せ集め」という状態から脱するには、ここが肝になります。

  3. 配賦の柔軟性が“納得感”を作る

    間接費がどんぶりだと、現場は数字を信じません。mcframe PCMは多彩な配賦(部門間、品目別など)を特徴として掲げており、改善に使える“腹落ちする原価”を作りやすい。

  4. ERPを捨てずに「原価だけ」強化できる(併存が現実的)

    原価管理単独導入や外部連携を想定している点は、ERP刷新が大きくなりがちな企業にとって現実解になり得ます。

Part.7 まとめ:原価は“結果”ではなく“経営センサー”へ

VUCAの時代、原価はもはや「締め後に見る結果」ではありません。

  • 変化を検知し
  • 原因を特定し
  • 対策を選び
  • 効果を確認する

ための 経営センサー です。

そして、タイのように市場変化が大きく、グローバル競争が激しい環境では、原価を早く・正しく・改善単位で捉えられるかが、競争力そのものになります。 そのためのアプローチとして、ERP=統合基盤 と PCM=改善に効く原価 を併存させ、mcframe PCMのような原価管理レイヤで「使われる原価」を実装することは、十分に現実的な選択肢になり得ます。

日立ソリューションズグループが提供する価値

原価を“使える状態”にするためには、ERP(統合・統制)、PCM(改善に使える粒度)、PLM/IoT/BI(データ連携と可視化)を一体として設計することが不可欠です。日立ソリューションズは、

  • mcframe 9年連続No.1パートナー(2026年10月1日現在)
  • 専門人材と導入方法論
  • 周辺システム連携の実績

を背景に、 「現場・本社・経営が同じ原価で動ける基盤」を実装します。

*PLM:Product Lifecycle Management

最後に…VUCAの時代において競争力の差は、変化をどれだけ早く捉え、行動につなげられるかで決まります。その中心にあるのが原価です。

「見える」だけでなく「使える」原価へ日立ソリューションズは、その変革を実際に現場で機能する形で実装するパートナーです。

mcframe 7、mcframe 7 SCM、mcframe 7 PCM、mcframe PLM や周辺システム連携も、APAC地域を中心に幅広く対応しております。

グローバルSCMやERP、会計基盤の整備をご検討の際はお気軽にご相談ください。

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