サブスクリプションの請求業務とは?主なステップと課題解決のため業務を効率化する方法を解説
継続的な課金の仕組みを通じて毎月安定的な収益を確保できるサブスクリプションビジネスにおいて、請求業務は企業が収益を得るための重要な業務です。長期的な契約関係を前提としたサブスクリプションビジネスでの請求業務は、事業の中心であると同時に、ミスなく正確な作業が求められる基本的な業務でもあります。
本記事では、サブスクリプションビジネスに欠かせない請求業務の流れやよくある課題、さらに課題解決に有効となる業務効率化の方法についても紹介します。
1. サブスクリプションビジネスにおける請求業務とは?
サブスクリプションビジネスの請求業務では、一般的な請求業務と比べて異なる点が多くあります。はじめに、サブスクリプションビジネスにおける請求の流れと、その重要性について紹介します。
サブスクリプション請求業務の定義
そもそも請求業務とは、企業が提供した商品やサービスに対する対価を取引先から回収する一連の手続きのことです。企業活動において必須の業務であり、正確な対応が求められます。
業務内容は、請求書の発行だけではありません。請求対象の確認から請求金額の確定、債権計上、請求書の作成、作成した請求書の送付、支払いの確認、未払い発生時の催促まで多岐にわたります。なお、請求書には、契約内容にもとづき、取引内容、金額、支払期日などを正確に記載する必要があります。
サブスクリプションビジネスにおける請求業務には、契約が継続する限り、毎月・毎年など高い頻度で請求業務が繰り返されるという特徴があります。この点が、いわゆる売り切り型の請求との大きな違いといえます。また、契約期間中、契約の変更や解約、価格改定を行うときに、システムや請求書へのタイムリーな反映が必要となる点も、サブスクリプションの請求業務の特徴です。
サブスクリプション請求業務の重要性
契約を締結し商品やサービスを利用してもらったとしても、最終的に請求業務を適切に行わなければ、企業は収益を確保できません。そのため請求業務は、企業の財務健全性を保つために重要な業務といえるでしょう。
特にサブスクリプションビジネスにおいては、顧客との長期的な関係性維持が重要となります。正確で迅速な請求処理は当然のものとして期待され、万が一請求ミスが発生すれば信頼を損なうことにもなりかねません。
2. サブスクリプションビジネスの請求業務の主なステップ
サブスクリプションビジネスの請求プロセスは、以下の流れで進みます。
請求対象の確認
サブスクリプションにおいては、契約は基本的に自動更新となります。顧客の利用プランや契約内容に応じて料金の請求タイミングが異なるため、まずは当月の請求でどの顧客に料金の支払いが発生するかを特定し、対象をリスト化する必要があります。
また、解約や契約変更があった場合は、最終請求金額や解約手数料などの特別な精算が必要となるケースもあります。提供するサービスの契約内容や規約、また顧客のサービス更新状況をしっかり把握し、請求対象を適切に特定しなければなりません。
請求金額の確定
顧客に提供した商品やサービスの内容をもとに、正確な請求金額を計算します。サブスクリプションビジネスにおいては、定額金額とそのほかの課金方法を組み合わせて請求金額を算出するのが一般的です。
従量課金の場合は特に、利用実績を正確に把握し、適切に請求金額を計算する必要があります。利用実績データの取得漏れや不正確なデータ入力などは請求金額の計算ミスにつながるため、必ず確認を行います。
債権計上
会計システムを利用している場合は、請求金額をシステムに登録し、債権として計上します。
請求書発行
契約内容、金額、支払期日などの詳細を含む請求書を発行します。その後、発行日や支払条件、連絡先情報など、必要な項目が漏れなく記載されているかを確認します。
なお、サブスクリプションビジネスの請求業務では、契約変更や解約に伴う請求の調整も必要です。具体的には、契約プランの変更や解約時に最終請求金額の精算が必要となる場合があり、これに対応できる請求書フォーマットを用意しておくと、項目の記載漏れ防止につながります。
請求書の送付
作成した請求書はスケジュールどおりに、顧客へ郵送や電子メールにて送付します。特にBtoBの場合は、顧客側の会計締め日に間に合うように、十分な余裕を持って送付する必要があります。
入金確認
顧客から支払いがあったかどうかを、請求金額と金融機関の入金結果と照合することで確認します。
債権消込
受け取った入金内容をもとに、会計システム上で計上されている債権と照合し、対象の債権を消し込みます。
未収金の催促
支払期日を過ぎても入金が確認できない場合、顧客へ催促の連絡を行います。なお、催促する際には記録を残すことも大切です。また、必要に応じて、請求書の再送や債権回収サービスの利用、法的手段も検討します。
過払い金があった場合は、お客さまに連絡をして返金などの対応を行います。
請求書管理・保管
電子帳簿保存法をはじめとする法令や社内のルールにもとづき、作成した請求書を適切に保管します。紙で発行した請求書であれば、後日監査対応が発生した場合にも迅速に検索できる状態にしておきましょう。
一般的には、ファイリングやシステムの利用などで対応します。また、電子媒体で保存する場合は、電子帳簿保存法で定められた検索要件を満たすシステム環境を用意する必要があります。
3. サブスクリプションビジネスの請求業務でよくある課題
サブスクリプションビジネスの請求業務は、通常の売り切り型の請求とは異なり、継続的に発生するうえに、価格改定や契約変更・解約に伴う請求金額の変動に対応する必要もあります。また近年では、電子帳簿保存法の施行を受け、請求書の電子化が進みつつあるなかで、新たな課題も発生しています。
サブスクリプションビジネスの請求業務における課題として、以下のような負担があげられます。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 多様な契約プランに起因する請求業務の管理負担 | ビジネス競争力の強化と顧客の利便性向上のため、多様な料金プランを提供したいものの、請求業務の負荷が増大している。 |
| 入金管理の煩雑さ | 毎月の請求が発生するため、請求書発行数が膨大になる傾向があり、入金管理が煩雑化する。 |
| 回収業務の負担 | 支払いに応じない顧客への回収業務が頻繁に発生するため、負担がかかる。 |
多様な契約プランに起因する請求業務の管理負担
サブスクリプションビジネスでは、顧客の利便性向上を目的に、多様な契約プランや料金モデルが提供されるケースが多く見られます。こうした提供サービスの多様化や顧客のニーズに合わせたプランの追加・変更は、事業の競争力強化につなげるために欠かせない戦略です。
一方で、柔軟なプランを展開しそれに伴う料金モデルの追加・変更を行えば、請求タイミングや料金計算方法は複雑化します。近年はペーパーレスでの管理が主流になったことで、請求業務の運用にも変更が生じ、正確な請求業務を実施するための仕組みが求められています。
請求タイミングの遅延や請求料金の誤りが発生すると、顧客からのクレームだけではなく、信頼関係を損なうリスクも避けられません。誤請求の規模や頻度によっては、顧客からの訴訟やメディアによる報道により、会社の信頼性が著しく低下することも考えられます。
多様な契約に対応する必要があるサブスクリプションビジネスにおいては特に、請求業務の十分な効率化が必要不可欠です。手作業で行う処理が残っていたり、社内体制が整備されていなければ、請求業務にかかる負荷は高くなります。
入金管理の煩雑さ
サブスクリプションビジネスでは、毎月や毎年などの単位で定期的な請求が発生し、その都度請求処理を繰り返す必要があるため、請求の件数は膨大となります。請求書の電子化が進んでも、契約ごとに異なる支払いスケジュールや決済手段を管理し、入金管理を行う負担は依然として大きいといえます。このように必要な作業がいくつもあるため、契約数が多いほど管理が煩雑になるのも当然です。
サブスクリプション管理システムの導入といった対策をとっていないと、入金管理業務を効率化できず、契約ごとの入金状況の正確な把握に膨大な時間と労力がかかります。
回収業務の負担
顧客が支払いに応じない場合、回収業務が発生します。個別に架電やメールなどで入金があるまで催促を行う必要があるほか、未払いが重なる場合は回収代行業者に定期委託し、継続的に手数料を支払う回収サービスを利用するケースもあります。
特に契約が煩雑であり、債権管理にも苦労するサブスクリプションビジネスにおいては、作業量・コストの面で回収業務の負担はさらに大きいといえます。
回収業務の負担を軽減するための仕組みや外部委託の検討などが必要です。
4. サブスクリプションビジネスの請求業務の課題を解決する業務効率化のポイント
これらの課題を解決するためには、以下のようなアプローチが有効です。
サブスクリプション向け請求管理システムの活用
サブスクリプションビジネスの請求業務では、契約内容や選択プラン、利用実績に基づいた料金計算と、適切なタイミングでの請求書発行が求められます。この一連の業務には大きな業務負荷がかかるうえに、売り切り型の請求業務と異なる点が多くあります。そのため、サブスクリプションビジネスを運用している企業は、サブスクリプションビジネスに特化した請求システムを利用することをおすすめします。
たとえば、契約管理機能が備わったサブスクリプション向け請求管理システムを活用すれば、契約内容や期限、請求条件などの一元管理が可能になります。また、利用実績にもとづき料金計算を行えるシステムであれば、請求金額が自動で算出されます。
サブスクリプションビジネスの運用に手作業での請求業務を継続するなど、手間がかかるだけでなく、現実的ではありません。サブスクリプションサービス専用のシステムを導入することで、システムで請求書データを管理できます。これにより、契約ごとの請求管理を効率的に行えます。
業務プロセスの見直しや標準化
初めてサブスクリプションビジネスを展開する企業の場合、これまでの事業の延長で請求業務を組み立ててしまうことが多いでしょう。しかし、サブスクリプションビジネス特有の請求処理に対応するためには、それに合わせた業務プロセスの構築が必要です。
サブスクリプションビジネスに対応したシステムを導入しつつ、システムが想定する業務プロセスに自社の請求業務を合わせることで、効率的な請求業務を実現できます。
契約者用のマイページでの請求確認
契約者用のマイページやアプリケーションなど、オンライン上で請求明細を確認できる機能を備えたシステムを導入することも有効です。請求業務の効率化と顧客の利便性向上の両面でメリットがあります。
このようなシステムを導入することで、商品やサービスを提供する企業側は請求業務を省力化できるほか、顧客からの請求内容に関する問い合わせ対応の負担を軽減できます。顧客は必要なタイミングで請求明細を確認でき、請求書を紛失するリスクが低減され、過去の請求履歴も簡単に参照できるため、利便性向上にもつながります。
5. 請求管理システム選定のポイント
請求業務の効率化を図るためには、システムの導入により課題を解決していくアプローチが有効です。サブスクリプションビジネス向けの請求管理システムを選定する際には、以下の観点で製品をチェックすることをおすすめします。
どの領域を効率化できるか
請求書の作成のみに対応するシステムから、契約管理や課金額の計算、入金消込といった請求業務の一連のプロセスをカバーするものまで多種多様です。どの領域を効率化したいかにより、対応するシステムを選びましょう。
これからサブスクリプションビジネスを始める場合は、請求業務に必要となる機能が備わったシステムを選ぶことをおすすめします。これにより、システム間の連携や個別のシステム管理といった手間から解放されます。
自社のビジネスモデルに合っているか
サブスクリプションビジネスを運用する企業では、多様な料金モデルや契約の中途変更に対応できる機能が求められます。導入後に手作業が残らないよう、自社のビジネスモデルに適したシステムかどうかを慎重に検討しましょう。
自社が求める機能をリスト化しつつ、各システムが実現できる機能を表形式で整理することで、視覚的にもわかりやすく対応範囲をまとめられます。
6.「サブスクリプションビジネス支援ソリューション」で請求業務を最適化
サブスクリプションビジネス特有の要素を理解し、それに合わせた業務設計やサブスクリプションビジネス向けシステムの活用することは、サブスクリプションビジネスを運用するうえで重要なポイントです。
当社では、サブスクリプションビジネスを運用している企業に向けて「サブスクリプションビジネス支援ソリューション」を提供しています。契約管理や請求業務などのオペレーション支援、カスタマーサクセス支援などを包括的に提供し、サブスクリプションビジネス全体の最適化をサポートします。
本ソリューションの具体的な特長は、以下のとおりです。
「サブスクリプションビジネス支援ソリューション」の特長
① サブスクリプションビジネス特有の課金請求に対応
サブスクリプションビジネスでは、月額基本使用料、従量課金、一時金など、多様な課金請求を管理する必要があります。本ソリューションでは、複雑な料金モデルでの課金請求業務を支援します。
② 煩雑化した契約管理業務もカバー
サブスクリプションビジネスでは、契約後に契約変更・解約などの手続きが発生し、サービスごとに異なる複雑な契約ルールを管理する必要があるため、契約業務が煩雑化しやすい傾向にあります。
本ソリューションでは、サブスクリプションビジネスで必要となる契約管理機能も備えており、契約管理と請求業務を連動させることで、効率化を実現します。
③ 契約者向けマイページ機能で請求明細を確認
契約者向けマイページ機能により、契約者が自身の契約内容や顧客情報の参照・変更、請求明細の参照が可能です。
また、サービスの新規申し込みの機能も備わっており、Web上でのサービスの申し込みにも対応します。これにより事業者の営業負担を軽減しつつ、顧客の利便性を高め、顧客満足度の向上につなげることができます。
④ 立替払いサービスとの連携も可能
サブスクリプションビジネス支援ソリューションはIT以外にもサブスクリプションビジネスの運営に必要なサービスを提供しています。請求管理を行う「BSSsymphony サブスクリプションプラットフォーム」と連携する三菱HCキャピタルが提供している立替払いサービス「HiPaymentサービス」を利用することで、与信、請求、回収をアウトソーシングすることができます。
本サービスを利用することで、企業は請求書の発行、入金管理、督促管理が不要になります。
ほかにも、以下のようなサポートが提供されます。
- サブスクリプションビジネスの立ち上げをサポートする「サービス立ち上げ支援」
- 顧客ごとの利用状況データにもとづき、利用促進のフォローや解約防止策を実施して、顧客の満足度向上と解約防止をサポートする「カスタマーサクセス支援」
一例として、都市ガスを供給するエネルギー企業である東京ガス株式会社は、多様なサービス提供へとビジネスの幅を広げています。サービス拡充の一環として企画された「ご自宅・ご家族の見守り」サービスを展開するにあたり、契約管理、請求管理、施工管理、手数料支払管理などの機能と、契約者向けサイトを備えた「BSSsymphony」を採用。バックオフィス業務をトータルでサポートするシステムをAmazon Web Service上に構築しました。本事例について、以下の記事もご覧ください。
7.まとめ
サブスクリプションビジネスを展開していくためには、サブスクリプションビジネスにおける請求業務の特性を理解したうえで、適切な業務設計やシステムの活用も行い、業務を効率化していくことが重要です。単なる請求処理として捉えず、顧客との長期的な関係を築き、安定した収益基盤を支える重要な業務として認識することが成功のカギとなります。
正確でスムーズな請求管理は、顧客体験の向上による顧客からの信頼獲得だけでなく、LTV(顧客生涯価値)の向上や解約率の低下につながります。一方で、請求業務の課題解決を後回しにしてしまうと、管理コストの増大や顧客満足度の低下といったリスクを招きかねません。
「サブスクリプションビジネスにおける請求業務を効率化したい」「これからサブスクリプションビジネスを始めるにあたり請求業務を効率化したい」という方は、ぜひ当社までお声がけください。お客さまのサブスクリプションビジネスの持続的な成長を支援します。

